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第0話:デッドエンド・ダンジョンへようこそ!

現代日本のオフィス。


山田耕太は、液晶ディスプレイの無機質な光を浴びながら、疲弊した目でキーボードを叩いていた。彼の背後には「残業禁止」と書かれたポスターが虚しく揺れている。


メーカーのマーケティング部門に所属しているとはいえ、彼に与えられるのは雑務ばかり。まともな指導もなく、自己学習で得た「ビジネス知識らしきもの」が頭の片隅にあるだけで、実務経験は皆無に等しい。

彼は、自分が「なんちゃってマーケター」であることを自覚していた。だが、その日々の営みが、まさか遠い異世界で彼の「命綱」となるとは、この時の彼は想像だにしていなかった。


突然、世界が真っ白な光に包まれた。目が眩むほどの輝きが収まった時、彼は見知らぬ場所に立っていた。

薄暗く、ひんやりとした空気。嗅ぎ慣れない土と湿気の匂い。


「え…ここ、どこだ!?なんで僕がこんなところに!?」


混乱と不安が耕太の心を支配する。目の前には、埃をかぶった古びた看板が。

「時間貸しダンジョン デッドエンド」と書かれていた。

そして、自分が引き継ぐことになったのが、この名の通り倒産寸前の荒廃したダンジョンだという事実に、彼は愕然とした。


管理室の帳簿は赤字で埋め尽くされ、装置は壊れたままだ。


「時間貸しダンジョン…?しかも、これ、ひどい状態じゃないか!どうすればいいんだ、こんなボロボロのダンジョン…」


絶望的な気分に打ちひしがれる耕太。


その時、管理室の奥から、柔らかな光の粒子が集まり始めた。

光は人の形を成し、優しくも凛とした声が響き渡る。


「耕太よ、絶望するにはまだ早い。お主には、このダンジョンを立て直すための、古き世界の『知恵』がある」。


驚く耕太の前に現れたのは、知恵の精霊、メティスだった。

彼女は実体を持たず、光の精霊や古文書のような姿で現れるという。


「我は、知識の泉に宿る知恵の精霊、メティス。お主がここに転移したのには、理由がある。このデッドエンド・ダンジョンを再建することこそが、お主のこの異世界での『使命』なのだ」。


メティスの言葉は、耕太の胸に深く響いた。


異世界への転移。その唐突で理不尽な事態に、これまで彼はただ混乱するばかりだった。


しかし、「使命」という言葉を与えられ、この混沌とした状況に「意味」が生まれた瞬間、彼の心に迷いが晴れていくのを感じた。


「お主が持つ、現代の『ビジネススキル』こそが、この異世界で最も強力な『魔法』となるだろう」。


メティスの言葉と共に、彼の目の前に魔法のような映像が浮かび上がった。


それは、見慣れた「SWOT分析」や「KPI」、そして「リーダーシップ」といったビジネス用語の模式図だ。

耕太はハッと息を呑む。彼がこれまで培ってきた知識が、「魔法」になるというのか?


「うむ。この物語は、単なるファンタジー冒険譚ではない。お主がダンジョン経営というユニークな舞台で、実社会で役立つビジネススキルや心理学、コミュニケーション術を楽しみながら学ぶ『学術エンターテイメント』だ」。


メティスの言葉が、耕太の脳裏に電流のように響いた。


魔法の使えない自分が、異世界で生き残る術。それは、彼が唯一持っている「ビジネス知識」なのだ。


そして、それが「使命」であるならば、これ以上のことはない。絶望の淵から、一筋の光明が差し込んだ気がした。


「なるほど!僕のビジネス知識が、この異世界で役に立つのか!」


彼の瞳に、再び強い光が宿る。これは単なる転生ではない。

彼の知識が試され、そして彼自身が成長する、新たな冒険の始まりなのだ。彼は、その「使命」を、確かに受け入れた。


ようこそ、新たなビジネスの舞台へ!


デッドエンド・ダンジョン経営者の山田耕太です。 僕が突然転移してきたこの異世界で、戸惑いながらも学んできた「世界の仕組み」や「常識」「ビジネススキル」について、みなさんに共有できれば幸いです!

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