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月の冒険譚  作者: 和音
第一章 新たなる世界
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迷いの森

「うーん、アンナとはぐれちゃったし、早くアンナを見つけないと。」

謎の男にこの森に閉じ込められ、アンナと離れ離れになった私はとりあえずアンナを探すことにした。

森全体がざわめいておりとても気味が悪かった。早くこんな気味の悪いところから抜け出して早くアンナに会いたい。

それにしてもこの森全体に霧がかかっており何も見えない。

「アンナ、どこにいるの。いるなら返事して。」

私は大声を出してアンナを探すが返事は返ってこないし、どこを探しても見つかる気配がない。地図で見た感じそこまで大きな森というわけでもなさそうだから多分魔法でもかけられているのだろう。

とりあえず私は目印を道につけながら霧の中へ進む。

「クスクス、人間がこの森に入ったらおしまいだよ。」

「この森の生き物はみんな人間が嫌いだからね。お気の毒様。」

私が道を歩いていると笑い声が鳴り響く。この森に住む生き物かな?

「この声は誰?誰かそこにいるの?」

「あら、かわいそうな人間さん。この森に迷い込むなんて不幸ね。」

姿は見えないがやはり声だけは聞こえる。私はとりあえず気になることを聞いてみることにした。

「ねえ、この森ってどうなってるの?」

「貴方この森のことを知らずに入ったの?この森は迷いの森といってエルフや森の生き物が住む森なのよ。」

声だけの生き物は意外と質問には答えてくれる。この世界にもエルフとかいるんだな。さすが異世界。

「私はこの先の土地に行きたいだけで、別に森を荒らそうとかは思ってないんだけど。」

「そんなこと言っても無駄よ。この森に住むエルフはみんな人間が嫌いだわ。貴方の言うことなんて信じはしないわ。」

「そんな、私はやらないといけない事があるのに。」

「残念ね、この森に入った時点で貴方は終わりなのよ。」

それでも諦めるわけにはいかない。せっかく旅が始まったと思えば勘違いでいきなり死亡だなんて洒落になってない。

「ちょっと、貴方たちじゃどうにかできないの?」

私は必死に叫んだが声が聞こえることはなかった。多分、どこかに行ってしまったのだろう。このままでは本当に死んでしまう。私はなんとか必死にここから出る策を考える。こうなったら魔法を使ってどうにかするしかない。

まずはこの霧が邪魔だから私はこの霧を晴らすためにも風魔法を使うことにした。私は風が吹き荒れるイメージをしながら魔法を唱えた。

「風よ、吹き荒らせ。」

私が風の魔法を唱えると風が吹き荒れ霧が晴れるが一瞬にしてまた霧で曇ってしまった。これじゃあ拉致が明かない。風魔法じゃだめだ。でも炎は使えるわけないし水を使っても意味がない。他に使える呪文もないし、魔法じゃどうにもならなそうだ。

こうなったら何度戻されても霧の中を進むしかない。絶対に早く、アンナを見つけてこの森を抜け出して見せる。







「はあ、もう無理だよ。どこに向かっても同じ場所に戻っちゃうもん。」

これじゃあ、きりがない。いや、霧はあるのか。

多分進むだけじゃダメだ。もっと細かく探せば何かヒントがあるかもしれない。私は当たりを見回す。

周りには私の知らない植物や動物がたくさんいた。そういえばこの森にいても誰も私を傷つけようとはしなかった。本来なら私を殺そうとしてもおかしくはないのに。

「人間よ、逃げようとしても無駄だ。貴様ら人間はこの森にとって害でしかない。」

私が頭を悩ませていると突然霧から声がする。私とアンナを森に閉じ込めた男の声だ。私は男に聞こえるように声を荒げる。

「ねえ、どうして?私達は本当にこの森に害を及ぼすつもりはないよ。」

「うるさい、貴様ら人間は平気で嘘をつき、平気で私達の居場所を奪う。だからお前らはここで終わるのだ。」

この森の者は誰も私の話を聞こうとはしない。種族が違うと大変だ。

男が声を荒げるのと同時に蔦のようなものが私を絡めとる。

「ひゃうっ、それ苦しいからやめてよ。」

蔦が私の四肢を絡め取り、私は身動きが取れなくなる。その上、蔦が私の体のいたるところを触って気持ち悪い。 

「これでお前は何もできまい。そのままの状態で朽ち果てるのだ。」

「やめてよ。なんだか気持ち悪いよ。」

蔦が私のお腹や胸を撫で回して変な気分になる。なんだかやらしい。

「私達エルフは不殺を心がけている。だから貴様を殺すことはない。貴様はそのままでいるといい。」

男はそう言って笑う。こうなったら炎の魔法を使ってしまおうか。いや、そんなことしたらあの男が言う人間と何も変わらない。何かいい魔法はないのか。この状態を切り抜けられる魔法は。

「何かしようとしても無駄だぞ。この森では魔法を使うことはできないようになっているからな。」

魔法が使えない?さっき私は確かに風魔法を使ったはずだが。とはいえ確かに今は特にやる事がない。せめてアンナが無事かだけでも知りたかった。

「そうだ、アンナが今どうなっているかは分かる?」

「アンナ?ああ、お前と一緒にいた女か。それなら、お前と同じ状態で生け取りにしているぞ。」

男がそう言うとアンナが蔦によられ、苦しそうにしている映像が映し出される。その瞬間怒りが込み上げてくるのを感じる。私はともかくアンナを苦しめるのは許さない。私達は早く薬を取って町に帰らないと行けないのにこんな場所で道草をくってる場合ではない。

「アンナを解放して。アンナだけでいいから。」

「ダメに決まっているだろう!お前ら二人はここで終わりだ。」

私がどんなに言ったって男は一切聞く耳を持とうとはしない。

こうなったら魔法を使うしかない。私は力を込めてどんな魔法でもいいから放つことにした。今の状況をひっくり返す最強の魔法を。

「魔力を込めても無駄だ。魔法は使えないようにしてるからな。」

だがそれでも私は必死に魔法を唱えようとする。アンナを助けるため、この状況を打開するため。私は必死に魔法を唱える。すると突然月の光のようなものが体全体から放射し、私を絡んでいた蔦が解ける。よく分からないが魔法は成功したみたいだ。

「なっ、何故その光を。ということはまさか貴方は。」

蔦が解けて解放されると同時に月の光も消えた。あの光は一体何だったのだろう?

そして気がつくと霧が全て消え、目の前に一人の男が膝をついていた。男はさっきと打って変わって態度を変えており、私は困惑してしまう。突然どうしたのだろう?

「先ほどまでの無礼をどうかお許しください月の救世主様。」

さっきまで私を生け取りにしようとしていた男が突然頭を下げるし、私のことを救世主と呼ぶしで訳が分からなかった。

「私が救世主様?何かの間違いではなくて?」

「いえ、あの月の光は間違いなく月の救世主様の他ありません。」

よく分からないが助かった。アンナの方も無事そうで安心した。

「ということは私達はこの森から出ていいの?」

「はい、もちろんです。しかし一つお願いがあるのです。」

そう言って男は再び私に頭を下げるのでとりあえず聞くことにした。

「実は最近この森の奥の方で大きな異形が出没してこの森の生き物は困っているのです。さっきまで無礼な態度を取った上でこんな事を言うのはあれですがどうか助けてくれませんか?」

男はそう言って私に本気の土下座をする。確かに私はさっきまで酷い事をされたし、別にこの森のために助けてあげる義理もない。だけどそれでも私は困った人を見過ごすことはできなかった。

「いいよ、その異形は私がなんとかする。だからその異形が出る場所まで連れてって。あとその場所には私一人で行くから、私が返って来るまでアンナに傷一つつけないでね。」

その異形がどんなものか知らないけどアンナは危なそうだし私一人で向かう。それとこの男がアンナに少しでも危害を加えた時は容赦はしない。

「分かりました。本当にありがとうございます救世主様。」

男はそう言って私を異形の元へと連れて行ってくれる。確かに森の奥の方から悍ましいオーラを感じる。

しかし、たとえどんな危険なものだって私が倒して見せる。








「こちらの奥の森に異形が住んでおります。どうかご無事で。」

男はそう言って姿を消した。私は森の奥へと足を踏み入れる。

さっきまでいた森より不気味で居心地が悪い。早く異形を倒してこの森を出たかった。

「ガルーラ。」

見たことのないよう獣がうろちょろしてるし、虫がいっぱいいるし本当に気持ち悪い。というか本当にここに異形がいるのだろうか?

「キュイイイー。」

私が奥に進んでいると突然茂みから魔物が飛んでくる。うさぎのような見た目に目が四個ある魔物だ。

私は魔物を避けながら炎魔法で魔物だけを焼く。少しずつ魔法が上達していってるような気がして嬉しくなる。魔法の種類ももっと増やしたいし今度アンナに教えてもらおう。アンナは魔法はあまり使えないが魔法の知識だけはすごいのだ。

「グルルルル。」

「ガルルル。」

私が魔法を使ったからか大量の魔物が私に襲いかかる。この量を相手してたらキリがないから私は魔物を避けながら急いで奥の方へと向かった。それにしても森の奥に進むたび魔物も多くなってる気がする。

奥に向かうと再び霧の深い場所に着いた。魔物を巻く事ができたがここがどこか分からないし、周りが見えないせいで引き返すこともできない。

「・・・誰か助けてくれ。」

どこからか人の声がする。まるで脳内に直接語りかけられてるような不思議な気分だった。

霧のせいで何も見えないが自然と場所が分かるような気がする。何とも不思議だ。

私が声を元に探していると一人の少女が倒れていた。いろんなところに切り傷がありとても痛そうだ。

「ねえ、大丈夫?」

私が声をかけても返事はない。もしかしたら危ない状態かもしれない。

私は倒れてる女の子を抱っこして比較的安全そうな所へ運ぶことにした。女の子は銀髪のショートで年は私と同じくらいだろうか。

私は女の子を木の影に置き、手当を始める。女の子は眠ってはいるが命に別状はなかった。治療道具はほとんどアンナが持っているが私も少しだけ持っていた。アンナがもしもの時にって私に持たせてくれて本当によかった。私が女の子を手当てしてると目を覚ました。

「あっ、起きた?どう大丈夫そう?」

「お前は誰だ?ここはどこだ?」

女の子は目を覚ますと私の顔をじっと見つめる。透き通った青色の瞳がとても綺麗だ。

「私はルナ。ここは迷いの森っていう場所で貴方はそこで倒れてたんだよ。」

私は女の子が混乱しないように分かりやすく今の状況を説明した。

「そっか、私は倒れてたのか。」

「うん、とりあえず無事そうで良かったよ。貴方の名前を教えてくれる?」

私が名前を尋ねると女の子を頭を傾げる。

「あれ?なんだっけ。」

「ん、どうかしたの?」

「えっと、私って誰だ?」

「えっ?」

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