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選ばれしオス

 謎のぬるぬるも相まって滑りは良く、女像の股ぐら部分も石ではない生きた素材が使われているようだった。


 いわゆる液体金属とか新手の超材質かは不明だけれど、オレの自慢のメス泣かせな男根を一気に押し込んでみれば、ひんやりとして生身の子宮とは明らかに異なる。


 だが、ぎゅうぎゅうと固く抱擁してくる肉の圧力、オレの侵入を拒んで阻む厚い処女膜の感触さえあった。


 そこらの穢れた人間娘よりも、はるかに純粋で高潔な貞操を備えた像とは皮肉だが。


 そんなことを考える間もなく玉袋の中身を搾り取られ、たかが扉の像ごときに発情してたまらなくなったオレは、さらに熱心に毛玉姿を振りしきって次々と種を献上する。


 そうして数分のうちに十回前後の放出を終えようとしたとき、嫉妬に駆られたのか、慌ててアンネが力ずくでオレを扉から引き離した。


「わわ」


 このオレともあろう大の毛玉が格下のエルフに押し倒され、ちょうどアンネの股ぐらがオレの股ぐらの上に重なっていたのもあり、止めようのない玉袋の分泌体液が生娘の子宮に目がけて無慈悲に噴射した。


 まあ、黒いインナースーツのおかげで子宮には直接に届かなかったが、初心な年頃のエルフ娘には生理的にくるものがあったのだろう。


 しばらくの間、アンネは薄皮の細い肢体を痙攣させて悶絶していたものの、女らしく内股で膝から崩れ落ちると、白い顔を赤らめて発情した女になっていた。


「悪かったよ」


 さすがのオレもエルフの処女に見抜きで子宮射的なんて初めてだったし、エルフ族にが本気で貞操にはうるさいことも知っていたから、とりあえず、毛深いプライドは抜きにして鼻づらを下げておこうと思ったのだ。


 このアンネの母親がまともな人格をしていれば、その場でオレを射殺し、娘に一族の名誉を守るために自害を強いているところ。


 幸い、あの母親はメグを産んだ人間娘に似て子供には一切の関心がない、ダメ親の典型のようなエルフに見える。


 そして、本当に女像の子宮がカギ穴となっていて、オレの男根が大いなる遺跡を開く性なる一対だったらしい。


 その証拠に、エルフの処女膜と同じぐらい固く閉ざされていた大遺跡の扉がごごごっとして地響きを伴いながら、おもむろに開いて道を示したのだ。


 この歴史的な前進がなければ、アンネはオレに射精されたショックから覚めずに、いつまでも放心していただろう。


 男の肉棒をカギとして扱うとは。いまの銀河やオレの故郷にはびこる子宮持ちどもの世の中と何も変わらない。


 古代文明も相当に色狂いで肉欲にまみれた母権社会だ、ということが明らかにされた瞬間であった。


「これだから男は嫌いなんだ。男を欲しがる女も嫌いだ」


「そういうお前もオレと交尾したがってたろ。母親もその気だったし」


「ボクは、あくまで研究の一環としてキミと交尾したいと思っただけさ。ちゃんと責任も取るつもりだったし、お母さんもキミの生殖器がカギになると踏んで白昼堂々、ボクたちを誘拐したんだと思うけどね」


「お母さん、お母さんって母親が大好きなんだな」


「全然。あの人は生物学的、および法律上の母親ってだけで何もしてくれなかったし、お金だけ送って誕生日も祝ってくれなかったから。ボクは嫌いだよ」


「あっそう。オレも母親は嫌いだよ」


 オレがそう言うと、何故かアンネは機嫌が良くなって一緒に先へ進んだ。


 笑ったり怒ったり男を強姦したり、全くもって女という生き物は分からない。子宮が女の心と直結しているから、そういう風になると聞いたこともある。


 そのあたりはどうでもいいが、母親という話題はオレも嫌いだった。


 母親がいるせいで子供は残酷な時代に産み落とされ、死ぬまで惨めに生かされる。最悪の場合には、その子供が子供を作って増殖し、不幸の連鎖が継続されてしまう。


 みんな母親が嫌いで当然なのだ。


「んー?」


 扉から先は薄暗い闇が広がっており、エルフさえ辿り着けなかった前人未到の領域だ。


 だから、後付けのランプや照明の類はないが、床や壁がエメラルドで出来ているみたいに透き通った緑色をして光っている。


 それが明かりとなって細長い通路は何をせずとも詳細に見渡すことができたが、さっきからアンネはあちこちを見渡しながら、糞尿か胎児をひねり出すように気張って唸り散らしていたのだ。


 さっきのオレの種汁がスーツの繊維を貫いて子宮まで浸透し、一瞬にして孕んだのかもしれないが、それにしても出産には早すぎるだろう。


 残された可能性としては便意だが。エルフの船の中に閉じ込められている間は、常に二人で同じ空間にいたオレの目の前でアンネは何度も便座に腰を下ろし、鼻歌混じりに念入りに用を足していたのを確認している。


 いったい、何がそこまでアンネの下腹部を刺激するのかと思って見れば、壁には上から下まで女の形をした像が所狭しと並んでいた。


 オレが股ぐらを突っ込んだ扉の像とは少し違う。


 いま、オレたちを挟んで見張っている女像の群れは抽象的でない精巧な作りであり、すぐにでも動いて襲いかかってきそうな雰囲気である。


 よく見れば、若い人間娘がいやらしく股をおっぴろげて誘惑するという破廉恥も極まりない興味深い造詣であったが、それが人ではないことがここからでもよく分かった。


 エルフでもないと思うけれど、頭の横に立派なツノが生えていてシッポもあり、それでいて不自然なほど巨大な乳をぶら下げている。


 はて。どこかで見たような気がすると思ったら、アンネが種明かしをしてくれた。


「これアレだね。サキュバスだよ」


「ふうん。じゃあ、ここはサキュバスの遺跡か」


「いや、間違いなく古代文明の遺跡だよ。だから、おかしいのさ」


「どこが?」


「だって、古代文明はサキュバスに滅ぼされたんだよ? なのに、これじゃサキュバスを崇め奉ってるみたいだ。自分たちを滅ぼしたバケモノをこんな風に像にして敬うなんて、普通に考えてもおかしいと思うんだけど」


「いつの時代もイカれたヤツがいたんだろ。お前の母親みたいに」


 つい、いつもの調子で皮肉を吐き捨ててしまったけれど、アンネはオレの言葉なんて聞こえてないみたいに考え込んでいた。


 てっきり、またぷうとして不機嫌になるのかと思って身構えたが、アンネは股ぐらを粘っこい白濁としたオレの種汁で濡らしたまま、真剣に悩みこむ。


 そのうち、わざとらしく手の指を鳴らしてひらめき、博士号を有したエルフにしか分からないニオイを追いかけて一目散に奥へ消えていった。


 これも何かの縁だから、オレもアンネの後を追って進むのは前提としてあったけれど、それだけではない。


 遺跡だの遺物だの考古学だの勉強のことはエルフに譲るが、この緑に輝く妖気に満ちた空間において何者かの気配を感じたのは、毛玉であるオレの種族柄なのだ。


 扉が開いたのをいいことに、こっそりエルフの特殊部隊がついてきているだけなら想定の範囲内だし、アンネを盾にして捨てれば対処のしようもある。


 オレが恐れているのは、これが別の星で肉欲に飢えた子宮持ちのバケモノの大群に襲われたときと空気の感じが似ているということ。


 しかも、ここは艶めかしいサキュバスの像が何万体も鎮座している淫魔の遺跡であり、ここにそのバケモノどもがいない方がおかしいのだ。


 戦争で銃を持った軍隊と殺し合うのには慣れきっているが、本能を剥き出しにして襲い来る動物というか、人間の女の形をしたバケモノに玉袋を喰われるというのは、いまも全身の毛がよだつほどに奇妙で恐ろしい感覚でいる。


 たとえサキュバスでなくとも、銀河は男を喰う女というバケモノでいっぱいだが。


 オレもオスとしてもれなく女に対する恐怖心を植えつけられており、同じ見た目のバケモノと戦うのには覚悟がいるけれど、それが何万体という規模であっても生き残れるかは、オレでも断言はできなかった。

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