表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/28

第12話:心の試練と奇妙な遊び


 迷宮の奥深くに進むにつれ、空気はますます重くなり、足音が響くたびにその音が異常に大きく感じられた。アレン、リリア、ケインの三人は、何度も立ち止まりながらも、ひたすら歩き続けた。迷宮の廊下はどこまでも続き、時折不気味な音が響いてくるだけだった。


 「ここは…どこまで続いているんだ?」ケインが顔をしかめながら言った。


 「分からない。ただ、前に進むしかないんだ」とアレンは答えた。


 突然、前方に扉が現れた。その扉は、どこか普段の迷宮のものとは違って、鮮やかな色彩に包まれていた。赤や青、緑、黄色の光があたりを照らし、その扉の周りには奇妙な模様が刻まれていた。


 「この扉、今までのとは明らかに違う」とリリアが言った。


 アレンは深呼吸し、扉を開ける決意を固めた。「進むしかない。俺たちの試練が待っているんだ」


 扉を開けた先に広がっていたのは、奇妙な空間だった。まるで現実世界から隔絶されたような場所で、空間は歪んでおり、無数の光が漂っていた。その中央には、奇妙な形をしたテーブルが置かれており、その上に何かが乗っていた。それは、まるで子どもが遊んでいるかのような、不思議な道具だった。


 「何だ、これは?」ケインが目を丸くしてその道具を見つめた。


 アレンとリリアもその道具に近づくと、それはまるで「無重力ボール」と呼ばれる不思議な道具だった。この道具は、手で軽く触れると、空中に浮かんで回り始め、自由自在に動かすことができる。しかし、見た目に反してその動きには一切の制約がなく、ボールが一度動き始めると、どこまでも追いかけることができるのだ。


 「これは…何だ?」アレンが訝しげに尋ねた。


 リリアがしばらく考えた後、答えた。「これは『無限回転ボール』という遊びに使う道具だと思う。まるで迷宮のように、終わりがないように見える」


 「無限回転ボール? そんな遊び、聞いたことがないぞ」とケインが言った。


 「そうだろうね。現実には存在しない遊びだから。でも、この迷宮の中では、そういう奇妙なものが現れることもあるんだ」


 「どういう意味だ?」アレンが首をかしげた。


 リリアは道具を指差して説明を始めた。「この遊びは、無重力ボールを使って、自分の意識を集中させ、ボールの動きに合わせて進む道を探すというものなんだ。ボールがどこに飛ぶかを予測し、その予測を次々と繰り返すことで、次に進むべき道を導き出すことができる」


 ケインは少し不安そうに言った。「それ、結局ボールを追いかけてただ走り回るだけじゃないのか?」


 「いいえ、そうじゃない。無重力ボールは、あなたの心の状態を映し出す鏡のようなもの。ボールがどこに飛ぶか、それにどう反応するかが重要なんだ」とリリアが静かに言った。


 アレンはその意味を理解できないまま、無重力ボールを手に取った。手にした瞬間、ボールは軽く回転を始め、空中で不規則に動き出した。アレンはその動きに合わせて追いかけるが、ボールはあまりにも速く、まるで自分の意志とは無関係に動いているかのようだった。


 「どうやら、ボールの動きには、こっちの思考が反映されているみたいだ」とリリアが言った。「ただし、集中力が足りないと、予測はうまくいかない」


 アレンは深く息を吸い、心を落ち着けてボールを追い続けた。ボールは一度も同じ場所に留まることなく、次々と新しい方向に飛んで行く。その動きに合わせて、アレンは無意識に足を動かしていった。


 「これが試練だって言うのか…?」アレンは自分の意識と体を駆使してボールを追いながら、ふと思った。だが、その時、突然ボールが逆方向に飛び、アレンは思わず足を止めてしまった。


 その瞬間、ボールがそのまま床に落ち、跳ね返った。跳ね返り方が不規則で、まるで無限に跳ね続けるように感じられる。


 「これも一つの試練だ」とリリアが言った。「お前の心の奥底に隠れているものが、無重力ボールを使って現れる。それを乗り越えることが、この試練の目的だ」


 その後、アレンはボールを追い続けるうちに、少しずつ自分の心の中に潜む不安や恐怖を感じるようになった。そして、ボールが跳ねるたびにその不安は増していき、最終的にアレンは思わずボールを力強く掴んだ。


 「やっと、捕まえた…」アレンは息を荒げながら、ボールをしっかりと握りしめた。


 その瞬間、目の前の空間が歪み始め、無数の光が放たれて、ボールが消えた。


 「試練が終わったということか?」ケインが呟いた。


 リリアは静かに頷いた。「そうだ、アレンは無重力ボールの試練を乗り越えた。次の扉が開くはずだ」


 その言葉とともに、前方に新たな扉が現れ、三人はその扉を開ける決意を固めて進み続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ