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[週間ランキングランクイン]時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記  作者: ざつ


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第32話:顧客離れの真相:NPS(ネットプロモータースコア)と顧客満足度

会議室のテーブルには、セリアが持ってきた最新の収益データと冒険者行動記録装置の分析結果が広げられていた。


ダンジョン全体の利用者数は安定しているものの、耕太の表情には、かすかな不安が浮かんでいた。


データによると、一部の冒険者のリピート率が徐々に低下しているのだ。特に、特定のフロアを利用した冒険者のリピート率が顕著に落ち込んでいた。



「耕太様、全体の数字は悪くないのですが、特定の冒険者層のリピート率が落ちているようです。特に、第三階層の『古の遺跡』フロアの利用者ですね。」


セリアは、不安そうに報告した。



リリエルが魔法通信の水晶玉を操作しながら首を傾げた。


「異世界SNSの評判は悪くないのに…。むしろ、最近はポジティブな口コミが増えているはずなんです。なぜでしょう?冒険者たちのコメントを見る限り、みんな満足しているはずなのに…。」


彼女の言葉には、現状とデータとの間に矛盾を感じている戸惑いがにじんでいた。


耕太は、異世界SNSの表層的な評判だけでは見えない、もっと深い理由があることを直感していた。



彼は、かつて現代日本で学んだマーケティングの知識を思い出した。


「リリエル、最近一部の冒険者のリピート率が落ちてるみたいだ。SNSだけじゃ分からない、もっと深い理由がある気がする。メティス、どうすれば、顧客の真の気持ち、本当にデッドエンドを愛してくれているのかを掴めますか?単なる満足度では見えないものがあるはずだ。」


光の粒子が、耕太の視界の隅に集まり、メティスが姿を現した。

彼女の声は、耕太の問いに答えるかのように、静かに響き渡った。


「耕太よ、それは良き勘だ。古き世界の商人は『顧客の心は、数字に現れる』と語った。単なる『満足』だけでは、真の顧客ロイヤルティは測れぬ。

 お主が学ぶべきは、『NPSネットプロモータースコア』だ。」


「NPS?」

耕太は聞き慣れない言葉に問い返した。


「うむ。顧客がどれだけお主のダンジョンを『他者に推奨したいか』を問う指標だ。


 単なる『満足』だけでなく、その背後にある『熱意』や『不満』を測るのだ。顧客を『推奨者プロモーター』『中立者パッシブ』『批判者デトラクター』の三つに分類し、その純粋な推奨度を測る。

 

 これを見れば、お主のダンジョンの真の価値が、冒険者の心にどう響いているかが見えてくるだろう。真にデッドエンドを愛し、他者に勧めたいと心から思っている『熱狂的なファン』をどれだけ増やせているか、それが分かるのだ。」


メティスは魔力投影で、推奨者、中立者、批判者の三つのグループが、それぞれ異なる感情を抱いているイメージを示した。


「なるほど、単に満足してるかじゃなくて、どれだけ熱狂的なファンになってくれてるかを測るんですね!『満足』と『推奨』の間には、大きな壁があるということか…。」


耕太は、このNPSという概念が、顧客の真のロイヤルティを測るための強力なツールであると確信した。



ダンジョン内の休憩所。


リリエルが、冒険者たちに簡単な魔法のアンケートを行っていた。


彼女は、魔法の水晶玉を使って、冒険者一人ひとりに質問を投げかける。


「このダンジョンを、お友達にどれくらいおすすめしたいですか?0から10の数字で教えてください!10が『絶対にすすめたい』、0が『絶対におすすめしない』です。」



リリエルが集計したNPSのデータは、特定のフロア、特に第三階層の『古の遺跡』フロアを利用した冒険者からの評価が低いことを示していた。


彼らは「満足している」と回答しているにもかかわらず、NPSの数値は低く、「誰かに勧めたいほどではない」という結果が出ていた。


耕太はデータを見ながら唸った。


「なるほど…。この第三階層の『古の遺跡』フロアを利用した冒険者のNPSが低い。彼らは満足はしているけど、誰かに勧めたいほどではない、ということか。なぜだ…?」


彼の脳裏には、リピート率低下の原因を探るべく、様々な仮説が浮かんだ。



セリアが、別のデータを示した。


「このフロアは、モンスターの質は高いのですが、宝箱のドロップ率が低いというデータも出ております。経験値は稼げるものの、レアアイテムの獲得は難しいようです。」



耕太はハッとした。点と点が線で繋がる。


「これだ!冒険者たちは、経験値は得られても、レアアイテムが手に入らないことに不満を感じていたんだ!彼らは『満足』はしているが、期待値を大きく超える『感動』や『喜び』は得られていなかった。だから、誰かに『推奨』しようとは思わなかったんだ!」


「リリエル、この第三階層の宝箱のドロップ率を少し上げてみよう。特に、この階層でしか手に入らない、見た目が特徴的なアイテムや、SNSで自慢したくなるようなユニークなアイテムを追加するんだ。そして、そのことを異世界SNSでさりげなくアピールしてみよう!」


耕太は、具体的な改善策を指示した。


リリエルは笑顔で力強く頷いた。


「はい!『デッドエンド・ダンジョン、古の遺跡に隠された幻の宝箱!?』って感じで、冒険者たちの好奇心を煽るプロモーションを仕掛けます!これで、彼らの『推奨意向』が高まるはずです!」



数週間後、そのフロアのNPSが劇的に改善し、リピート率も上昇した。


冒険者たちは、レアアイテムのドロップに歓喜し、その喜びを異世界SNSで次々と共有した。「デッドエンドの古の遺跡で、ついに幻の宝箱ゲット!」「これは神ダンジョン!みんな行くべきだ!」といった熱狂的な投稿が溢れ、新たな冒険者を惹きつける強力な口コミとなった。



耕太は、顧客の真のロイヤルティを測る「NPS」の力を学んだ。


それは、単なる顧客満足度だけでなく、顧客の「推奨意向」という、より深い感情を理解することで、顧客離れを防ぎ、デッドエンド・ダンジョンに熱狂的なファンを増やすための、異世界においても通用する普遍的なマーケティング戦略だった。


デッドエンドは、単なる収益の場から、冒険者たちの「熱狂」を生み出す場所へと進化していったのだった。


ようこそ、新たなビジネスの舞台へ!


デッドエンド・ダンジョン経営者の山田耕太です。 僕が突然転移してきたこの異世界で、戸惑いながらも学んできた「世界の仕組み」や「常識」「ビジネススキル」について、みなさんに共有できれば幸いです!

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