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うつりぎ  作者: 西季幽司
戦国時代編
42/69

大蛇の滝②

 夜明けと共に畑に出た村人たちは、里長のもとに走った。

「岩見重太郎殿が大蛇を討ち果たしてくれたようです!」

 重太郎の帰りを待つまでもなく、村人は大蛇党が殲滅されたことを知った。

 川面が真っ赤に染まっていたからだ。

 地蔵川の上流で大量殺戮があったことは明確だった。

 やがて、全身、血まみれになった重太郎が村に戻って来た。

「岩見重太郎殿。御苦労様でした。大蛇は?」

 村人たちが集まって来て、里長が重太郎を迎えた。

「一人、小屋から逃げ出した者がいて、探し出すのに少々、手間取りましたが、一人残らず退治した」

「わっ!」と歓声が上がった。

「おお~あっぱれ。流石は岩見重太郎殿」

「井戸を借りたい。血を洗い流してさっぱりしたい」

「お怪我はございませぬか?」

「ない。余所様より預かった大事な体。傷をつける訳には参りませぬ」

「余所様より預かった?」

「お気に召さるな。滝つぼにやつらがつくった堤がある。あれは村で管理した方が良いであろう」

「あの堤が厄介でした。今後は村でしっかり管理いたします。とあれ、先ずは我が家にお出でください。お着替えを用意いたしましょう」

 重太郎は里長の屋敷の井戸端で水を浴びると、新しい服に着替えた。

 里長が「これを」と約束の五拾両を持って来た。

 重太郎は「金目当てで大蛇を退治した訳ではござらぬ。みなが難儀しておると聞いて、何とかしてやりたいと思っただけ」と報酬を断った。

「これから旅を続けるのでござろう。路銀だと思って受け取ってくだされ」と里長が言う。

「では、これだけ」と言って五両を受け取ると、「残りは村の為に使ってくだされ」と言って、重太郎は村を出て行った。

 村人は重太郎の後ろ姿が見えなくなるまで見送った。

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