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第10話 新たな見合いとそもそもの始まり

魔王エリルギードが初めてのお見合いで絶望して1週間。


ラギドの段取りも済み、自身の心をどうにか落ち着かせた彼女は姿見の前で改めて自身の姿を見つめていた。


(…うん…スッゴク可愛い)


すこしシックな、露出の少ない衣装。

それでいて可愛らしさと上品さがバランスよく調和していた。


(…きっとこの前の私の服…胸元とか…あ、足とか…ひうっ)


ついよぎる、あのいやらしい男の視線と妄想。

確かに可愛らしさに全振りした衣装、男性の欲情を誘発するものだった。


(くうっ…あの悍ましさ…うぐう)


振り払うようにエリルギードの魔力が弾け、荒れ狂う。

部屋の調度品が激しく振動を始めた。


(っ!?…いけない…深呼吸…深呼吸……)


そもそもこんな目にあうのは、理由はともかく自らが蒔いた種だ。

とんでもなく阿呆な勇者を瞬殺し、いちゃもんをつけてきた神を抹殺したその対価。


いくらポンコツとはいえ――さすがは創造神。

どうしても彼の摂理。

書き換えるほどの権能、今のエリルギードでは届かなかった。


『…ねえ。本当に大丈夫?』


思いにふける魔王。

その脳内に響く声。


実は元魔王、当然だが彼女も異性との“そういう経験”はない。

だが耳年増。


なぜか情報と言うか知識だけはとことん備えていた。


(…うん…だって今度の相手…聖王国の王子なんでしょ?敬虔な、紳士的な…)


あくまで希望的観測――むしろ祈りに近い。


『あー、うん。でもさ…』

(…なによ)


『…ヒューマンってさ、抑圧されると…おかしくなるじゃん』

(うぐっ)


そう。

実はこれ、ラギドにも言われたことだが…


『…むしろ経験豊富な…その。…包み込むような男性の方が良いのでは?…聖王国王子…むしろ地雷かと…』



いやな汗が背中を滑り落ちる。

当然だが笑い飛ばし、むしろ『心配し過ぎだ』と大見得をきったのだが…


(…大丈夫…大丈夫のはず…うん…)



魔王の懸念。

完全にフラグであった。



※※※※※



魔王エリルギードが苦労する原因。

それは。


数年前の騒動が発端となっていた。



※※※※※



あの歴史的な魔族とヒューマン族との和平。

それが軌道に乗り、多くの住民が安堵の息を吐いていたころ。


創造神が作りし世界、そこでの試練の一つ。

魔物による苦難が発生する事態となっていた。


世界最大の王国、アルデミス。

その秘境の地で魔物のスタンピードが発生してしまう。

多くの村や町がその被害に恐れおののいていた。


湧くように襲い掛かる魔物の群れ。

絶望に飲まれるヒューマン族。


しかし。

和平の成立した今、その守りに魔族の精鋭が対処に当たっていた。


だが。

ついこの前まで、正にヒューマンの怨敵だった彼等。

確実に仕事はこなすものの、魔族のヒューマンに対する侮蔑の感情は残っていた。


『弱く、それでも数だけは多い種族』


その想いはどうしても伝わる。

危機を感じてしまう多くの住民の声。


王位を諦めていなかった公爵はその声を聴き――

ついに悪に対する最終手段。


『勇者召喚』


それを成し遂げてしまう。

当然だがそれはあくまで理由付け。


公爵は今の体勢をぶち壊すために禁呪を紡いでいたのだ。



そして齎される圧倒的な正義の力。


顕現した勇者『ゼイギルス』は国民の希望となる。



正義の象徴。

そして和平を重んじ、魔族に対して手を出さぬその姿勢。

さらには自らを隠匿。


過ぎた力――それが世界にもたらす影響。

勇者はちゃんと自覚していた。



公爵は焦る。

思っていた勇者、それと違う理知的なふるまい。


彼は国民の為ではない。

自らの欲の為に――禁呪指定されるほどの勇者召喚を求めていたのだから。


(不味い…なんだこの勇者…人格者ではないか…違う、そうじゃない…どうにかしなければ…)



公爵の暗い願い。

このままでは果たされない。


そして。



彼はさらなる禁呪に手を染めていく。


人心の誘導。

禁忌の精神支配。


創造神である唯一絶対神――それへの道筋を模索し始めていた。



壊れ行く世界ノーズイルド。


それは。


すでに違うプロセス。

――動き始めていた。



そしてその芽は――数年後の魔王との邂逅で発芽してしまう。


残された時間。

この時すでにその時計は静かに時を刻み始めていた。


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