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殺風景
食堂に六人の男と女がいる
食べている
飲んでいる
予報は外れて肌寒くて、春を待つ木々に目をやって背けて
たわいもないことを考えようとしてみても上手くいかない
ならばたわいもなくない、たとえばモダンな社会問題や、あなたのことを考えようとしてみるが、やはりそれらもたわいもないことなのだと捨て鉢
木が揺れて風が吹くわけではないという
ここにあるものはどこにでもあり、ここにないものはどこにもない
テーブルの上のこの小皿も例外ではない
彼方にそびえ立つ巨大なマンションも例外ではない
風が吹いて木が揺れるのだという
コカ・コーラを飲んで生きている実感を得ようと試みる
もちろん、充足感すら得られない
そして食堂には誰もいなくなった
コカ・コーラの空き瓶だけが、テーブルの上に残った