人狼の正体
「ルル、調子はどうだ?」
私はルルの頭の上のタオルを変えて体の汗を拭いていた。
「ありがとう。わざわざごめんね。」
私は今ルルの部屋で看病をしていた。ルルの体が悪いから看病をするというのもそうだがそれ以上にルルが人狼に襲われないように護衛をする方がメインだった。昼間とはいえ人狼がいつ出てもおかしくはない。病弱のルルでは自分の身を守ることはできないだろうから私が守らないといけない。
「気にするな、私は苦に思っていないから自分のことだけを考えろ。」
病人はいつも他人を気にするが私としては自分の体調のことだけを考えて欲しかった。命というのはかけがいのないものだ。
「ふふっ、キリノは本当に優しいね。フラルが好きになっちゃうのも分かるな。」
「何、フラルは私のことが好きなのか?」
一切気づかなかった。そんな様子は微塵もなかったと思うが。
「あの子は恥ずかしがり屋だからね。それにしても私は小さい頃から村長やフラルに迷惑しかかけてないな。本当に辛いよ。」
ルルはとても悲しそうに嘆く。その弱々しい声を聞くと私まで悲しくなる。
「そんなことは口にするな。ルルがいるおかげで村長やフラルは頑張れているんだ。」
「うーん。そうかな?そうだといいんだけど。でも私何も出来ないよ?」
「そんなことはない。ルルは十分やってるよ。だから苦に思うな。」
「そうかな。私が生きるのは悪いことじゃないの?」
「ああ、生きることは悪いことじゃない。この世に犠牲になっていい人だって存在しない。自分が思ってるよりも周りは感謝してるものなんだぞ。だからルルは自信を持っていいし、自分に正直になっていい。どんなことだろうが私は受け止めるぞ。」
この世に犠牲になっていい人間なんていないに決まっている。絶対にいい訳ない。
「そっか、それじゃあ一つだけ言っていい?」
ルルはすごく言いづらそうな雰囲気だった。どんなことでも私は受け入れる。ルナが私を受け入れてくれたように私もみんなを支えて生きると決めたから。
「ああ、なんでもこい。」
私のできる範囲でなら何でもするつもりだけ。ルルは私の友達だからな。
「えっとね、人狼の正体は村長なの。」
ルルの言葉に私は一瞬頭が真っ白になる。
「は?」
私は最初、ルルの言ってる意味が分からなかった。だって私達を助けてくれたあの村長が人狼だなんて信じられない。
「あはは、そうだよね。こんなこと言っても信じられないよね。でも私見ちゃったの。小さい頃に眠れなくて外を出たら村長が村の人を食べてる所を。」
ルルの表情は何とも言えない表情だった。それじゃあルルはこのことを誰にも言えずに一人で抱え込んでたということか。
「そうか、でもだとしたら何故それを誰にも言わなかったんだ?」
これ以上被害を出さないためにも絶対にみんなに言うべきだと思う。
「だってさ、私が人狼は村長ですって言っても誰も信じてくれるわけないよ。それに私、このままでいいと思っちゃったの。だって村長がいないとこの町はどうなるか分からないもの。それなら少しの犠牲が出てもこのままでいいって。」
ルルはずっと頑張ったんだろうなと思う。本当は誰かに相談したかっただろうし、苦しくて吐きたくなる日もあっただろう。それでも今日まで頑張って生きてきた。それだけで私は十分だと思う。
「本当にルルはすごいよ。よく一人でここまで頑張ったな。」
私は優しくルルの頭を撫でる。
「ありがとう、そう言ってくれて心から嬉しいよ。でももうおしまい。これからは我慢しない。犠牲者だって一人も出させない。」
さっきまでのルルと打って変わって真剣な顔つきになる。
「そうか、それなら私としても嬉しいな。」
「うん、だから私の代わりに村長を止めて。私じゃ村長を止めることは出来ないから。」
ルルはそう言って静かに涙を流した。私はすでに怒りが込み上げてくる。フラルやルルをこんな目に合わした村長を許しはしない。
「ああ、ここからは私がなんとかする。」
「ありがとうキリノ。」
私は急いで村長のところへ向かう。ルナ達だってもしかしたら危ない。これ以上被害を出さないため私は急いで向かうのだった。
「そこにいるんですよね。村長さん。」
静寂に包まれてる中アンナは静かに村長の名を呼ぶ。
「おやおや、まさか私の正体がバレてしまうとは。さすがですね。」
アンナがそう言うと茂みから村長が現れる。まさか本当に村長が人狼だったなんて。信じたくはなかった。
「おい、村長が人狼だなんてそんなの嘘だよな?だって村長はこの村をいつも支えてくれてたし。」
フラルは信じられないような顔をで村長を見つめる。しかし村長の目は信じられないほどに冷めていた。
「嘘じゃないさ。まさかこんな小娘にバレるとも思わなかったけどな。」
一瞬にして村長の姿は人から獣のような姿に変貌する。
アンナはフラルを守る体制に入り私はいつでも魔法を使える体制になる。
「それじゃあ、アンタが俺の親を殺したのかよ。アンタがみんなを不幸にしてたのかよ!」
フラルは睨みつけるとそのまま村長めがけて殴りかかる。
「お前じゃ勝てはせんよ。」
村長は蹴りでフラルを一掃するとそのまま冷たい眼差しで私達を見つめる。
「なんで私がこの村の村長をやっていたと思う?何故村の者を皆殺しにせず少しずつ殺していったと思う?」
「そんなのはどうでもいいよ。私は貴方を許さない。」
私は怒りに任せて、無数の炎を村長めがけて打つ。村長は爪で魔法をかき消すが私は何度も魔法を打ち続けた。
「答えは私は人が絶望する瞬間が一番好きだからだよ!あの顔を見ると本当に光景でたまらない。」
村長は私の魔法を全て避けた後、私の間合いに入り私の体を引き裂く。
「ぐっ、しまった。」
「ルナさん、大丈夫ですか?今回復します!」
アンナが私を回復しようとするが村長はお構いなしに私の元へやってくる。まずいこのままでは。
「やめろ!ルナは絶対に触れさせない。ルナを倒したければ俺を倒せ。」
フラルが私を庇うように私の前に立つが村長はどうでも良さそうな顔でフラルを見つめる。
「無駄だよ。お前のようなガキは何も知らないまま平和ボケしとければいいのにな。」
「うるさい、俺は怒ってるんだ。お前のせいで親が死んで姉ちゃんが苦しんでんだ。」
「だからなんだ。私には関係ない。」
「うるせえ、この世に犠牲になっていい人はいないんだ。だから俺は諦めない。絶対にルナには近づかせない。」
「お前の言うことなど知ったことか。」
「フラル、逃げて。私のこととかどうでもいいから。」
私は叫ぶがフラルは一切逃げようとはしなかった。
村長はフラルめがけて切り裂こうとするがその前に村長の腕に銃弾が三発撃ち込まれた。
「グハァ、お前は。」
そこにはキリノの姿があり、キリノはゴミを見るような目で村長を睨みつける。キリノが来てくれて助かった。キリノがいないと私達は全滅だった。
「よく言ったフラル。お前はとってもカッコいいよ。」
キリノは少しだけ優しく微笑んだ後、すぐに村長に銃弾を何発も打ち込む。
「私はお前を許さない。人を騙して傷つけた罪を今償え。」
「無駄だ、人間如きじゃ私は倒せない。」
「それはどうかな。」
村長は何度も銃弾を交わすが銃弾は軌道を変え、何度も村長を撃ち抜く。
「ぐっ、なんだこれは。どうなってる。」
キリノは無限に銃を撃ち続け、村長は交わすことすらできなかった。
「知ってるか?想いは強さになる。お前のようなただの魔物に私は負けない。」
「クソ、こんな小娘に私が負けるわけが。」
村長は何度爪でキリノを切り裂こうとするがキリノは攻撃を全て交わし何度も銃弾を打ち続ける。
「チェックメイトだ。」
そして気づけばキリノの銃が村長の頭を捉えていた。
「これでお前の負けだ。」
「ふん、私を殺していいのか?村のみんなはどんな顔をするかな?私がいないとこの町は結界をが張れずに終わるだろう。」
「だからどうした。それでも人間は変わり続けるだろう。お前と違ってな。」
キリノの目は一切まぶたきすることなく村長を見つめていた。
「ま、待て。やめろ私はまだ死にたくなど。」
キリノは命乞いを全て無視して、そのまま弾丸を頭に打ち込んだ。
「黙れ。これまでの罪を償え。」
キリノは静かに銃な引き金を引いた。
「バカな、この私がこんな小娘に。」
村長はそれだけ言って消えていった。意外と呆気なく終わってしまった。というかキリノって強すぎでは?
「キリノ、どうしてここに?なんで村長が人狼って分かったんだ?」
「まあ、色々とな。それより早く帰るぞ。ルナの傷はどんな感じだ?」
倒れている私にキリノを手を差し出す。私はキリノの手を掴んで立ち上がった。今日のキリノの手はいつも以上に冷たく少し怖かった。
「もう治りましたよ。今は普通に歩けるはずです。」
さっきまで確かに切り裂かれていた所が完全に治っていた。さすがアンナの回復魔法だ。
「うん、それじゃあ帰ろっか。」
「というかフラルもボロボロじゃないか。私が抱っこしてあげようか?」
「別に俺は子供じゃねえよ!」
「あはは、フラルったら顔を真っ赤にしちゃって。」
私達は笑いながらルルの元へ帰るのだった。
「そっか、村長は死んだのね。本当に良かった。これ以上被害が出なくて済むよ。」
ルルに村長を殺したことを伝えるとルルは嬉しいような寂しいような顔をする。いくら人狼だとしても楽しかった思い出まで消すことは出来ない。二人からしたら村長は本当の家族のようなものだったんだろうな。
「つまり姉ちゃんは村長が人狼って気づいてたのかよ。」
「ええ、私には迷いがあったけど今はもうないわ。これからはみんなでこの村を守っていきましょう。」
あれから少し経ち、村の人達も村長が人狼だということを知ってしまった。最初みんなは受け入れたくないような顔をしていたがそれでもみんな前を向いて頑張っていた。
「ああ、俺もこの村のみんなと一緒に守っていくぜ。もちろん姉ちゃんもな。」
「ええ、二人で頑張りましょう。」
フラルとルルはお互いに手を握りあって微笑んだ。
「貴方達も本当にありがとうね。私達だけでは変えられなかったから。」
「気にしなくていいよ。私達だって助けてもらったんだし。」
「ああ、本当に感謝しかない。」
少しの間だけど二人と話せて私も楽しかった。まあ、疲れは全然取れなかったけどね。
「それで貴方達はもう行ってしまうのね?」
フラルもルルもとても寂しそうに呟く。私だってできることならもう少しここにいたかったが今はゆっくりは出来なかった。
「ああ、私達には行かないといけない所があるからな。まあ、いつか会えるさ。」
「ええ、そうね。きっと会えるわ。」
ルルはいつも可愛いらしい笑みで微笑んでいた。次二人に会うのが楽しみだ。
「キ、キリノ。俺、次会う時はかっこいい男になるから。」
「そうか、なら期待しているぞ。」
顔を真っ赤にするフラルにキリノは微笑む。
「それでは行きましょうか。次の目的地へ。」
「うん、それじゃあ二人ともまたね。本当に楽しかった。」
「それじゃあ、またな。次会う時を楽しみにしているぜ。」
私達は手を振って二人に別れの言葉を告げた。出会って間もないとはいえ、別れは悲しいものだ。
「それでは次も場所へ向かいましょう。」
「次はどこなんだ。」
「えっと次はですね。」
何はともあれ一件落着だ。私はもうこれ以上変な事件に巻き込まれないことを祈るのだった。
人狼が倒されてキリノ達が帰った後、突然村が火の海になっていた。
「ゴオオオオ。」
町は燃えて阿鼻叫喚が聞こえる。
俺は姉ちゃんと外にいて散歩をしていたから突然の光景に頭が真っ白になる。誰がこんなことを。
「おい、姉ちゃん大丈夫か?」
「ええ、なんとか。それより早く逃げましょう。」
俺たちはなんとか火の海を避けてこの村を出ようとする。しかし逃げようとした時に一人の女の子がいた。俺より少し小さいくらいの女の子だったが、明らかに只者ではない雰囲気だ。
「あら?まだいたのね。盛大に燃やしてあげるわ。」
女の子はそう言って手から炎を出して姉ちゃんに放つ。
「きゃあああ、何これ?助けてフラル。」
「姉ちゃん大丈夫かよ。今助けるから。」
しかし姉ちゃんは一瞬で火だるまとなってしまい俺は呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。俺は一気に怒りが込み上げてくる。
「おい、お前ら。よくも姉ちゃんを!」
俺は勢いよく殴りかかるが女の子は再び炎をだして攻撃する。
「うざい。人間は黙って私に焼かれればいいのよ。」
「えっ」
気がつくと俺は炎に焼かれていた。熱い、ただ熱い。なんでこんなことになってしまったんだ。姉ちゃんを守れずにキリノにも会えないまま終わるなんて。俺はただこの村で平和に生きたかっただけなのに。
「ねえ、ここにも宝玉はないじゃない。本当にこの辺にあるの?」
「ああ、それは間違いない。となると残されるは塔か遺跡か。」
「はあ、これでなかったらアンタをぶん殴るから。それじゃあ次は塔に行きましょう。私はもっと面白いものが見たいわ。」
二人組はキリノ達の方向へ向かっていった。もしかしたらキリノ達が危ない。そう思ったところで俺は意識が途切れるのであった。ごめんキリノ俺何も出来なかったよ。




