第1話:死者の迷宮への第一歩
アレン・クロードが「デスダンジョン」の入口に足を踏み入れた瞬間、世界がひっくり返るような感覚に襲われた。眩暈が収まり目を開けると、彼の周囲には見たこともない不気味な風景が広がっていた。
天井は見えないほど高く、黒い霧がゆらゆらと漂っている。地面は乾いた血のように赤黒く、所々に白骨が転がっている。「ここが……デスダンジョンか」
アレンは息を呑む。
ふと、遠くで何かが動く音が聞こえた。重い足音がこちらに向かって近づいてくる。アレンは腰の剣に手をかけ、警戒しながら周囲を見渡す。
ガシャン……ガシャン……
霧の中から現れたのは巨大な鎧をまとった骸骨だった。その目の穴には赤い光が灯り、重そうな剣を引きずりながら近づいてくる。
「いきなりこれかよ!」
アレンは剣を抜き、構える。だが、骸骨の動きは遅い。C級冒険者としての経験を活かし、何とか隙をついて剣を振り下ろす――しかし。
キィィィン!
剣は骸骨の鎧に弾かれ、火花を散らした。
「嘘だろ、全然効いてない!?」
骸骨はアレンの一撃をものともせず、大きな剣を振り上げた。必死で身を翻し、間一髪でかわすアレン。背中に冷たい汗が流れる。
「こんなの、一人でどうやって倒せっていうんだ……!」
だが、次の瞬間――
ズバァン!
骸骨の頭部が吹き飛び、その巨体が崩れ落ちた。
「大丈夫か?」
背後から聞こえた声に振り返ると、一人の男が立っていた。短く刈り込んだ金髪に鋭い目つき、重厚な鎧を身にまとったその男は、アレンを見下ろしながら剣を収める。
「お前、初めてか? デスダンジョンに来るのは」
「……そうだ」
「なら、教えてやる。この迷宮じゃ、”一人で生き残る”なんて夢のまた夢だ」
男はそう言うと手を差し出した。
「名前はケインだ。お前も死にたくなければ、俺と組むんだな」