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第18話:進む先に待つもの


扉が開くと、目の前に新たな空間が広がった。アレンとリリアはそこに足を踏み入れたが、ふと振り返ったその瞬間、ジョージが後ろで立ち尽くしていた。


ジョージは静かに微笑んでいた。その表情はどこか満足そうで、どこか不気味にさえ見える。


「じゃあ、またね」と、ジョージはそれだけ言った。


アレンはその言葉が不安を呼び起こし、無意識のうちに足を止めた。しかし、その瞬間、ジョージが奇妙な力に引き寄せられたように、急速に後ろへ引っ込んでいった。何かに引き寄せられるように、無力で、次第にその姿は見えなくなっていった。


「ジョージ?」アレンが声を上げるが、彼の姿はもうそこにはない。


「ジョージが…消えた?」リリアがつぶやきながら、周囲を警戒して目を動かす。


その後ろで、扉が完全に閉じる音が響いた。それと同時に、ジョージの微笑みが脳裏に焼き付いていく。


アレンは短くため息をつき、「もう戻れないんだな…」と呟く。リリアも無言で頷き、二人は再び前を見据え、迷宮の深部へと足を進めた。


新しい空間は、広い広間のようで、天井は高く、暗闇に包まれている。しかし、中央には大きな石の台座が置かれており、その上には何かが置かれている様子だった。


「ここも試練の一部か?」アレンが辺りを見回しながら、台座に近づいていった。


台座の上には、古びた書物と一枚の紙が置かれている。アレンはそれを手に取ると、文字が書かれていた。


「最も大切なものを見逃さないで。」


「これだけ?」アレンが呆れたように言う。


「何か意味があるのかしら…」リリアがその言葉を反芻するように繰り返す。


アレンは無意識に書物を開き、最初のページをめくった。そこには奇妙な絵が描かれていた。その絵には、まるで何かを示唆するような不思議な形が描かれており、リリアはその形をじっと見つめた。


「これは…」リリアが声を上げる。「確か、以前に見たことがある。『記憶の断片』という古代の伝説で、似たような絵が紹介されていた」


アレンはその言葉を聞いて少し考え込む。「記憶の断片…あれは、まるで人々が忘れ去ったものを形にしたような話だったな」


リリアが頷く。「そう、それがこの迷宮に関係しているかもしれない」


その時、台座の上に置かれていた紙が、何かの力に引き寄せられるように動いた。紙はふわりと浮かび上がり、文字が光り輝きながら浮かび上がった。


「真実を知りたければ、目の前のものを試すがいい。だが、それが答えであるとは限らない。」


アレンは目を見開いた。「試すって、何を?」


その言葉とともに、台座の周りに現れたのは巨大な鏡だった。鏡の中には、何も映らない。ただ、何もない空間が広がっているように見える。


「鏡の中に、何か隠れているのか?」リリアが言いながら、鏡に近づいていった。


アレンもそれに続いて、鏡の前に立った。すると突然、鏡の表面がゆっくりと歪み、何かが現れ始めた。それは次第に、人間の顔のような形をしていった。


「まさか…」アレンが息を呑む。


鏡の中に映った顔は、何も言わずにただ微笑んでいた。それは、まるで試練を受けた者に向けられた挑戦のような微笑みだ。


「答えは本当に…わかるのか?」リリアが呟く。


その時、鏡に映った顔がゆっくりと動き、静かに口を開いた。


「本物はいない。」


その言葉が響くと、鏡が完全に消え失せ、再び静寂が広がった。


アレンとリリアはお互いを見つめ、しばらくその意味を考えていたが、やがてアレンが口を開いた。


「つまり、試練の答えは…これで終わりってことなのか?」


リリアは深く息を吸い、少しだけ頷いた。「そうみたいね。『本物はいない』。その言葉が示しているのは、実はこの迷宮自体が試練であるということかもしれない」


アレンはその言葉に深く頷き、再び前を見据える。「じゃあ、進むしかないな」


二人は迷宮の先へと足を進めていった。

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