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女たちの星

 女はろくなものではない。それは、オレが故郷で学んだ全宇宙に通ずる鉄則だった。


 そんなことは言うまでもなく明白な事実であるのに、いざとなると、どうしても女を甘やかしてしまうのが男の不幸な本能なのだ。


 マリアの口車に二度も乗せられてしまい、よりにもよって、サキュバスと交尾して銀河滅亡の受精卵を完成させてしまった。


 男と女が出会ったら交尾してしまうのが生き物だけれど、オレのような毛玉は人並み以上にそれが強い。


 目の前に適当なメスがいたら、くんくんと鼻づらの差で尻のニオイを嗅いでから毛深い身体で覆いかぶさり、そまま夜を明かすのが獣人であった。


 その不幸な性質のせいで、獣人はメスという存在そのものが弱点でいる。


 もし、相手が貞操を紙きれみたいに思っている豪の女であったら、それを逆手に取られて首を斬られたり、いいように飼い慣らされてしまう。


 いまのオレがまさにそれなのだ。


 マリアがメグの手を引いて母親気取りでクスコたちと合流する間、オレはひとり別に行動してバケモノどもを引きつけるという危険な役を押しつけられた。


 初めて見るバケモノについて確たる証拠はなかったが、サキュバスが男を目がけてやってくるのは本当らしい。


 先の交尾の後、マリアの子宮に溜まった種を自分でかき集めるというのも変な感じだったけれど、それをビニール袋いっぱいにして投げつけると、まるで木の蜜を吸うカブトムシみたいにバケモノが群がってきて舐め取ろうとする。


 来年か百年後、オレを種親にしてマリアが生み出すであろうバケモノの群れが銀河を滅ぼすのに備え、サキュバスの習性を書き記して売れば間違いなく儲かるだろう。


 あくまで動物に近いサキュバスと出会ったら、鈴を鳴らしたり、死んだふりをするだけでは玉袋を搾られる恐れがある。


 危険を確実に回避するためには、あらかじめ男の種汁を袋に入れて囮にするのが一番だというのをオレは宇宙で初めて知ったのだった。


 これもオスの本能がそう思わせるのか、なんとも感慨深い光景である。


 やっぱり、何匹か捕まえて檻に入れておけば、そこらの娼館か見世物小屋でうまい具合に客を集めて稼げると思うのだが。


 そんな小市民らしい邪な考えに鼻づらを支配されていると、突然、強烈な白色灯で照らされて目の前が真っ白に染まる。


 なんとも言えない甲高いエンジンの音が響き渡り、ずんぐりとした図体に角ばったフォルムが特徴の量産型戦闘機がオレの頭上を浮遊しながら機首下のライトで照らしていた。


「おい、遅いぞ。早くしろ」


 まるっきりオレのセリフだけれど、スピーカー越しにもクスコの声が癪に障るのは、いまにはじまったことではない。


 エルフ製のスマートでシャープな最新型と比べれば、戦争中も多用された量産型はやかましいかぎりだが。


 その騒音極まりないエンジン音と、焼けるようなライトの強さ。


 もうひとつ、クスコの女らしからぬ堅物きった口調のどれに恐れをなしたのかは不明なものの、サキュバスたちはイヌやネコ同然に鳴きながら慌てて去っていった。


 戦闘機といっても、小振りで戦闘力は低い汎用機体。本格的な空戦となったら不利は免れないが、こうして平地に着陸してオレを回収する程度は難なくこなせる。


 戦後は武装を取り外して民間用に払い下げられたぐらいだし、戦争中も専ら、小回りの利く輸送機として人や物を運んびながら、申し訳程度に爆撃するのが任務の機体であった。


「こんなもん、どこで拾ってきたんだ。オレの船に積んだ覚えはねえぞ」


「貴様が知らんのに、わたしが知っていると思うか。さしずめ、ここに連れてきた軍の連中が持ち込んだのだろう。貴様は命拾いしたな」


「お前みたいな嫉妬深い女はともかく、男にとっちゃ天国みたいな星だったのになあ」


 図星を突いたのか、クスコが腹いせに急上昇したもんで危うく牙で長い舌を噛みちぎりそうになった。これだから女は嫌いなのだ。


 だが、いくら美しい女でも生命と引き換えに慰められるのは気が進まない。


 それに、動物ではない人としては、中身も大事だとはコケの生えた言い方になるが。あのバケモノたちは空っぽの器のようで好きになれないのだ。


 あれが全部、マリアと同じぐらい色濃い中身の人外であれば、それはそれで興味深い関係になれたかもしれなかった。

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