アンナ
「えっと、ここは?」
光に包まれて目を開けるとそこはまたしても私の知らない場所だった。ここが異世界なのだろうか。
何も分からない私はとりあえずこの辺りを探索することにする。ここが異世界だとしてモンスターとかはやっぱりいたりするのだろうか。だとしたら迂闊に行動もできないけれど。
周りを見る限り建物などはなく、森しかなかった。しかし、いきなり森に行くのも危険だから私はとりあえず建物を探すことにした。建物があればそこに人もいるはずだ。人を見つけてここがどこかが知りたかった。
私はゆっくり歩きながらこの先のことについて考える。色々な所に旅に行きたいし、美味しいご飯とかも食べ回りたい。考えれば考えるほどわくわくする。
「うわあ、すごい景色だ。」
それしてもここはとても自然豊かで清々しい所だった。今の私は自由になれてとても気分がいい。今の私ならどこまでも行けるような気がする。
「うーん、最初は何しようかな?ここは自然がいっぱいだしキャンプとかも楽しそう。」
私はやりたいことを頭の中でたくさん思い浮かべた。
とりあえず今日のうちにやりたいことがいくつかあった。
まずはここがどういう世界なのか知りたい。モンスターとかいるかもだし早めに知っておきたい。異世界に来て早々に死にたくはない。それとステータスとかあるならそれも早めに見ておきたい。異世界といえば定番だ。
あとは寝床の確保もしないといけなかった。さすがに何もない所で野宿は怖い。今はお金を少しも持っていないし、近くに宿があるかもわからない。
不安なことはいくつかあるがそれでも私は歩み続ける。
「はあ、ここは一体どこなの?」
私はあれからかなりの距離を移動したが建物どころか人すらいなかった。このまま何もなく餓死するのが一番まずい。日も少しずつ暮れていくし、お腹も空いている。せめてご飯だけでも欲しいものだ。というか女神様はもっといい場所に飛ばしてくれてもいいのに、何故こんな田舎に飛ばしたのだろうか。
私が考え事をしながら歩いていると小さな丘が見えた。
ずっと歩いて足が疲れた私は丘の上にある木のふもとで休むことにした。
風が大きく吹き私の長い髪の毛がなびく。この風の強さも今は心地よい。
私は息を吐きながら周りを見渡す。そこは自然豊かでとても神秘的な場所だった。日本では見れないような植物や生き物がたくさんあってとてもわくわくする。
変な色の鳥によく分からない形の花など探せばキリがない。
私が木のふもとで休んでいると、女の子の悲鳴のような声が聞こえる。最初は気のせいかと思ったが耳を澄ますとより鮮明に女の子の悲鳴が聞こえた。
「だ、誰か助けてください!」
その声を聞いた瞬間すでに私の体は動いていた。これはチャンスだ。
私は急いで近くまで駆けていく。そこには一人の女の子がおり、二匹の狼に襲われていた。私は急いで丘を降りて女の子を助ける。
「やめて、来ないでください。」
狼は女の子の服を食いちぎりそのまま腕に噛みつこうとしていた。
「これでも喰らえ。」
武器を持ってない私は近くの石を二つ持ってそれぞれの狼に投げつける。
「ガウウウ!」
「私の手を掴んで。今のうちに逃げよう。」
私の投げた石はしっかり狼の頭に当たり、その瞬間狼は大きな鳴き声をあげながら暴れ始めた。
狼が怯んだ隙に私は女の子の手を握って走り、咄嗟に茂みの中に隠れた。この魔物は大して知能があるようには見えない。
私達は少しの間、茂みに隠れて狼がいなくなるのを待つ。それにしてもこの世界の狼はとても凶暴で恐ろしい。日本のオオカミより一回りは大きかった。
もしかしたらやられてた可能性があると考えるとゾッとする。草むらに一緒に隠れていた女の子も震えており、私の手を強く握っていた。格好からして冒険者には見えないしおそらく村に住んでいるのだろう。私は自分の来ていた服を女の子に着せてただその場で静かにする。
狼がいなくなるのを確認し、手を握ったまま草むらから出る。
草むらから出た私は大きなため息を吐いて地べたに座った。いきなりこんなことになるなんて思いもしなかった。
「あの、助けていただきありがとうございます。お礼はいくらでもしますので。」
茶髪で三つ編みの女の子は何度も頭を下げる。女の子は私より少し大きいくらいで同い年か少し年上くらいに見える。
「全然大丈夫だよ。それより私はここに来たことがなくて色々聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい、なんでも答えますよ。とりあえずお礼がしたいので私達の村まで行きませんか?」
「やっぱり近くに村があるの?私も丁度村を探していたから助かるよ。」
「ええ。少し先のところにありますよ。」
私はその言葉を聞いて安心した。少なくとも今日は寝床につけそうだ。
私は村に行く途中でいろんなことを聞くことにした。
「とりあえず自己紹介をしましょうか。私はアンナと申します。この先の村に住んでいます。貴方の名前を教えてください。」
アンナは私の名前を聞いてくるが名前はどうしようかな?流石に前の名前だとちょっと変だし月って名前からとってルナと名乗ることにした。。うん、いい名前だ。
「私はルナだよ。よろしく。」
私は笑顔でルナに手を差し出す。アンナとはこれからも何度かお世話になるような気がしていた。
「ルナさんですか。いい名前ですね。」
アンナもにこっと微笑んで私の手を握る。
「とりあえず聞きたいことが何個かあるんだけれど質問していいかな。」
「はい。なんでもお答えしますよ。」
「ここってどんな世界なの?魔法とかってやっぱりあったりするの?」
「はい、魔法はありますよ。魔法はこの世界にいる誰もが使えます。」
「やっぱりこの世界に魔法ってあるんだ!アンナはどんな魔法を使えるの?」
この世界に魔法があることに私は嬉しさを隠せないでいた。私はアンナの魔法が見たくてワクワクする。
「それが私は攻撃的な魔法は苦手でして回復魔法しか使えないんです。」
「なるほど、魔法にもたくさんの種類があるんだね?どうやって使うかとかわかる?」
「魔法の使い方ですか?そうですね。質問されるとなかなか難しいですね。」
アンナは魔法を知らないそぶりをする私をみて驚いてる。やはりこの世界は魔法が一般常識なんだ。
「うん。実は私は今日この世界に来たんだ。」
「今日ですか。そんなことってあるんですね。」
私は別の世界から来たことを正直に言うか迷ったが居場所もないし正直に言っておくことにした。
しかしアンナは思ったより驚きはしなかった。やはり魔法がある世界だからだろうか。単にアンナが落ち着いてるだけの可能性もあるが。
「とりあえず魔法の使い方って分かったりする?」
とりあえず私は魔法の使い方が知りたかった。魔法が使えれば旅も快適にできるはず。
「やはり魔法で大事なのはイメージすることですね。」
「イメージ?」
「はい。例えば炎の魔法を使いたいなら頭で炎を生み出す想像をするとかですかね。」
へえ、魔法って思ったより簡単なんだな。その程度なら今の私にもできそうだ。
「もちろん魔法を使うには魔力なども必要になってきますね。魔力があればあるほど強い魔法も使いやすいです。それでいうとルナさんがどれほどの魔力を持っているか気になります。」
「なるほど。それならまた後で試してみよう。」
今からでも魔法が使いたいが今はアンナの村へ行くことの方が大事だ。
「他に聞きたいことかはありますか?」
「そうだね、ステータスとかってあるの?」
「はい、ありますよ。でもステータスを見るには機械が必要です。村に着いたら使ってみますか?」
「うん、使いたい。それと寝床がないんだけど村で泊めてもらうことってできる?」
「はい。私の部屋でいいでしょうか?」
アンナはそう言ってもじもじする。私はとりあえず眠れさえすればどこでもよかった。
「うん、大丈夫だよ。」
「そうですか、それならよかったです。他に質問はありますか?」
「とりあえず聞きたいことは聞けたし後の細かな質問はアンナの部屋で聞こうかな。それとアンナはなんでモンスターに襲われてたの?」
「えっと、私の妹が病気で最近さらに悪化してきて、それで薬を作るためにきのみを集めていたらモンスターに襲われてしまったんです。」
「それでちょうど私が助けたと。」
攻撃魔法が使えないのにこんなところに来るのは危ないんじゃ?
「はい。ルナさんがいてよかったです。」
「私も魔法が使えないから本当ヒヤヒヤしたよ。」
「本当にルナさんは私の恩人です。村に帰ったらぜひお礼をさせてください。」
「うん。それは助かるかな。」
とりあえず聞きたいことを聞けた私はアンナとお喋りしながら村へと向かった。
初めて出会った人がアンナで良かった。
私達はあれから少し進んで村が見えるとこまで来た。まだ大分距離があり、私は一度休みたかった。
「あそこに見えるのが私の村ですよ。」
「へー。結構距離あるね。」
ずっと歩いていた私はもうクタクタだった。これでも私は体力がある方だと思っていたがここはあまりにも広すぎる。
「あ、もしかして疲れました?少し休みましょうか。」
私とアンナは木陰で休むことにした。アンナもかなり歩いていると思うが疲れている様子はなかった。
「お水飲みますか?私が口をつけたので良ければですが。」
「うん。もう喉乾きすぎて死にそうだよ。」
私はアンナの水筒を受け取って飲み干した。ずっと歩いていたからとても美味しい。
「ふふっ、いい飲みっぷりですね。」
「うん。それにしてもこの世界って綺麗だよね。なんだか神秘的で感動するよ。」
私は改めて周りを見る。とても綺麗な景色で私は清々しかった。
「はい。私もこの自然豊かなこの大地が大好きです。」
「そういえばこの世界ってどこもこんな田舎なの?」
「いえ、ここが相当田舎なだけだと思いますよ。他の大陸はとても都会だと聞きます。」
「そうなんだ。これからいろんなところに行くのが楽しみだな。」
「ルナさんはこれから旅に出るんですか?」
「うん。いろんな景色をこの目でみたいなって思って。」
「とても素敵ですね。ただ魔物は危険なので気をつけてくださいね。」
「やっぱり魔物って危険なんだね。」
「はい、さっきの獣はいい方で、もっと恐ろしい魔物など山ほどいますので。私の村でも被害者はいっぱい出ています。」
やはり魔物の被害も多いのか。気をつけないといけない。
私達は休憩を終え、また村に向かって歩き出す。しかし、道中にはゴブリンの群れがいた。薄汚い見た目で気持ち悪い。
「ひえっ、ゴブリンの群れがいます。気づかれる前に逃げましょう。」
「いや、待って。ちょっと魔法を試してみていい?」
私は早速魔法を使いたくてしょうがなかった。ゴブリンは弱そうだし魔法を使ったことがない私でも倒せるような気がする。
「魔法ですか?いきなりモンスターで試すのは無茶ですよ。」
アンナは止めるが私は試したくてしょうがなかった。
「ガアア!」
ゴブリンの群れは私達に気付いて襲いにかかる。
「ひい、怖いです。」
アンナは私の後ろに隠れる。私はただ魔法を唱えることに集中する。私は燃え盛る炎を頭の中でイメージする。
「炎よ、解き放て!」
私が手をかざすと業火がゴブリンを襲い、周り一帯が焼け野原になった。これが魔法か。今ので少しコツは掴めた気がする。何というか爽快感があって清々しい。
「ルナさん、すごいです。って早く消さないといけません。」
私が炎を解き放ったせいで周りが燃え盛っていた。私は慌てて、今度は大量の水をイメージする。私は大量の水を生み出し、なんとか消化させることができた。
「ふう、魔法って難しいね。もっと練習しなきゃ。」
「いや、初めて魔法を使ったとは思えないくらい凄いですよ。どうやったんですか?」
私の魔法にアンナはとても驚いていた。今の魔法ってそんなにすごいのか。
「どうって、アンナに言われた通りイメージしてみただけだよ。こんなもんじゃないの?」
「そんなわけないですよ。確かにイメージすることが大事とは言いましたが魔法を使うためには魔力が必要なんですよ?。ルナさんってどんだけ魔力があるんですか?」
「私にも分からないよ。なんか勢いでやったら出来ちゃっただけだから。」
アンナはとても興味深い目で私をみる。私は普通にやったつもりだがどうやら私の魔力は相当高いらしい。
神様がステータスを高めにしてくれるとは言っていたがかなり高くしてくれたんだな。
「まあ、とりあえず怪我がなくて安心しました。もうちょっとで村まで着くので急ぎましょう。」
もうちょっとで日が暮れて夜になる為、私とアンナは急いで村に向かった。
それにしても魔法って割と簡単に出せるんだな。炎以外の魔法も気になる。他にどんな魔法があるか、私は楽しみで仕方なかった。
あれからさらに少し歩くとそこには村があった。
「やっと着きましたね。ここが私達の村です。では私の家まで行きましょうか。」
アンナの家に行く途中に村の人にものすごく見られる。やっぱりこの村に人が来るのは珍しいのだろうか。それに服装もこの世界とは少し違っている。早くこの世界ような服も買いたい。
私はアンナに歓迎され、アンナの家までやってきた。
「ここが私の家です。どうぞお入りください。」
アンナの部屋はとても女の子らしくて可愛い。
私はとりあえずアンナの部屋に入るとベットを借りて眠ることにした。
今日は疲れたけどとても楽しかった。明日は何をしようか考えながらぐっすりと眠りにつくのだった。




