表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

第7話:交錯する真実


 アレンが鏡の部屋で自分の「影」と向き合っている一方、リリアは別の空間に飛ばされていた。その場所はこれまでの迷宮とは全く異なる雰囲気だった。空は灰色に染まり、廃墟となった町のような場所が広がっている。街灯は折れ曲がり、建物の壁は黒い煤で覆われている。どこからか聞こえる遠い悲鳴と泣き声が不気味に響いていた。


 リリアは慎重に辺りを見渡し、呟いた。「これは……迷宮の試練じゃない。何かが混ざってる」


 その時、背後から声が響いた。


 「ここに来るのは……久しぶりだな」


 リリアが振り返ると、そこには一人の男が立っていた。黒いコートに身を包み、無精ひげを生やしたその男は、リリアを見て薄く笑った。


 「あなた……誰?」リリアは冷静を装いながら問いかけた。


 男は答えず、足元に散らばる瓦礫を蹴りながら言った。「まだ覚えていないのか? それとも、この場所が何を意味しているのかを知るのが怖いか?」


 「意味……?」リリアの眉が険しくなる。


 男は無造作に手を上げると、空中にいくつもの光の欠片が浮かび上がった。それらの欠片は一つずつ動き、やがて一枚の大きな絵となった。その絵には、リリア、アレン、そしてケインの三人が描かれていた――だが、どこか異様だった。


 三人の後ろには何か巨大な影が立っており、その目は赤く輝いていた。そして、アレンの手は血で染まり、ケインは崩れ落ちた瓦礫の山の中で動かなくなっている。リリアはその光景をただ見つめるだけで何もしていなかった。


 「これは……未来?」


 男は首を横に振った。「未来でも過去でもない。ただ一つの可能性に過ぎない。だが、お前たちが進む道次第では、これが現実になるだろう」


 リリアは冷ややかな声で言った。「そんな脅しには乗らないわ。あなたが誰であろうと関係ない」


 男は笑みを深めた。「本当にそうか? お前は、何を忘れているのかすら気付いていないだろう。この場所が何なのか――そして、お前自身が何者なのかもな」


 一方その頃、アレンは鏡の部屋での試練を進めていた。鏡に映る「影」は、執拗に問いかけてくる。


 「お前は何のためにここにいる?」

 「お前がいなくなっても、誰も困らないのではないか?」

 「お前はリリアを信じているのか?」


 アレンはそのたびに反論しようとしたが、影の言葉は自分の心の奥底をえぐるように響き、思考がまとまらない。


 「俺は……リリアを信じている!」アレンは叫んだ。


 だが、影は嘲笑うように答えた。「本当に? 彼女がすべてを隠しているのにか?」


 その言葉にアレンは動揺した。


 さらに別の場所では、ケインもまた奇妙な空間に放り込まれていた。そこは広大な戦場だった。彼の周りには無数の骸骨兵士が転がり、空には血のような赤い月が浮かんでいる。


 「おい、ふざけんなよ! こんなとこで何をしろってんだ!」ケインは叫ぶが、答えはない。


 その時、目の前に現れた一人の少年が言った。「ねえ、君ってさ、本当に"ケイン"なの?」


 ケインは眉をひそめた。「は? 何言ってんだ、お前」


 少年は笑顔を浮かべながら続けた。「君がケインじゃないなら、どうしてここにいるのかな? 本当は誰か他の人の役割を奪ったんじゃない?」


 「黙れ!」ケインは少年に向かって剣を振りかざしたが、少年は霧のように消えてしまった。


 それぞれが異なる試練を受ける中、視点は突然切り替わり、全く異なる情景が映し出された。





 ビルが立ち並ぶ都市の中、スーツ姿の男が慌ただしく歩いている。手にスマートフォンを持ち、画面を確認しながら誰かと話している。


 「リリアの進捗はどうなってるんだ? アレンたちも順調に動いているのか?」


 その男の背後には、「迷宮管理局」と書かれたビルの看板が見える。


 彼の声は次第に遠ざかり、またリリアたちの視点に戻る――まるで先ほどの場面が何かの幻だったかのように。


 リリアは再び廃墟の町に戻っていた。男の姿は消え、目の前にはいつの間にか一つの扉が現れていた。


 「……進むしかないのね」


 彼女は扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ