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#10 いざ、工房へ

悪夢の会合の翌日、鋼太は祖父と共に工房に来ていた。

店の方は臨時休業にし、ひと足先に見学の許しを貰ったのだ。


鬱蒼とした林の中に突如として奥ゆかしい雰囲気の建物とその奥には少し高い塔が見える。

鍵のかかった金網やら関係者以外立ち入り禁止といった仰々しいものはなく、パッと見は少し大きな民家ぐらいに見える。

車を降りて工房に入るじっちゃんの背中を追いながら語りかける。


「じっちゃん、店休みにして良かったのかよ。年中無休がウチの売りだろ?ましてや夏休み始まったってのに…」


「1日くらい鎌わねぇよ、別に対して売り上げがあるわけでもねぇし。鹿せんべい屋は他にもあるだろうが」


「ウチは鹿せんべい屋だったのか…ご立派な包丁やら何やらは飾りなのか」


「今は気にせんでええが、お客さんは別にもいるってことよ。まぁ俺には素質がない()()()から、悲しいことに昔からの客はどんどん離れてるがな」


「え?あの店だけで何とかやってるかと思ってたわ」


「まぁおいおいこっちの依頼も手伝ってもらうが…まずは、しっかり書の解読に励むんだな、ガハハハ」


「…さっぱり何のことかわかんねぇよ。書の解読と他のお客がどう結びつくんだよ」


「その別口の依頼に関することが二巻の"精神"の書に少しと、あとは八巻以降にも記述があるそうだ。俺も、俺の親父も素質がない側でな、詳しい内容は理解できんしよく知らん」


「何じゃそりゃ。それじゃ教えてもらえねぇじゃん」


「だから言ったろ?自分で身につけるもんだとな」


「んな無責任な…ッ!」


話をしながら工房の入り口から入って左手の部屋に入っていったじっちゃんの後に着いていき、中の光景を見て鋼太は声を失った。

炉やテーブルがある作業場らしきスペースはもちろんあるが、壁一面にショーケースに入った日本刀がズラリと並んでいる。

日本って銃刀法って法律あったよね、と心配になるぐらい当たり前のように日本刀(武器)がある。もっと戸締り厳重にしなきゃダメな場所なのでは?


「ガハハ!だいぶ驚いてんな。…あぁセキュリティ面は安心せい、ドアについてる静脈認証で弾かれるとそもそも開かん様になってる。他の部屋はもっと厳重じゃから、迂闊にドアを開けようとするでないぞ。一応血縁者登録がしてあるから危害は加わらんが、警備会社の奴がすっ飛んでくるからな」


「いやいや、セキュリティ面が想像の百万倍凄かったわ!そんなことよりも、そもそもこの部屋が何なのか知りたいんだが…」


「この部屋は、主に日本刀の修理・修復の依頼をこなす場所だな。全国の博物館や記念館などからきたものを預かっている。まぁほんと一部ではあるがな。

ここでの作業を1人でこなせるようになることが直近の目標にするつもりだから、この作業場は当分お前の持ち場になる」


「え?説明の理解が追いつかねぇんだけど…そもそもそんな仕事あったこと自体初耳だし。この作業を俺が1人ですることになるってこと?」


「そう考えてるし、期待してるぜ。過去の遺作達に触れられる良い機会だからな、見て勉強して慣れてきたら直させる。

まぁ鍛治士としては面白みのねぇ仕事だがな。飾って眺めて、ハイおしまいっていう刀を直すだけだからな」


「その辺の価値観は共感できねぇけど…ちなみに他の部屋とかもこんな感じなん?」


「ん〜…他の部屋のことは気にせんでえぇ。ここでの作業が一通りできるようになったときにまた案内しようと思う。

面白みのねぇ仕事とは言ったがな、今のお前は空っぽだ。全てが良い経験になるだろうよ」


「まぁよくわかんねぇけど、ちゃっちゃと作業覚えてバンバン仕事回せるように頑張るわ。」


やれやれと言いいながら、鍛鉄はおもむろに一本の刀を手に取った。


「それと、自分が鍛治士として何を後世に残せるか、そこは常に考えて作業せぇよ…

人を殺す道具を作るために磨かれてきた技術だからな。少しの油断で社会の毒となり、立場を失うことになる。

自分の中にブレない一本の信念を持つようにせにゃならん。それが迷った時の道標になる」


工房の中に入ってからずっと鋼太はピンときていない様子だが、それに構わず鍛鉄は炉に火を入れたり、金床の具合を確かめたりしている。


「まぁ鉄を鍛えている時や研磨をしてる時になんかは、色々と余計な考えが出てくるもんだ。数をこなすようになれば、頭で考えなくても体が動いてくれるようになるからな。常に初心を忘れず臨めってことだよ」


「ガッテン承知の助。ひとまず数こなせばいいってことだろ?根性と体力はあるからよ」


「本当にわかってるのかねぇ…ひとまず今日はお前の研ぎを改めて見てから、鍛治で最も失敗が許されない作業を見せてやる」


「最も失敗が許されない?」


「そうだ。ここでの判断を間違えると…これ以降の工程全てが水の泡になっちまう。

材料を選定する『水減(みずへ)し』だ」

《鍛治の書》

一巻:入門

二巻:精神

三巻:礼節

四巻:素材

五巻:道具

六巻:鍛造

七巻:研磨

八巻以降:???


進めていくうちに齟齬があれば修正するかもしれません

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