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月の冒険譚  作者: 和音
第一章 新たなる世界
12/24

塔を目指して

「グギャアア。」

ふう、これで今日だけで十体の大型の魔物を倒した。すでに日は暮れているし今日はいい所を見つけて早く眠りたい。

「やはりこの辺りの魔物はなかなか手強いな。少し危なかったぞ。」

最初こそ苦戦したが四人で連携が取れるようになると大型のモンスターでもすんなり倒せるようになっていた。やはり私達はパーティーのバランスがとってもいいと思う。あとキリノが普通に強い。

「それにしても本当に嬢ちゃん達強いな。俺が冒険者の頃もここに来たがもっと苦労したぜ。」

私達は塔に向かってずっと歩いていた。道中では、たくさんの魔物と出会ったが私達はなんとかモンスターを倒して塔まで残り半分くらいまで来た。キリノやロイドは本当に強く二人のおかげでここまで来れた。それにアンナも手厚くサポートしてくれる。それと私も戦いにかなり慣れて最初よりは俊敏に戦えるようになっていた。

「いや、二人のおかげだよ。ロイドの防御とアンナの回復がないと私達はボロボロだったし。」

確かに敵を倒すのは私とキリノだが二人のサポートあってこそだった。それにしてもロイドは元冒険者ということもあってかなり闘いに慣れていた。

「つまり俺たちは最強のパーティーってことだな。この調子で塔まで頼むぜ。」

「ロイドは塔まで行きたがってるけど塔は一人で登るつもりなの?」

「そうですよ。あの塔を一人で登るのはあまりにも危険すぎます。」

塔の中はすごく危険ってアンナが言ってたけどロイドはそこに一人で行くつもりなのだろうか。私達も塔の中までついて行った方がいいかな。

「なーに、大丈夫さ。俺だって元冒険者だぜ。それにこれ以上嬢ちゃん達に迷惑はかけられねえからな。」

ロイドは平気そうに言ってるが本当に大丈夫なんだろうか?というかこの世界の冒険者について私は何も知らない。

「そういえば冒険者ってどんなことするの?」

私が聞くとロイドはびっくりしたような顔で私を見る。もしかしてこの世界では常識なのだろうか?早くこの世界の常識を覚えないと怪しまれる可能性があるな。

「嬢ちゃん知らねえのか?それなら俺が簡単に教えてやるよ。まず冒険者は冒険者ギルドに入るんだ。」

「冒険者ギルド?」

早速聞いたことのない名前がでてキョトンとする。

「ああ、冒険者は冒険者ギルドで仕事をもらって任務をこなすんだ。任務をこなして報酬をもらう。これがギルドと冒険者の関係だな。もちろんランクが上がれば上がるほどレベルの高い任務が入ってくるんだぜ。」

「具体的にどんな任務があるの?」

「そうだな、ダンジョン攻略だったりモンスターの討伐など様々だな。ランクが高い方がダンジョンの依頼が多くなるな。」

なるほど、この世界にはそんな組織があるのか。冒険者は報酬が貰えてギルド側はモンスターがいなくなることで被害が減るという素晴らしいシステムだ。まあ、私はギルドに入るよりも自由気ままに旅したいけど。

「それでロイドはどのランクだったの?」

ロイドは闘いに慣れていたしベテランっぽいからそれなりにランクは高そうだ。

「おう、俺はAランク冒険者だったぜ。」

ロイドは誇らしげに言うが冒険者のランクを知らない私からしたらあまりピンとこない。しかしアンナはものすごく驚いていた。

「ロイドさんってAランクの冒険者だったんですか?」

「Aランクの冒険者ってそんなにすごいのか?」

どうやらキリノもあまりピンときてないようだ。

「はい、ギルドのランクはSからDの五段階でAランクは上から二番目です。Aランクの冒険者は珍しくかなりすごいですよ。道理で月の塔に登ったことがあるわけです。」

どうやら月の塔はかなりの難易度でAランク以上が推奨らしい。

「なるほどな、道理で強いわけだ。塔に行こうとするのも分かるな。」

「いや、そうは言うがあの塔は俺たちAランクじゃ太刀打ち出来なかったぜ。あの塔は本当に危険だ。」

ロイドの顔はあまりにも真剣だった。もしかしたら前に塔に登った時に何かあったのかもしれない。

それなら尚更私達もついて行った方がいいのではないかと思う。まあ、私達がいても危ないかもしれないけどロイドを一人で生かせるよりはマシなような気がする。

「それならやはり私達もついて行くべきではないのでしょうか?流石に一人で行かせるわけにはいきません。」

アンナもロイドのことをとても心配してるようだ。最初はロイドのことを警戒していたのに。

「まあ、大丈夫さ。俺は俺のやることがあるから嬢ちゃん達は嬢ちゃん達のやることを優先しな。」

ロイドはニヤッと笑う。ロイドは相当な覚悟を持ってるようだ。まるで何かに囚われているようにも見えるけど。それなら私達もロイドの言う通り自分達のやることを全うした方がいいのかな?しかし私は心配で仕方なかった。

「それよりもうすぐ夜になるし、野宿の準備でもしようぜ。」

ロイドはそう言ってこの話を終わらせる。これ以上この話をするのはやめておいた方がいい気がする。

「まあ、ロイドがいいならいいんだけど無理はしないでね。」

「ああ、任せろ。」

ロイドはそう言って笑っていた。心配だったが今はロイドの言うこと信じよう。何はともあれ日が落ちたし今日は野宿することにした。初めての野宿は少しワクワクしていた。










「うーん、やっぱりアンナの料理は美味しいな。毎日アンナの料理を食べたいよ。」

私達は比較的安全そうなところで野宿をして、今はアンナが作った特製カレーを食べていた。アンナの料理はあまりにも美味しくていくらでも食べれる。

「嬢ちゃんの料理は本当に美味えな。」

「ああ、いくらでも食べられるぞ。」

キリノとロイドもアンナの料理を気に入ったようでたくさん食べていた。

「えへへ、お口に合ったなら良かったです。おかわりもいっぱいあるのでたくさん食べてくださいね。」

私達はご飯を食べながら明日の予定について話し合うことにした。

それにしてもうすぐ目的地に着くと思うとドキドキしてしまう。

「それじゃあ、明日で嬢ちゃん達とはお別れだな。明日の朝から出発して昼頃には塔に着くだろうからそこから行けば明日中には神秘の遺跡に着くだろうよ。」

「そうですね、ですが私はロイドさんが心配です。一人で月の塔へ登るのは危険ですよ。」

アンナはとても悲しそうな顔でロイドを見つめる。しかしロイドの意思は変わらないように見えた。

「だから俺のことは気にすんなって。そんなこと言ったら嬢ちゃん達の行く神秘の遺跡だって危険なんだぜ。冒険ってのは自分が生きることだけを考えればいいんだ。」

今のロイドはもはや私達じゃ止められない気がする。

「そう言うことなら私達は私達のやるべきことを頑張るよ。」

「いいんですかルナさん?月の塔はやはり危険ですよ。」

「私だって心配だけどロイドが決めたことだから。その代わり絶対に死なないでよ。」

私はロイドにニヤッと笑って見せる。

「ああ、それは約束だ。俺は今までずっとしぶとく生きてきたしな。じゃあ明日は早いから俺は先に寝るぜ。」

ロイドはそれだけ言って寝床に向かって行った。ロイドって本当にベテランの冒険者なんだな。

「はあ、やっぱり私は心配ですよ。ロイドさんは無理をしてるように感じます。」

それは私も感じていた。ロイドはなんとなく責任感に囚われてるような気がした。ロイドからはとにかく覚悟が伝わってくるのだ。

「まあ、それはそうだな。しかしアンナは少し心配しすぎではないか?それにアンナは月の塔が危険と言っていたが入ったことがあるのか?」

キリノの質問にアンナはただ顔を暗くした。

「私の村はよく冒険者が泊まりにくるんです。それで私は小さい頃からよく冒険者のお話を聞いてワクワクしていました。冒険者の話を聞くたびに私は好奇心を抑えることが出来ませんでした。」

だからアンナはこの世界のことや冒険者について詳しかったのか。

「しかし、成長するにつれ私は現実を知っていきました。また会おうと約束した冒険者がいてもその冒険者が帰ってくることはありませんでした。それから私は冒険はあまりにも危険だと知ってしまったんです。」

「なるほどな、だからアンナは必死に止めようとしたんだな。」

「みんな、ロイドさんのように平気だと言って命を落としていきました。それだけ冒険と言うのは怖いんです。特に月の塔に向かって死んでいく冒険者を私はたくさん見ました。」

それはアンナにとってかなりのトラウマだったのだろう。だからアンナは必死になって止めようとしたのか。

「もちろん私は二人のことも心配で仕方ないんですよ?ルナさんには迷惑をかけてばかりですし、キリノさんもわざわざこんなところまでついて来てくださって本当に感謝しかありません。だからもしそんな二人に何かあったら私は。」

私達のことをここまで思ってくれるアンナにわたしは思わず笑ってしまう。アンナは本当に優しすぎる。

「それはいいよ。元々私は一人で旅に出るつもりだったし。」

「ああ、私だって二人がいないとどうなっていたか分からなかった。だから感謝したいのは私の方だ。」

私もキリノもアンナにものすごく感謝してるのだ。

「二人とも本当にありがとうございます。それでは今日はもう遅いですからもう寝ましょう。」

アンナはそう言って寝床に向かって行く。アンナは私達に顔を向けてくれない。もしかしたら恥ずかしがってるのかもしれない。

「それではおやすみなさい。」

「うん、おやすみ。」

「ああ、また明日。」

今日は疲れたしもう眠ろう。結局どうすればいいか分からないし明日になってから考えよう。

「うーん、眠れないよ。」

しかし眠ろうとしたのはいいものの疲れのせいか全然眠れなかった。アンナとロイドはぐっすり寝てるのに。

「おーいルナ、起きてるか?」

私が眠りにつけずに困っていると突然キリノが話しかけてくる。もしかしたらキリノも眠れないのだろうか。

「どうしたの。キリノも眠れないの?」

「まあそんなところだ。どうせ眠れないんだし少し星空でも見てお話ししないか?」

「いいねそれ。それじゃあ行こっか。」

私はキリノの手を引いて星空を眺めに向かうのだった。









「うわー、星がとっても綺麗だね。」

「ああ、いい夜空だ。」

この世界の星空はとても綺麗でずっと見ていられる。真っ暗な夜空にたくさんの星が浮かび上がってとても神秘的だ。本当にこの世界は素晴らしい。

「それにしても急にどうしたの?」

「ここら辺に来てからなんだか落ち着かなくてな。塔に近づくたびに何か感じるんだ。」

「それは私もだよ。なんだか少し頭が痛いような感じになるんだ。」

私も塔に近づくたび頭が痛くなるから少し不思議に思っていた。

「確かルナは突然この世界にやって来たんだろう?私も昔の記憶がほとんどないからルナとはなんだか似てるな。」

「そうだね。それにしてもこの世界は本当に不思議だらけでびっくりだよ。だから毎日が楽しいんだけどね。」

私はこの世界に来てから楽しくて仕方ない。キリノも今の生活を楽しんでるよう嬉しい。

「ルナが前にいた世界はどんな所だったんだ?」

あの世界のことなんて思い出したくもない。私に自由などなく毎日がつまらないだけの生活など二度とごめんだ。

「私は前の世界のことが嫌いだったんだ。だからこの世界に来て私は嬉しいんだ。」

私はこの世界を楽しむんだ。絶対に元の世界になんか帰ってやるもんか。

「そうか、前のことを思い出させて悪かったな。ルナが今の世界を楽しんでるなら私も嬉しい。」 

「キリノこそ、過去のこととか分からないんだよね。どうしてあの森にいたとか。」

なぜキリノがあの森にいたのかアンドレにも聞いたが分からないようでキリノのことは謎に包まれていた。そもそもアンナが言うにはキリノはこの国の者ではなく氷の国の者らしい。何故そんなキリノがこの国にいて迷いの森で倒れていたのかは謎でしかなかった。キリノの親とか心配してないのだろうか。

「ああ、何も分からない。しかしルナがこの世界に来てすぐに記憶のない私を見つけてくれた。もしかしたら私とルナは少なからず関係があるのかもしれないな。」

それはキリノの考えすぎな気もするが確かに不思議だ。この世界は未知に溢れてる。

「分からないけど、これから旅をしていけばそのうち答えに辿り着けるかもだね。」

「ああ、それとルナには本当に感謝してるんだ。ルナがいなかったら私は死んでいたかもしれないし、ルナが助けてくれたから今こうやって楽しい旅ができている。」

そうやって微笑むキリノはとても可愛いくてドキッとしてしまう。風で揺らぐ綺麗な銀髪と透き通る青い瞳がとても綺麗だ。

「私こそキリノと会えて良かった。キリノはかっこいいし一緒にいて楽しいから。それよりキリノは神秘の遺跡に行った後はどうするつもりなの?」

キリノは私達の旅について来ているが神秘の遺跡より後のことは話してなかった。まあ、私はこれからもずっと旅をするつもりだ。

「そうだな、まだ決めてないがもしかしたらルナと一緒に旅に出かけるかもしれないな。」

「えへへ、それはとっても楽しそうだね。私もキリノと旅に出たいよ。」

キリノとの二人旅なら絶対に楽しいと思う。キリノは強くて頼もしいし。

私は空を見上げながらキリノとお話をする。この時間がとても楽しくて最高だ。

「ねえ、あれ流れ星じゃない?」

「むっ、どこだ?」

私達が星を眺めているとどこからともなく流れ星が流れてくる。私とキリノは急いでお願い事を祈った。私はこの世界で楽しく暮らせるようにと本気で願う。アンナやキリノとこうやって旅できてるだけもう幸せではあるが。

キリノの方を見てみるとすでに願い終わったのか満足そうな表情をしていた。

「キリノは何を願ったの?」

「ふふっ、内緒だ。それより明日に向けてそろそろ戻ろうか。」

キリノは何を祈ったか私に教えてはくれない。本当はもっとおしゃべりしたいけどそうもいかないか。

「うん、そうだね。キリノとお話しできて良かった。」

「ああ、私もだ。」

私とキリノはお互いに微笑み合って、そのままアンナとロイドが眠っている所まで戻るのだった。


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