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#8 店番確保

「昔話はよーく分かったよ。山城さんとことウチの関係もな」


爺様同士の褒め合いもそろそろ飽きた頃、俺はそう発言した。…いや、誰得だったんださっきの雰囲気。そんな中でも自分のペースを崩さないギャルってやっぱりすげーわ。


「それで、いきなり店に全員集合した理由と、この子と一緒に学校までお出迎えを用意してくれた事情を教えて欲しいんだが」


「あぁ、そうだったな。まぁ一つずつ話していこうかね。まずは今日店に集合したのは面接だな」


「面接?」


「そう、鋼太は明日から夏休みじゃろ?せっかく時間もたっぷりあるし、そろそろ工房の方で修行をつけてやろうといったが、店番がいないんじゃそれどころじゃねぇ。そこでちょうど良いタイミングで山城さんちから連絡があった。この子がウチの店で働きたいって言ってくれたみたいでな」


話を振られたギャルは頬いっぱいにお菓子を入れながら"イェーイ"とダブルピースしている。ノリが軽いな…。


「仕事仲間の娘さんがここの店番って、貴重な戦力をとられた形になるんじゃねぇの?…まぁ一緒に来てるから心配ないんだろうけど」


「鋼太くんは優しいですなぁ。先ほど話してくれた通り、私としては全く問題ありませんのでこうしてこのお店に来ました。この子には既にある程度技術を教えていますし、最終商品を見て貰うのも勉強になるかと」


「…さいですか。()()()()()()()ちゃんと教えてもらってるのは羨ましい限りですね。」


じろっと睨む鋼太と、その視線に対して少しバツが悪そうな鍛鉄。


「しょーがないだろうに。ウチは鍛治で火の神様を扱う場所じゃ。体力だけでなく精神面もある程度熟さな()()()()()()。言い伝えじゃがな」


火に食われる?どう言うことだ?ファンタジーかよ。


「まぁまぁ鍛鉄さん、そう熱くなりなさんな。その手の話は追々してったらいいでしょう。

私的には今回の顔合わせは2つの意味があります。

一つは私の孫娘がこの店にいて浮かないかどうか。見てわかる通り少し現代に寄ったファッションセンスなものでお店に迷惑をかけないか、と。…まぁそこは杞憂でしたね。うちの孫はどんな服を着ても、どこにいても愛くるしい」


そう言いながら孫を見て微笑む爺さん。好々爺だね、孫に甘々だね。越冬前のリスもびっくりするほど頬が膨らんでるよ?その子。


「それともう一つ…」


そう言いながらじろりと鋭い視線を俺に向ける。え?俺なんかしたかね?


「孫娘が楽しそうに話していた店番の少年をこの目で見ておきたくてね。どんな学校で、どんな学友達と過ごしているのかも気になって学校まで車で行ったと言うわけです」


………

こえぇぇぇぇぇぇ!

え?孫娘のためにそこまでするの?怖い怖い怖い…金持ちの思想なのか、偏りすぎてて理解に苦しむ!庶民バンザイ。


「おじいちゃん、どうだった?私めっちゃちゅーもくされてなかった?目立ってたっしょ!?」


「ほっほっほ。そうですね、千紗が1番目立って輝いていましたね。男女問わず皆話しかけようと躊躇っていましたよ」


「でしょでしょ!学校の雰囲気はみーんな黒髪だったし、優等生?って感じだったね」


「そうですね、きちんとした身なりは学生の基本ですから。学友達の様子を見た限り鋼太くんも安心して良いかと思いましたね」


そりゃウチの高校は公立で、規則も並の学校だから髪の色や制服の着こなしは普通なはずだ。バレない程度に化粧をしたり、スカート丈を如何にバレずに短くするかで競っている程度なので、少なくとも目の前にいるようなギャルは存在しない。今日はこれでも抑えめだが。

お宅のお孫さんの身なりは学生の基本なのかな?指摘したらこちらの負けかな?


「何はともあれ、こちらは目的を達成して満足しているので、後はお店で働いても良いかの確認だけかと思います。鍛鉄さん、いかがですかな?」


「あぁ!こっちとしても孫の世話に集中できる良い機会をもらって言うことないわい。千紗ちゃんは可愛いし、愛嬌もある。今までと違って、店が忙しくなるかもなっ!ははははは!」


「鍛鉄おじさん、鋼太くんもお世話になりますッ!バイトの日は週3ぐらいかなーって考えたりしてますが、夏休みは基本暇なのでお店の状況に合わせまぁーす!今日からでも仕事のレクチャー歓迎ですッ!」


「こちらこそよろしく頼む。やる気があっていいねぇ、どこかの誰かさんとは大違いだ。

基本は鋼太に店のことは教えてもらう予定だが、仕事の条件なんかも詰めなきゃならんから…明日にでも連絡することにしようかね。

鋼太に嫌なことされたらいつでも言ってくれ、きっちりと拳で指導する」


わいわいと今後のことを話して盛り上がってる雰囲気の中、俺は別のことを考えていた。夏休み中に鍛治を習うことが楽しみな高揚感、店番を他の人に任せると言う少し寂しい気持ち、山城さんちとウチの関係の全貌が見えていないこと、それと…


「山名さんのことも伝えなきゃじゃん…」


同級生からも店番をお願いして欲しいと言われていたことを思い出した。夏休み直前に色んなこと起こりすぎじゃね?夏休みの俺の日常はどうなるんだろうか…。

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