人狼の出る村
「おーいアンナ、無事だった?」
私達が異形を倒して元の場所へ戻るとそこにはいつも通りのアンナがいて安心する。アンナは私を見つけると心配そうな表情でこちらに向かって走ってくる。
「ルナさんこそ大丈夫でしたか?ルナさんが異形を倒しに森の奥に行ったと聞いた時、私びっくりしたんですからね。もっと自分を大切にしてください。」
どうやらアンナは怒っているようだった。面目ない。でもこれで異形も倒したし全員揃ったしやっとこの森を出ることができる。
「ほう、お前がアンナか。私はキリノだ、森の奥でルナと出会い共に異形を倒した。これからの旅は私も同行するからよろしくな。」
キリノはそう言ってアンナに手を差し出す。
「キリノさんですね。こちらこそよろしくお願いします。ルナさんを助けてくださりありがとうございます。」
「いや、むしろ私がルナに助けてもらったよ。ルナがいなければ私はどうなっていたか。」
アンナもキリノの手を取り、仲良く会話をしていた。私達三人は仲良くやっていけるような気がする。
「お二人とも、異形を倒していただきありがとうございます。本当に何とお礼を言ったらいいか。」
エルフの男は突然現れると私達に向かって頭を下げた。そんなに畏まられても逆に困ってしまう。
「ここから出られるようになるなら全然いいよ。」
「申し遅れましたが私はアンドレと申します。今後あなた方に何かあれば必ず力になりましょう。」
「ならば一つ聞いていいか?」
「はい、何なりと。」
「あの異形は明らかにここの森の生物ではなかったがあの異形はいつ現れたのだ?」
「それは、私にも分からないのです。この前突然異形が現れてこの森を汚染していたのです。それ故に私は貴方達をこの森に閉じ込めてしまった。」
自分の住処が荒らされたらああなるのもまあしょうがないか。ということは何者かがこの森に異形を放ったと。
「まあ、出られたからいいけどさあ、蔦で体を縛るやつだけは苦しかったな。」
私がそう言うとアンナはすごい目つきでアンドレを睨む。
「アンドレさん、もしかしてルナさんにもあの技を使ったんですか?」
「クスクス。そうよ、アンドレったら可愛い女の子に対して蔦で縛る鬼畜なのよ。」
「しかもその上にお腹や胸を蔦で舐め回すんだから本当鬼畜よね。」
通りすがりのエルフの発言にアンナだけでなく、キリノまでアンドレを睨みつけるようになる。
「おい、ルナにハレンチはまだ早いぞ。」
「ええ、純粋なルナさんを穢そうとするのは許しませんよ。」
「まっ、待ってくれ。あれは誤解だ。仕方なかったと言うか。」
キリノは銃を構えて、アンナは何やら変な呪文を唱えようとする。アンドレは必死に誤解を解こうとするが二人は話を聞こうとしない。このままだと危ないから私は二人を止めに入る。この後この二人を止めるのにすごい時間がかかるのだった。
「なるほど、キリノさんは過去の記憶がないんですね。」
「ああ、なぜあの森にいたのかも私の昔の名前も全て分からないんだ。」
あれから私達はアンドレに森の外まで出してもらい、私達は近くの村を探していた。今は森からかなり歩いた先の草原の中にいた。しかしもう夕方だから今日は近くの村で泊まらないといけなかった。なので村を探しながら私達はお話をしていた。
「アンナなら原因が分かったりしないの?」
「そうですね、キリノさんは気づいたら森にいたんですよね。本でもそのような事象は見たことないですし不思議ですね。」
「そうか、いつか思い出せる日が来るといいのだが。」
「いつか思い出せる日が来るよ。それまでは私と一緒に旅をしようよ。」
私はこれからずっと旅をして生きていくんだし、別にずっと一緒にいたって構わなかった。
「まあ、そうだな。今はもう少し気楽でもいいかもしれないな。」
旅なんてのんびりと生きていくものなんだからもっと気を抜いた方がいいと思う。
「それにしてもこの辺りは全然村がありませんね。アンドレさんはもう少し先にあると言っていましたが。」
「む、もしかして最悪野宿なのか?」
魔物の多い草原の中での野宿は正直考えたくはない。魔物と戦って汚れたしお風呂にも入りたい。
「あれを見てください、誰かが魔物に襲われています。」
アンナに言われ見てみると複数の狼のようなモンスターに少年が襲われている。12歳ぐらいだろうか。私達はすぐに少年の元に駆けつける。
「ガルルルル。」
「な、なんだよ。これは渡さないからな。」
狼は少年目がけて飛び掛かるがオオカミが少年を噛み殺すよりも前にキリノが同時に複数のオオカミの頭を撃ち抜く。
草原に静かに銃声が鳴り響く。
「怖かっただろう、怪我はないか?」
キリノはそう言って少年に手を差し伸べる。キリノは
私達がオオカミにたどり着く頃にはもうすでにオオカミを倒していた。さっきの森でも思ったけどキリノってかなり強いよね。日頃から魔物と戦っていたのだろうか。
「えっと、怪我はないよ。助けてありがとう。」
少年はキリノの手を掴んで立ち上がった。少年は大きな荷物を抱えているが、こんな草原の中で何かあるのだろうか?
「その荷物、もしかして近くに村があるんですか?」
「おう、近くに俺の住む村があるんだ。今は村に帰ってる途中だったんだがモンスターに襲われちまって。」
「その村に私達を停めてもらえないか?私達は旅をしてるんだが寝床がなくて困っていたんだ。」
キリノがそう笑うと少年は顔を赤くする。
「ああ、俺の命の恩人だからな。もちろんいいぜ。」
「そうか、なら良かった。私はキリノだ。」
「俺はフラルだ、よろしくな。」
私達もそれぞれ挨拶をして、フラルの住む村へと向かうことにする。とりあえず寝床が見つかって良かった。
「うーん、それにしても不思議ですね。」
アンナは何やらすごく考えているようだ。
「どうしたの、何かおかしなことでもあった?」
「はい、森からこの草原までずっとオオカミが多いなと思いまして。」
「それって変なことなの?」
確かにオオカミのようなモンスターは度々見かけたがそんなに珍しいモンスターなのだろうか?
「はい、そもそも獣のモンスターはこんなに頻繁には見ないです。それに狼のようなモンスターは基本群れないはずなので。」
私は魔物の生態を詳しく知らないがアンナが言うのであればそうなのだろう。私とアンナが会話しているとフラルがため息混じりに口にする。
「ああ、実は俺たちの村はたまに人狼が出るんだ。」
「人狼が?」
この世界には人狼もいるのか。
「ああ、そのせいで村のみんなはいつも怯えてるし、俺も姉ちゃんが襲われないかいつもヒヤヒヤしてるんだ。」
「フラルさんにもお姉さんがいるんですね。」
「ああ、実は姉ちゃんは体が弱くて俺が看病してるんだ。これもそのために集めてたんだぜ。」
そう言ってフラルは鞄の中を見せてくれる。中にきのみや薬草がたくさん入っていた。
「そうなんですね、実は私も妹の薬を手に入れるために旅をしてるんです。」
「そうか、それじゃあ俺たち仲間だな。」
フラルはそう言ってにこっと笑う。その年で看病するなんてすごいな。
「そうか、なら急いで村に帰らないとな。」
「ですね。少し急ぎましょう。」
日も刻々と落ちてきてるし、私達は急いでフラルの村に入るのだった。
「ここが俺の住む家だ。どうぞ入ってくれ。」
フラルに歓迎され私達は家の中に入る。中はとっても広くとても豪華な家だった。フラルの家はお金持ちなのかもしれない。
「ただいま、今戻ったよ。」
「今日はいつもより少し遅かったな。ん、君たちは誰だ?」
家のお奥から一人の老人が出てきた。フラルのおじいちゃんだろうか?
「この人たちは俺がオオカミに襲われてる時に助けてくれた命の恩人なんだ。泊まる場所がなくて困っていたから今日一日止まらせてもいいか?」
「ああ、そうでしたか。私はこの村の村長のティオと申します。この度はウチのフラルを助けていただきありがとうございます。」
村長はそう言って私達に頭を下げる。とても優しくて頼りになりそうな人だ。
「困っていたから本当に助かるよ。明日には出ていくから安心してくれ。」
「空きの部屋はいくらでもあるから好きに使ってくれて構いませんよ。食事が出来上がるまでは部屋で待っていてください。」
一日泊まらせてくれる上にご飯までくれるなんて本当にいい人だ。
「本当にありがとうございます。それではお部屋をお借りしますね。」
私達は丁寧に頭を下げて空きの部屋で休むことにした。
私は2階の大きな部屋に入ると荷物を全て置いて、ベットへ飛び込む。
「はあ、やっと休めるよ。もうくたくただよ。」
「そうですね。私も今日は動きたくはありません。」
アンナとキリノも布団にダイブして休んでいた。正直今日は色々あったし明日のために早く眠ろう。
「おーい、ちょっといいか。来て欲しい所があるんだ。」
私達が休んでいるとフラルが部屋の中に入ってくる。
「うん、今すぐ向かうよ。」
何があるのか分からないが私達はフラルについていく。
「姉ちゃん、部屋に入るぞ。」
フラルがそう言ってドアを開け、私達もフラルに続いて部屋に入る。
「あら、貴方達は?」
私達が部屋に入るとそこには私達と同じくらいの歳の女の子がいた。ベットに入っており頭にはタオルを巻いていた。多分フラルの言っていた病弱な姉なのだろう。私達はここにきた経緯を全てフラルの姉に話した。
「なるほど、貴方達がフラルを助けてくれたのね。本当にありがとうね。私はルル、フラルの姉よ。」
そう言ってフラルはにっこりと笑っている。ふわふわしてて優しそうな女の子だった。
「ああ、こちらこそ助かったよ。旅の途中寝床がなくて困っていたからな。フラルには感謝している。」
キリノはそう言ってフラルの頭を撫でる。
「もう、俺は子供扱いするなよ。」
「あらあら、フラルったら顔を赤くしちゃって。もうキリノさんのことを好きになっちゃったの?」
「ちげーよ、別にそんなんじゃねえから。」
フラルはそう言ってさらに顔を赤くする。ゆでタコみたいで面白い。
「ふふ、それより私、同い年くらいの子とお話ししたかったの。いっぱいおしゃべりしましょう?」
「ああ、いくらでも話そう。」
「いいですね。私も女子会をしてみたかったんです。」
キリノとアンナも盛り上がっていた。私も女子会とかやったことないから楽しみだ。
「お、おう。じゃあ、俺は部屋に戻っておくな。」
フラルは気を使ったのか自分の部屋に戻っていった。
私達は女の子同士で色々と話に花を咲かせるのであった。




