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うつりぎ  作者: 西季幽司
戦国時代編
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籠神社の狛犬②

 宮津の町で広瀬軍蔵を見つけた。

 幸いなことに、鳴尾権蔵、大川八左衛門も一緒だった。

「広瀬殿」と声をかけると、「おおっ! これは、これは、岩見殿の御子息ではないか」と旧知の友に会ったかのような声を上げた。

「お探しいたしました」

「そうだろうな」

「父はあのような人でしたから、お気持ちは理解できます。ですが・・・」

「分かっておる。仇を討たぬでは、武士の一分が立たぬからな。重太郎殿と申したかな?」

「岩見重太郎です」

「お一人か?」

「左様で」

「こちらも見す見す斬られる訳には行かぬ。悪いが返り討ちにしてくれよう」と広瀬が言うと、広瀬、鳴尾、大川の三人が一斉に刀を抜いた。

「わっ!」、「きゃあ~!」、「斬り合いだ」、「逃げろ」と悲鳴を上げながら、辺りにいた町人たちが逃げ去った。

「そうは参らぬ」

「お主の父でさえ、我ら、三人には歯が立たなかった。そなたの腕で三人を相手にするのは難しかろう。止めるのなら、今だぞ!」

「気遣い無用!」

 重太郎が一歩、踏み出すと、次の瞬間、鳴尾が血しぶきを上げて倒れた。目にもとまらぬ早さだ。

「うわっ!」と大川が悲鳴を上げた時には、首が飛んでいた。

 一瞬のことだった。

「うぬぬっ!」

 動きが止まった重太郎を目掛けて、広瀬が斬りかかった。それを、重太郎は余裕で受け流すと、切っ先を巡らせて、広瀬を袈裟懸けに斬りつけた。

「ぐわっ!」と悲鳴を上げて、広瀬が絶命した。

 重太郎は見事、父親の仇を討ち果たした。


 重太郎は京の徳姫を訪ねた。

 奥座敷に通された。人払いがされ、誰もいなくなると、「見事、仇を討ち果たしたとお聞きいたしました。ありがとうございました」と徳姫が頭を下げた。

 徳姫は岩見重太郎が入れ替わった姿だ。

 岩見重太郎となった平九郎が答えた。「多少、名残惜しくはありますが、体をお返しいたしましょう」

「左様ですか。私も少々、名残惜しく感じます」

「そうですか」

「また、ご入用なことがあれば、体をお貸ししましょう。何時でも訪ねて来てください」

「助かります」

 重太郎がふうと息を吐く。

 薄紅色の柔らかい人が座敷を包み込んで行った。

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