#19 歓迎会
遅くなり大変申し訳ありませんでした。
年内にまあ1話いけるか…!
「お?やっとるやっとる。慎太郎くんもちょうど終わったっていうから乗せてきたわ」
「こんばんは。待たせてしまったかな?お義父さんに今回のことは少し聞いたんだけど、そちらが山城さんのお孫さんで合ってるかな?」
そういって柔らかい口調で話しかけた優男然とした男こそが玉城慎太郎。鋼太の父である。
人の良さそうな雰囲気であり、近所でも話しかけやすいと評判のお人好しである。
「そうです!山城千紗といいます。急な話でご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします!」
「うんうん、元気が良くて眩しいね。何か不便なことがあったら鋼太に言うんだよ。
それに、今回の提案はお義父さんからって聞いてるからね。千紗ちゃんが申し訳なく思うことはないよ」
「ガハハハ、すまんすまん。千紗ちゃんがあまりに良い子でな、気持ちが先走っちまったわ」
慎太郎は玉城家に婿養子として結婚した。別に気が弱いわけでもないし、会話の通り結構ズバズバと思ったこともはっきり言う性格をしている。そこが義父である鍛鉄とも結構馬が合い、2人で飲みに行くほど仲も良いため、軽口も言える関係なのである。
「まぁ詳しい話はあとで聴きたいな。帰りが遅くなってごめんね。千紗ちゃんもお腹ペコペコだよね?
凪の料理は美味しいから期待していてね」
「もうお腹ペッコペコです!お家入ったときから良い匂いがずっとしてて、お腹鳴りっぱなしです」
「あらあら、すぐに用意するから少し待っててね。足りなくなったら何か出前でも取りましょうか。千紗ちゃんの歓迎会だもの」
そういって準備していた料理が次々と机に運ばれ、すぐに机がいっぱいになる。
各自飲み物を準備しながら席に着く。
「じゃあ、千紗ちゃん!ようこそ玉城家へ!短い間だけどよろしくね。何か一言貰えたりするかな?」
「もう、慎太郎さん。お仕事じゃないのよ?遊びに来たみたいなもんなんだから、一言なんて要らないじゃない?」
そんなやり取りでみんなで笑い合う穏やかな空気の中食事会がスタートした。
テーブルの上にはローストビーフやチラシ寿司、ピザなどの和洋折衷のごちそうがズラリとテーブルに並んでいる。しかも冷蔵庫にはケーキも控えているらしい。
おいおい、俺の高校の合格祝いなんかでも、こんなご馳走達が一同に介したことないぞ。実の息子以上だとッ...山城家になんか弱みでも握られてるんか?
まぁでも、美味しいもんが食べられるんだから感sy『童よ、先程から貴様ばかり食べおって。約束のサンマはまだか?』
「あぁ?こんなにご馳走があんだから、サンマなんていらねぇだろ」
「ふん。サンマ以上にそれらが美味いと申すのか?では、そのスシとやらをよこせ。あとそこにある薄っぺらいのもな」
「はいはい、しゃあ...あ?」
白面の声に反応して会話をしてしまったが、ふと気付いて周りを見る。
全員が俺をじっと見ている。冷や汗が止まらない。やべぇ、待て待て待て待て。
白面がじっちゃんに話しかけたが無視されたっていう話を思い出す。
そうだった。あの時は笑ったが...他の人には白面が見えていないし、声も聞こえないって可能性をすっかり忘れて反応しちまった。
「鋼くん?独り言を結構大きい声で言うタイプなんだ?」
「あ、あ、あぁ。いや、夜ご飯が美味しいもんだから、昼に食べたサンマ思い出しちゃって。あははは...」
「鋼ちゃん。サンマさんも十分ご馳走よ?いらないなんて、お母さん泣いちゃう...」
「ごめんごめん!いやちょっと霞んじまった『おい、早うスシを』って。あははは」
「まーた凪さん泣かせてっ!」
全員が怪訝な雰囲気ではあったが、母さんと千紗のやり取りでみんなが笑って俺を責めるような空気へ変わり、気づけば千紗の趣味などの私生活の話題へと移り変わっていった。
何とか誤魔化せたのか...?
なんでこんな人がたくさんいるタイミングで更に話しかけてくんだよ。バカがよぉ、それどころじゃなかったぞ。
ふざけんな、ちょっと待て。という気持ちを込めて横目でチラッと睨むと、それ以上の形相で睨み返してくる白面。よだれダラダラしてる場合じゃねぇぞ。
『後で残りもんを渡す』と口パクで伝えると白面も雰囲気を察し、全員をグルっと見渡してから、『ふん』と言いながら部屋の隅っこで再度丸くなった。
折角のご馳走だったのだが、これ以降は料理の味が全くしなかった。
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ご飯の後、それぞれ風呂の時間となった。
お客さんが一番風呂に入ることは我が家ではルール。千紗は遠慮していたが母さんからのもうプッシュと、お家のことを少し手伝ってもらうと言う条件で頷いていた。今頃風呂に入っているはずだ。
俺は白面との共存について本気で考えなければと思い、自室で色々と調査をした。
まず、白面の行動範囲はそこまで広くないらしく、元刀から10m程度らしい。今日は偶々荷物を居間に置いたままにしてしまった俺が悪い。
ご飯については特に食べる必要はないため、新しく用意する必要はない。しかし、嗜好性の問題で貰える時は欲しいし、俺たちが食べてる物が良いとのこと。わがままかよ。
視認性については、間違いなく俺以外には見えていなさそう。これに関してはもしかしたら俺が悪いのか?と言うか、俺の頭がおかしくなった可能性も否定はできない。
風呂は必要ないし、睡眠も必要ないらしい。じゃあなんで丸まって寝てるんだ?と聞いたら『童には関係ないことだ』といつも通りの返し。怠惰なだけだろ。
「…ざっとこんなもんか。」
並行して進めていた元刀に油を塗る作業も完了したところで、思考も終了。
ちなみに白面は夜食と言って俺が持ち出した大量の食事を見事に完食し、今は丸まってじっとしている。
…明日からなんて言って食事持ち出そうか。
その時、コンコン。とドアをノックする音ともに声が聞こえてきた。
「鋼くん、入ってもいい?」




