第2話:ダンジョンの掟
アレンは半信半疑でケインに同行することにした。彼の助けがなければ、次に何が出てきても対処できないことは明白だった。
二人が進むたび、デスダンジョンの異常性が露わになっていく。天井を這う無数の目玉、踏み入れると爆発するトラップ、そして所々に描かれた謎の文字――まるで迷宮そのものが生きているかのようだ。
「……なあ、ケイン。この迷宮って、どこまで広がってるんだ?」
「知らねえよ。ただ、上の階層にいるうちはまだマシだ。ここで死ぬ奴は”運が悪かった”だけの奴だしな」
ケインの言葉に冷たい現実が含まれている。アレンは改めて、この迷宮が人の命をなんとも思わない場所であることを実感した。
二人が次の部屋に足を踏み入れたとき、壁に刻まれた文字が光を放ち始めた。それはまるで血で描かれたような、不吉な赤い光だった。
「この部屋の試練を突破せよ。時間制限は30分」
次の瞬間、部屋の中央に設置された扉がガシャリと閉まり、逃げ道を塞いだ。
「試練……?」アレンが戸惑う間に、ケインが壁に視線を向ける。
「これは……解読しろってことか?」
壁の文字は複雑に絡み合い、まるで暗号のようになっている。その内容を読み解かなければ、この部屋から出られないということだろう。
「俺は戦闘専門だ、こういうのはお前に任せる」
「は!? 無茶言うなよ!」
抗議するアレンをよそに、ケインは剣を構えた。
「そう言いたいのは分かるが、”奴ら”が来るぞ」
部屋の隅で不気味な音が響く。気配を感じたアレンが振り返ると、霧の中から無数の小型の骸骨が現れた。
「解読はお前の役目だ。俺はこいつらを片付ける」
そう言ってケインが動き出す。アレンは慌てて壁に向かい、文字を読み解こうと必死になった。
ギリギリのところで暗号を解き終えたアレン。扉が開いた瞬間、ケインが残っていた骸骨を振り払い、息を切らしながら部屋を出た。
「やるじゃねえか……」ケインが不敵に笑う。
「こっちは死にそうだったんだぞ!」アレンは不満をぶつけるが、心のどこかで感じていた。
この迷宮では、自分一人では絶対に生き残れない。だが、この男と一緒なら――。