二人の妹
子宮内の肉壁すら自在に操るグルの筋肉術によって玉袋を搾り上げらられ、しばらくオレは気を失っていたらしい。
ふと目を覚ましたときには、ベッドから遠く離れた部屋の隅で毛玉姿を体液に濡らし、オレという幼気な毛玉を凌辱して満足したグルカはぐうぐうと眠りこけていた。
やれやれ。オレに正体を明かしたからには、これからもオレを犯し続けるのだろう。
この宇宙に男の人権はない。グルカやサキュバス、オレの母親のような強い女が増えすぎて男の社会的、および生物学的な地位が著しく低下して玉袋を持って生まれることが奴隷を意味するようになってしまったのである。
これじゃバケモノが徘徊していた星と何も変わらない。男がオレひとりだけの船の中も相当に危険であり、一刻も早く逃げなければオレの生命と玉袋が危うかった。
だが、船で三日かかるところを戦闘機で行くわけにもいかないし、首都星まで自動航行する間を生き延びなければならない。
とにかく、グルカと同じ空間にいるだけで恐ろしいのもあり、オレは玉袋の中身を吸い尽くされて直立することすらままならない毛玉姿を引きずって隣の武器庫に逃げ込んだ。
そして入り口から遠い部屋の隅で丸くなり、ぶるぶると震え続けていた。
「パパ」
「にゃ・・・」
これまで山ほど女にカネを払ってきたが、オレのことをそう呼ぶのは銀河でも珍しい一匹だけだろう。
たかが六才児の人間娘。すなわち、メグごときに怯えて全身の毛を逆立たせるのも情けないかぎりだけれど、これがグルカの落とし子というのも事実であった。
「いる?」
そう言われて鼻づらだけ出してみれば、メグはまたハンバーガーのお子様セットについてくるプラスチックのジュース容器を幼い手に持っている。
要するに、業務用の添加物が山盛りになった液状の糖分を摂取して玉袋を満たし、交尾に励めとでも言いたいのだろうか。
全く憎たらしい。これがグルカの産んだ娘でなければ、月経すら迎えていない小学生の子宮を強姦してから喰い殺しているところだ。
破瓜の激痛で叫ばれて母親が乗り込んできても困るし、そうでなくとも、この船には成り行きでサキュバスとエルフが乗り合わせている。
どいつもこいつも男をモノとしか認識していないケダモノどもだ。
いま、完全に生気を失っているオレが太刀打ちできるとは到底に思えないから、ここは大人しく格下のメグに黙って従うしかなかった。
「おいしい?」
「マズいに決まってんだろ」
「ふえ・・・」
「あー、はいはい。おいしいおいしい」
子供ごときの思わせぶりな圧力に屈してオレがそう言うと、メグの頭の上の獣耳がぴょこぴょこ波打って揺れた。
この年頃の子供なら訓練されていても感情を隠しきれないものだけれど、メグの場合は半分がイヌの血で出来ているから、心と直結している獣耳やシッポで気持ちが見えてしまう。
だから、何を言わずとも分かることがあるのだった。
「お前、いつから気付いてた」
「ママのこと?」
「それ以外に何があるってんだよ」
どういうわけか、メグは母親似の褐色肌と黒髪でいる頭を小さい手で掻きながら照れているように見えた。
「ママはママだよ。でも、パパには言わない約束だったから」
「あっそ。お前は父親がまんまと騙されてるのを見て笑ってたってわけか。とんだクソガキだな、このタコ」
「だって本物のクスコちゃんは全然違う。見れば分かるよ」
「本物? 一族にクスコってヤツは本当にいるのか」
オレがそう聞くと、メグは気持ち良く首を縦に振ってみせた。
「へえ。お前の母親のことだから、てっきり死んだ姉妹に成りすまして仕事してるのかと思った。そんなことなら、オレが気付かなくても他のヤツが嗅ぎつけるだろ」
「クスコちゃんは生きてるけど、死んでるんだよ。一族から追放されて隠れて暮らしてるから戦争にも行かなかったの」
「ふうん」
オレはそれを聞いて、ストロー越しにオレンジジュースを鼻づらで吸いながら考えた。
まあ、理屈は通っている。このメグとかいう生け好かない人間娘がこれ以上、オレにウソをつかないという前提ではあるけれど、それ自体はよくある話なのだ。
オレにも妹がいる。いや、妹がいた。
人並みに学校を出て学位を取って、都会のオフィスでデスクワークをして一生を終える。そんな普通の人生を望めないオレたちのような血筋にとっては珍しいことではない。
ただ、一族から追い出されても生き延びているのは、かなり特殊な事例であろう。それを知っていて何もしないというのは、グルカが妹を本当に想っている可能性を示唆していた。




