一休み
「そうですか、貴方たちは薬を探してここまで来たんですね。ここまで大変でしたでしょう。」
「はい、今日はもう疲れました。今日は早く寝て明日の朝には出たいと思います。」
アンナはそう言って軽くお辞儀をする。アンナは礼儀正しいな。
「はは、今日はゆっくり眠って疲れを癒してください。」
「そうだよ。今日はゆっくり休んで明日旅立つといいよ。」
私達はみんなで食事を食べている最中だった。村長の作る料理はどれも美味しくてやみつきになる。
「それにしても、姉ちゃんはここに来て良かったのかよ?」
ルルはいつもは病弱のため別に食事をとっているらしいが今日は私達と同じ食卓に座っていた。
「だってみんなとお話ししたいもの。この村に客人が来ることだって珍しいしその上、年の近い女の子だから。」
そう言って笑うルルはとても可愛らしいものだった。
「少し気になったんだが、三人は家族なのか?」
キリノの質問に村長が答える。
「いえ、親が人狼に殺されて居場所がなくなった二人を私が代わりに育てているのです。二人とも本当に小さかったのに親を殺されるなんて。人狼は本当に最悪な魔物です。」
「やっぱり人狼っているんだ。どんなやつなの?」
私は人狼という存在をあまり知らなかった。というか魔物のほとんどを私はまだ知らない。
「人狼は村に潜み昼間は人間として、夜は狼として行動するんです。定期的に村から被害者が出るため、この村の者は人間不信に陥る者までいるのです。」
村長はとても悲しそうに嘆く。多分、今までたくさんの仲間をやられたんだろうな。
「しかし、この村はそこまで人が多いようには見えない。この村の誰かが人狼なことは間違いないんだから案外人狼が誰だか分かるんじゃないか?」
確かにキリノの言う通りだ。怪しい行動をすればすぐに誰か気づきそうだ。
「それがそうもいかないんですよ。人狼は賢くどんな人間も欺いてしまうんです。そのせいで私もずっと人狼を見つけることができずたくさんの仲間を殺されてしまった。」
村長もフラル達も人狼のせいで苦しい思いをしてきたんだろうな。できることなら私が人狼を倒してやりたい。
「ルル、顔色が悪いぞ。無理してないか?」
「うん、ちょっと調子悪いかも。私は自分の部屋に戻るね。」
ルルは何かを誤魔化すようにそう言うと、そのまま自分の部屋に戻って行った。体を壊してなければいいのだけど。
「姉ちゃん大丈夫かよ。だから部屋で休んだ方がいいって言ったのに。」
「ルルは本当に体が弱いんだな。」
「それはもう。ルルは体が弱くずっと苦労していました。ずっと耐えてきたルルもそんなルルのお世話をしているフラルも本当にすごい子ですよ。」
「村長照れるからやめてくれよ。それよりご飯を食べ終わったみたいだし俺が温泉まで連れていくよ。」
フラルは明らかに照れて顔を真っ赤にしていたがまあ触れないであげよう。それより温泉があるとはなんとも楽しみだ。
「ここの温泉は疲労にいいのでぜひゆっくりしていってくださいね。」
「おっけー、それなら俺について来てくれ。俺が案内してやる。」
私達はフラルについて行って温泉まで向かうのだった。
「ねえ、あの人達誰?」
「こんな村に来てなんなの。もしかして人狼だったりして。」
私達は温泉へ向かう途中たくさんの村人から見られる。しかし、その目線はいいものではなくみんなヒソヒソと私達を見て何か言ってる。まあ、人狼が出る町だから私達を疑うのはしょうがないか。
「あいつらの話は聞かなくていいからな。みんな自分を守ることで精一杯なんだ。」
村にいても安心して暮らせないなんて悲しいものだ。自分の街に人狼がいると考えたら私だって疑心暗鬼になりそうだし。
「ああ、分かっている。みんな苦労しているんだな。」
キリノも私もそのことは分かっているから周りに何を言われても言い返さなかった。まあ、モヤモヤはするけどね。
「ちょっと、貴方達止まりなさい。」
私達が歩いていると三人組の女性が私達に話しかけて来る。
「貴方達、この村に来て何するつもり?」
明らかに私達に敵意を持ってるようだ。
「マリア、この人達は俺の恩人でただ一日止まるだけだ。別に何もしないよ。」
フラルはそう言って誤解を解こうとするが三人組は一切話を聞こうとしない。
「そんなこと言って、また死人が出たらどうするのよ。私はこれ以上人が死ぬのを見たくないわ。どうせこいつらが人狼に決まってるわ。」
「だから、犯人はこの村の人物だってば。この人達は初めてこの村に来たんだ。犯人なわけないよ。」
フラルが必死に説得しても三人組は聞く耳を持たない。
「ふん、私は認めないから。」
三人組はそのままどこかに行ってしまった。
「あの人達は?」
「あいつらはこの村の中でも最も人狼を恨んでる奴らだ。そして、あいつらは村のみんなのことが大好きだから外部の犯行だと思っている。」
何とも悲しい話だ。人狼のせいで相当の人が苦しんでるようだしなんとか退治したい。
「そうか、みんな人狼のせいで苦しんでいるんだな。」
キリノの言葉には怒りがこもっていた。それは私やアンナも同じだ。
「ああ、そうだよ。人狼は本当に許せない。いつ姉ちゃんがやられるかだって分かんないし早く殺してえよ。」
フラルだって本当はどうにかしたいんだろうな。
私は本当に人狼が許せない。どうにかして人狼を見つけ出すことは出来ないだろうか?
「まあ、でも人狼とかお前らには関係ないことだし気にしないでくれ。それよりここが温泉だ。ゆっくりしていってくれ。」
フラルはそれだけ言って自分の家へと帰って言った。フラルの悲しそうな顔を見ると私はやるせない気持ちになる。
色々あったが、とりあえず私達は温泉に入ることにした。とりあえず嫌なことを綺麗さっぱり流してしまおう。
「んー、やっぱり温泉は気持ちいいな。今までの疲れが癒されるよ。」
温泉は疲労回復にとてもよく今までの疲労が一気に消えて行く感じがする。
「ああ、温泉は本当にいいな。」
キリノも私も温泉で癒されていたがアンナだけは何やら考え事をしてる様子だった。
「アンナ、どうしたの?何かあった?」
「いや、この村の問題を私達で解決できないのかなって思いまして。」
アンナはとっても悲しそうな顔で言う。やっぱり考えることは同じか。
「ああ、私も同意だ。村を脅かす存在は私達で倒そう。」
私達は真剣に人狼を倒す方法を話し合うことにした。
「そもそも本当に村の人達がやったの?実は外部のモンスターがやったとかないの?」
「いえ、周りに頑丈な柵がありましたし、結界も張られてあるのでそれはないかと。おそらく内部の犯行で間違いないとは思います。」
「しかし人狼は私達がいる間に犯行するのか?私達がいる間はおとなしくしてるかもしれないぞ。」
キリノの言う通り人狼は賢い生き物だから私達がいる間は身を潜めている可能性がある。
「逆に私達に罪を擦りつけようと犯行を及ぼす可能性もあると思いますよ。私は何としても人狼を倒したいんです。」
アンナはいつもより覚悟の決まった顔をしていた。やはり同じ村に住むものとして思うことがあるんだろうな。
「ああ、私達も同じ気持ちだ。私達で人狼を討伐するぞ。」
「うん、私達で頑張って人狼を倒そう。」
そうだ、私達なら絶対にやれる。これ以上この村の人達を悲しませないためにも。
「それにしてもアンナはスタイルが良くていいね。胸も大きいし」
私は改めて二人を見つめる。アンナはとてもスタイルが良くて胸が大きい。キリノもとても華奢で可愛らしい。
「も、もうそんなに見つめないでください。それにルナさんだってスタイルいいですよ。胸だってまあ、いつかは大きくなると思いますから。」
アンナに気を使われて私はムッとなる。胸が小さいこと気にしてるのに。
「いや、ルナはそのままでも可愛いと思うぞ。」
「それでも私はアンナの胸が羨ましいの!」
私はそう言ってアンナの胸を触る。とっても柔らかくていつまでも触っていられる。
「もう、恥ずかしいですよ。キリノさんも止めてください。」
とりあえず私達は今の間だけは全てを忘れて楽しんでいた。
しかし今の私には人狼の脅威が迫ってることを知る由はなかったのだ。
「ふう、とはいえ今日は寝るしかないか。」
あれから人狼について色々話したが今はまだ人狼の被害も出てないし、明日に向けてゆっくり休むしかなかった。
「ええ、今はとりあえず眠って明日に備えましょう。」
私達は明日のために早く寝る準備をしていた。しかし私は一つの大きな本棚に目がいってしまう。
「そういえばこの本棚すごいよね。何があるんだろう?」
部屋にあった本棚から私は何冊か本を取ってみる。
そこには魔法の本や、この世界の歴史についての本がたくさんあった。
「ルナさんはこの本に興味があるんですか?」
「うん、私まだこの世界のこと全然知らないから。」
「私も断片的にしか覚えてないな。」
この世界に来たばかりの私も記憶が曖昧なキリノもこの本に興味深々であった。
「そうですか、それならせっかくですし、私が色々教えてあげますよ。」
「やったあ。色々教えてよアンナ先生。」
私とキリノは真剣にアンナの話を聞く体制に入る。
こうしてアンナ先生の授業が始まるのであった。
「ではまず、この世界には六つの大陸があり、大陸によってそれぞれ生活が異なります。」
アンナはそう言って世界地図を広げる。そこには大きな大陸が六つあり、その六つの大陸の真ん中に一つの島があった。そこは前の世界とあまり変わらないんだね。
「なるほど、それでわたし達がいるところはどこなの?」
「私達が今いるのは世界地図で見て1番左のナトゥラという国ですね。ナトゥラは他の大陸より自然が豊かで他の大陸では見れないような魔物もたくさんいます。」
「なるほど、だから森とかいっぱいあったんだね。」
「そうですね。そしてナトゥラには力の魔人がいます。」
「魔人?」
私は聞きなれない単語に頭を傾げる。
「二人はこの世界に何故魔物がいるか分かりますか?」
急にそんなことを言われても困ってしまう。
「えっと、もともとそういう世界だからじゃないの?」
「魔王がいるからじゃないか?」
・・・なんか恥ずかしいじゃん。
「その通りです。はるか昔に魔王が生まれ、それと同時にたくさんの魔物が生まれたと言われています。」
魔王と言う言葉も初めて聞いたけど確かに、魔物がいるのであれば魔王がいてもおかしくないか。
「そしてその魔王を守る七体の強力な魔物のことを魔人といいます。魔人は他の魔物と違い人の形をしており頭もいいんです。」
力の魔人
知の魔人
無の魔人
龍の魔人
愛の魔人
欲の魔人
偽りの魔人
この七人の魔人がそれぞれの大陸に一人ずついるらしい。でも大陸が六つなのに対して魔神は七人いるけど?
「私は小さい頃からこの大陸には力の魔人がいるから気をつけてと言われてました。魔人はあまりにも強すぎるからと。」
「魔人はそんなに強いものなのか?」
「はい、魔物とは比べ物にならないような恐ろしい存在です。それはもう災害と思った方がいいです。魔人はただでさえ強い上に、それぞれ固有の能力があるとか。」
なるほどこの世界にはそんな恐ろしいものがいるのか。まあ旅する私にはあまり関係無さそうだけど。
「ですが人間側も黙ってはいません。この世界では時折救世主と言うものが現れるのです。」
「救世主?」
アンドレが私に対して言っていたやつか。まあ、あれは勘違いだと思うけど。
「救世主は時折この世界に現れ、この世界の厄災を祓ってくれます。救世主だけはなんと魔人にも匹敵すると言われてます。」
月の救世主
霧の救世主
時の救世主
日の救世主
空の救世主
この五つの救世主が何百年に一度の頻度でこの世界に現れるらしい。この世界は本当に不思議だ。
「救世主か。初めて聞いた言葉なはずだが何やら初めてではないような気がするな。」
キリノはそう言って小さく呟く。キリノの不思議なことを言うものだ。
「また、魔物に対抗する手段はもう一つあります。それが宝玉です。宝玉は兵器のようなものです。」
「それはどういうことだ?」
「宝玉は使い方によって平和も争いも起こすことができます。それだけ宝玉はとんでもない力を秘めており、今もこの世界には四つあると言われています。」
本を見ると確かにとても綺麗な宝玉が写っていた。四つとも柄が違うからとても綺麗だ。
それにしてもアンナって本当に物知りだ。私の知らないことを色々と教えてくれる。
「私、もっといろんなことを知りたい!次は魔法について知りたい。」
「ふふ、気持ちは分かりますが今日はもう寝ましょう。明日は早いのですから。」
「む、それもそうか。それならまた今度教えてね。」
確かに二人ともすごく眠そうだし私だってもうクタクタだった。
私はまだ色々知りたかったが私は我慢して眠ることにした。
「じゃあ、おやすみ。」
「ええ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
私達はベッドに入りゆっくりと休みに着くのであった。
どうか変なことが起きませんように。




