表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[週間ランキングランクイン]時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/42

第16話:ブルダの葛藤:失敗を恐れないチームを作る心理的安全性

ダンジョン改修プロジェクトの現場は、活気に満ちているはずだった。


しかし、モンスター調教師のオーク、ブルダの周囲だけは、重苦しい空気が漂っていた。


巨大な岩塊を運ぶゴブリンたちが、わずかに資材の配置をミスした瞬間、ブルダの低い唸り声が響いた。


「おい、何やってんだ!こんなミス、許されると思ってんのか!貴様らはデッドエンドの面汚しだぞ!やり直せ!」


ゴブリンは怯え、顔を伏せた。


その後の作業で、別のゴブリンが小さなミスをする。だが、ブルダに怒鳴られるのを恐れて、資材の陰に隠して隠蔽してしまった。


その光景を、耕太は眉をひそめて見ていた。


彼の脳裏には、前職のブラック企業で、ミスを恐れるあまり、問題が隠蔽され、後に大きなトラブルへと発展した苦い経験が蘇る。


「ブルダさん、そのやり方では、ゴブリンたちが萎縮してしまって、ミスを報告しなくなってしまいました。


 それでは、もっと大きな問題に繋がってしまう。どうすれば、彼らが安心して働けるようになるんでしょうか?」


ブルダは苛立ちながら言った。

彼の顔には、苛立ちと同時に、部下が育たないことへの焦りが浮かんでいた。


「ミスはミスだ!厳しく指導しないと、また同じことを繰り返す!俺はモンスターたちを最高の戦力にしたいんだ!」


光の粒子が、耕太の視界の隅に集まり、メティスが姿を現した。

彼女の声は、耕太の焦燥感を鎮めるかのように、静かに響き渡った。


「耕太よ、それは『心理的安全性』という概念に関わる問題だ 。古き世界の、とある研究(アリストテレス・プロジェクトの研究)では、成功するチームの最も重要な要素は、この心理的安全性であると結論付けられている 。

 これは、強固な『チームビルディング』の礎となるのだ 。」


「心理的安全性?チームビルディング?」耕太は聞き返した。


彼の知る「チームワーク」とは、個々が与えられた役割を全うし、協力し合うという漠然としたものだった。


「うむ。『心理的安全性』とは、チームのメンバーが、無知、無能、邪魔、ネガティブだと思われることを恐れずに、安心して発言できる環境のことだ 。


失敗を恐れず、疑問を呈し、新しいアイデアを提案できる空気のことだ。そこでは、ミスは責められるべきものではなく、学びの機会として捉えられる 。」


メティスは魔力投影で、心理的安全性の高いチームと低いチームの特徴を比較する図を示した。

低いチームでは、メンバーの口が固く閉ざされ、顔には不安の色が浮かんでいた。高いチームでは、メンバーが活発に意見を交わし、笑顔で協力し合っていた。


「なるほど、ミスを報告しないのは、怒られるのが怖いから、ということですね。言いたいことが言えない環境だと、チームは成長しない。前職の僕の部署みたいだ…。」


耕太は、自らの過去の経験と重ね合わせ、その重要性を痛感した。


「その通り。心理的安全性が低いチームでは、メンバーはリスクを避け、本音を隠す。結果、問題は表面化せず、イノベーションも生まれぬ 。では、どうすれば心理的安全性を高められるか?」


「どうすればいいんですか?」


耕太は真剣な眼差しでメティスを見つめた。


「まず、リーダーが自ら弱みを見せ、失敗を許容する姿勢を示すことだ 。完璧である必要はない。自らの失敗談を語り、完璧ではないことを示すことで、部下は心を開きやすくなる。


 次に、メンバーの意見を積極的に傾聴し、承認すること 。たとえ意見が異なっても、その発言自体を肯定し、彼らの存在を認めるのだ。


 そして、建設的なフィードバックの文化を醸成することだ 。個人を責めるのではなく、問題そのものに焦点を当て、共に解決策を探るのだ。」



ダンジョン改修現場で、耕太はブルダに、自身の過去の失敗談を話していた。その声は、静かでありながら、彼の心からの言葉だった。


「僕も昔、大きなミスをして、誰にも言えずに抱え込んだことがありました。その時は、本当に孤独で、全てを諦めようかと思いました。


 でも、信頼できる上司が『失敗は学びの機会だ』って言ってくれて、すごく救われたんです。完璧な人間なんていない。だからこそ、お互いを支え合う必要があるんです。」


ブルダは驚いたように言った。彼の表情には、耕太への新たな敬意が浮かんでいた。


「耕太様にも、そんなことが…。あんたも、俺と同じように悩んだことがあったのか…。」


「そうです。だから、僕自身が、まず失敗を恐れない姿勢を見せて、ブルダさんにもそれを伝えて、ゴブリンたちの話を聞くことから始めるんですね!彼らが安心して、本音を話せる環境を作るんです。」



ブルダは、耕太の言葉に深く頷いた。

彼の顔から、これまでの苛立ちが消え、新たな決意が宿っていた。


彼はゴブリンたちの小さなミスを見つけても、以前のように怒鳴らず、代わりにゴブリンの前に膝をつき、目線を合わせて優しく問いかけた。


「何が起きたんだ?どうすれば、次はうまくいくと思う?お前たちの意見を聞かせてくれ。」


彼の声は、以前とは比べ物にならないほど穏やかだった。そして、彼らの努力を「よくやった」と承認し始めた。


デイリーミーティングでは、「今日の失敗と学び」を共有する時間が設けられた。

最初は戸惑っていたゴブリンたちも、耕太とブルダの姿勢に励まされ、少しずつ、安心して発言できるようになる。


ゴブリンAがおずおずと口を開いた。その声は、以前の怯えとは異なり、微かに自信を含んでいた。


「…今日、資材の数を間違えました。

 でも、ブルダ様が教えてくれた新しい確認方法で、次からは間違えません。」


ブルダは笑顔で言った。


「よし!気づいたなら大丈夫だ!次から気をつけろよ!お前の学びは、他の仲間の役にも立つぞ!」


チームの雰囲気は目に見えて明るくなっていった。モンスターたちは、以前よりも活発に意見を交わし、互いに助け合うようになった。ミスが隠蔽されることはなくなり、問題は早期に発見され、チーム全体で解決されるようになった。


耕太は、チームにおける「心理的安全性」の重要性と、それがパフォーマンスにどう影響するかを学んだ。


ブルダは、リーダーとして失敗を許容し、傾聴と承認を実践することで、強固な「チームビルディング」を進めた。デッドエンド・ダンジョンは、失敗を恐れない、真に強い組織へと成長していく。


それは、単なる指揮系統の改善ではなく、心の絆で結ばれた、真の共同体の誕生だった。


ようこそ、新たなビジネスの舞台へ!


デッドエンド・ダンジョン経営者の山田耕太です。 僕が突然転移してきたこの異世界で、戸惑いながらも学んできた「世界の仕組み」や「常識」「ビジネススキル」について、みなさんに共有できれば幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その他の作品もぜひ!
ガイア物語(代表作)
 壮大な異世界ファンタジーサーガ 同時並行的に複数のストーリーが展開します
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
 異世界でビジネススキルを使い倒す異色ファンタジー!
幻想文学シリーズ
 日常に潜むちょっとした不思議な話。ちょっと甘酸っぱい話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ