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月面
突然に旅立った友人Kがウィスキー片手に五年ぶりに帰ってきたのは昨日の春
語らいは日比谷から吉祥寺に及び、赤羽で爆破となった
砕け散ったウィスキーの空き瓶は春の空にまいあがり、ブルースを口ずさみどこかへ消え去った
ここから赤羽までの光
赤羽からヒューストンまでの光
ヒューストンから月面までの光
月面から死刑執行人の胸ポケットの煙草までの闇
友人Kは、人差し指で世界を救う
そんな夢見がちな呟きとともにダイスに乗って転がっていった
少しだけ不思議に思う
其処と底と此処と個々とに流れた血が月面の大河となる
月面の狼が大河を渡る
どこまでも走る
友人Kも走る
月面の果ての曲線に地球が沈んでいく
なんだそうなのか、赤羽の月が見える橋の上で呟く