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#13 ザッバッーン!ガチャ!ガシッ!

「そもそも日本刀が何で出来ているかは知っているだろ?」


「そりゃ鉄だろ?」


「そうだな。だが、刀鍛冶を目指すもんが"鉄"なんて言葉で十把一絡(じっぱひとから)げしているようでは先が思いやられるのぉ」


炉に体を向けているため鋼太から顔は見えないが、絶対ニヤついている。

自身の優位を確信した笑みを隠せていないに違いない。

腹は立つが確かに今まで学ぶ機会はあったはずなので、舌打ちをするだけで済ませておく。


「...で?」


「ったくからかい甲斐がないの。鍛冶をやる上で鉄っちゅうのはいくつか種類があって、それを選別すんのも鍛冶の重要な作業のひとつなんだわ。

そのための作業のひとつが水減しなんだが...まぁ見てろ。」


そう言って炉の中から赤くなった塊を台の上に置き、小槌で叩いていく。

カン、カン、カン...


悔しいがめちゃくちゃ洗練された動きでカッコいい。

一定リズム、力感覚で叩いているのが見ていれば分かる。ジジイのくせに。


そして色が赤から黒っぽい色になり、塊が厚さ5mm程度の板に変わったタイミングで、水にいれる。

...結構凄い音がしたので、ちょっと声出ちゃったじゃん。

先に言ってくれよ、恥ずかし。

そうして水から出てきた鉄の板は、色こそあまり変化はないがサイズが一回り小さくなった気がする。


「水減し自体はここで終わりなんだが、選別っていうのも説明するために次の工程も少し見せるか」


そういうと、先程作製した板を再び小槌で叩いて砕き始めた。

約2cm四方ぐらいのサイズにしていき、出来上がった小片を何やらグループ分けをしている。

やっていることは理解できないが、ひとまず見ておこう。ステイだ、俺。


「この工程は小割(こわ)りと言ってな、主に割れ方を見て素材の選別が可能なんよ。

この割れ方の違いは素材に含まれる炭素量で決まっていてな。その炭素量っていうのが、日本刀自体の切れ味や耐久力に影響があるんだが...ほれこれを見てみろ」


そういうと実際に小槌で叩いて見せてくれるが、きれいに割れたり、割れずに折れ曲がったり、割れるより崩れるようなものがあったり…。

そういった細かい割れ方を元に"鋼""心鉄候補""その他"と書かれた3つのボトルへ次々と入れていく。

そうしてもう一つ、"玉鋼"と書かれたボトルがあるが、今のところ何も入っていない。


「...とまぁ素材選別はこんなもんだ。仕入れてある鉄を熱して叩いて板状にした後に、冷やす。ここまでが水減しだ。

その板状になったものを小さく割っていくことが小割り、その割れ方で選別していくってわけよ」


「ちなみに、この分類の種類を聞いても?」


鋼太は難しい顔のまま、4つのボトルを指差す。


(はがね)は小割りで綺麗に割れたもの。これは鍛冶で使う上で炭素量がちょうど良さそうなもので、主に刀身の大部分となり刃の部分になるものだ。

心鉄(しんがね)候補は割れずに曲がったもので、炭素量が少なく強度が弱いため刃の部分には適さないが、他の使い道がある。

その他は名前の通りそれ以外だな。炭素量や不純物が多すぎて崩れやすい部分ですぐには使用できないが、加工用したり別の使い方をする」


「じゃあこのこれは?」


そういって"玉鋼"と書いたボトルを指差す。


「それは玉鋼(たまはがね)と言うんだが...鋼の内、表面や断面の色合いや均一具合から更に上質となるものを更に選別したものが入っていく。

まぁ小割りや選別はもう少し慣れてからだ。まずはこの原料をうまく板状に加工していく水減しをきちっと身につけてからだな」


「じゃ、早速...」


「まぁそう言うと思ったが、ほれ」


そういって鍛鉄は時計を指差すと、時刻はすでに14時を回っていた。


「昼飯も食べてねぇし、今日のところはもうおしまいよ。腹が減ってはなんとやらだ」


「えぇ!まじかよ、せめて一個ぐらい...」


そういったところで腹の虫がなく音がする。もちろん鋼太からだ。


「ガハハハ、体は正直なもんだ。腹が空くと自ずと集中力も落ちる。そういう時は得てして怪我も起きやすいからな、無理にやるもんでもねぇ。なぁに、お前がこの作業を身に付けてくれたほうが俺は助かる。またすぐに連れてきてやるからよ」


鋼太の頭を撫でた後、鍛鉄は火の始末や道具の片付けを始めた。


「ッチ。子供扱いしやがって。すぐっていつだ、明日?」


「だから急くんじゃねぇって。既にお前用としてたっぷり材料発注してるんだが、その到着が3日後の予定だ。

その時に朝から晩までみっちり仕込んでやるからよ、体調だけ整えておけよ」


「おっしゃ、了解!」


「あとな、明後日も体空けておけよ」


「え?その日は普通にバイトの日だったような気がすっけど」


「あぁ、そうだったな。その日に千紗ちゃん店に呼ぼうと思ってな。

予定通り正式採用の予定なんだが、どちらにしても店の仕事の引き継ぎ期間が必要だろ?」


「そっか、まぁ俺は構わねぇけど...」


そういえば、バイトの続報について山名さんに全然連絡してなかったな。学校もなかったし、めっちゃ忘れてた、ヤッベ。

どうせ店のこと教えるならまとめてのほうが良くね?

あの子とマンツーマンで教えるのも間が持つのか不安だし、面接とかも全部一日にまとめたほうが効率的だよな、俺天才?

てか、山名さんまだやる気あんのかな...?


「なぁじっちゃん、前に話したバイトしたいって言ってた俺の学校の友達もその日に呼んでいいかな?

じっちゃんも一回顔合わせたり、シフトのこととか話すよな」


「あ?その話ってお前が給料の話を盛ってたから、謝って断るって話じゃなかったか?」


「全然違う覚え方してるじゃん...。俺も不思議なんだけど金物屋のバイトに興味がある貴重な人材だし、断るにしても何にしても、顔合わせてからでもいいだろ?」


「あぁ確かにそうだな。まぁ2日後だからあんまり余裕ないが、向こうさんが良いなら声かけておいてくれ」


「おっけ。まぁダメだとしても候補日聞いておくから、そん時はよろしく頼むわ」



▽▼ ▽▼ ▽▼ ▽▼ ▽▼ ▽▼ ▽▼ ▽▼ ▽▼ ▽▼



ピコン。

ザバッー!ガチャ!ガシッ!(ケータイを握る)...。

...タタタタタ、タタッ(消し消し)、タタタタタ、タタッ(消し消し)、タタ.........

シュポッ(送信完了)、シーン.........、ダンッダンッダンッ(頭を打ち付ける音)、シーン.........

ガチャ、チャポン、シーン.........


「はうぅ、あの返信変じゃなかったかなぁ。いや、当たり障りのない内容だったはず。

というか既読がつかなかっっということは、返信が遅かったんだ。ぁあああブクブクブク『ピコン』」


ザッバッーン!ガチャ!ガシッ!(ケータイを握る)...。

...タタ(中略)

ガチャ、チャポン、シーン.........


「明後日ッ!きゃぁぁぁブクブクブク...」

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