#16 童と毛玉
いつも稚拙な文章を読んでいただきありがとうございます。
今日中にもう1話更新頑張ります。
今後とも本作品をよろしくお願いいたします。
今どういう状況なのか。
早朝に道場でエンカウントした毛玉の霊(推定)から命からがら逃げてきたのに、その毛玉の霊(推定)が家にいるっていうこと。そして、今まさに同じ食卓を囲もうとしてるところ。
これってどういう状況なのか。誰か原因と対策教えてくれますか?少なくとも進研ゼミにはなかったぞ。
知恵袋に助けを求める?書いてる場合じゃないとか、そんな余裕あるとか嘘乙とかってバカにされて...。
はい、現実逃避終了。ええい!どうにでもなれ!
コトッ。
「どうぞ。庶民のつまらぬ朝ご飯ですが、お口に合えば幸いです。お箸は使われますか?」
「心遣い感謝するが、箸など使わん。では、遠慮なくいただこう」
毛玉様は皿に口を近づけ、直接口に含む...わけではなく、スーッと息を吸い込むような動作をする。
すると、皿の料理からモヤのようなものが抜けていくと同時に、料理が音もなく霞のように消えていく。
ほぇ〜これが幽霊の食事か。初めて見たけどやっぱり人間とは違うんだな。
あと、ここまで料理に執着する様子を見たところ、きっと生前は美味しいご飯が食べられないまま生涯を閉じたに違いない。その無念から幽霊にまでなってしまったんだろうな。なんだか可哀想に思えてきた、態度はでかいけど。
...こらッ。サンマ全部食うな。俺の分なくなるだろ。
「こらッ。サンマ全部食うな。俺の分なくなるだろ」
「む?すまんな、ついつい味が好みでな。すまぬ」
心の声が口から出てしまったみたいだ。失敗失敗。
まぁでも、この満足げな顔を見る限りオモテナシは上手く言ったと考えるべきだろう。さぁさぁ成仏まであと一息だよ!ラストスパート!
「ふぅ、美味かったぞ。童、ワシの分はこれからサンマで良い。毎日頼むぞ」
「へ?毎日?美味しいご飯食べて満足して成仏するのではないのですか?」
「んなわけなかろうに、そもそもワシは成仏とかそういったものはせん。」
「...成仏しないの?てか、何で道場に取り憑いてたのに俺の家にいるんだよ」
今回限りかと思って全力でオモテナシしたのに。俺の全力返せよ、明日からは鰹節ご飯しか出さねぇよ。
てか、え?成仏しない霊が家に居着いてるって状況自体がやばくない?
お祓い依頼したほうがいいのかな、成仏しないのに祓えるのか知らんけど。
「ふんっ。童よ、貴様は最初から勘違いしておる。ワシは道場におったわけではない」
「え?」
「童らが昨日包丁といって研磨した刀にワシは宿っておる。まぁ元刀であり、そこから身動きが取れないワシは封じられているというのが正しい表現なのかもしれんがの」
「え?」
「なんじゃ、今代の玉城の者はまともに会話もできんのか。昨日の作業も拙いものであったし、時代の変化は嘆かわしいの」
毛玉様が何か言っているが頭の処理が追いつかない。
昨日の包丁は実は刀だったのかとか、刀に封じるってなにとか、そもそもこいつは何なのとか...
「おーけー、おーけー。何もわかっていないが、ひとまず全部諦めよう。ひとまず、お前はなんなの?」
「童よ、口の聞き方には気をつけよ。それに、名を尋ねるのであれば先に名乗るのが礼儀ではないのか?」
「ぐッ。...ふぅ。俺の名前は玉城鋼太だ」
「知っておる。昨日から童と童の祖父の会話は聞いておったからな」
「知ってるのかよ!じゃあ聞くなよ。そしたらすんなり名乗れよ」
「ふんっ。断る」
「結局言わねぇのかよ。めちゃくちゃ無駄なやり取りじゃんか」
毛玉様の手のひらの上で踊らされてるような気持ちになり、一気に疲れた。
何で名前聞くだけでこんな気持ちになんなきゃいけねぇんだ。
そんな鋼太の様子など意にも介さないように、ひとつ伸びをした後、丸まって背中を見せる毛玉様。
「貴様が童を脱し、一人前の男になった際には考えておいてやろう。そんな瞬間は来ないかもしれんがな」
「毎度一言多いんだよッ!俺のサンマ返せよ」
「まだ気にしておったのか。見かけ以上に器の小さい男よな」
クッソが!!!(脳内)
...ふぅ...相手のペースに飲まれるな。
また余計な一言がくる。ステイだ、俺。
「しかし、これから少しばかり世話になるからの。呼び名がないのもお互い不便よな。
特別にワシのことは白面と呼ぶことを許そう。光栄に思うが良い」
「世話になるやつの言動じゃねぇよ...まぁもう疲れたからそういうことでいいや。
で、世話になるってどゆこと?」
「察しの悪いやつよ。何故このタイミングでワシが現れることになったのか、何故ワシがこれにおったのか、この辺りで次に何をすべきかは自ずと答えが出よう」
「あぁ、そういう遠回しの良いから。サクッと説明してくれ」
「…ワシから童に課す使命の1つを端的に言うと、この元刀を鍛え直し、修繕すること。
これを実現する気があるのであればワシは協力を惜しまんし、童が一人前の鍛冶師になれるよう持てる知識でサポートすることを約束しよう」
そう言って昨日鋼太研磨した包丁と呼んでいたものを指差す。
修繕ったって、何すりゃ…
「そして2つ目が...」
「待て待て、既に話が飛躍してるって。俺が鍛冶師として一人前になったら、刀を制作できるのは理解できる。そして、刀を鍛え直せることも想像ができるし違和感はない。
だけどその前に...何で白面を封じてる?刀を修繕する必要があるんだよ」
「それを童が今知る必要はないが...強いて言うのであれば、近い将来に起こる崩壊を止めるため。来たるべき戦いに備えるためだの」




