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ワワチの臆病

 そして、オレはマリアと交尾した。


 このワケの分からない状況を整理して帰れると安堵したのかもしれないが、オレがプロの戦士であることは根っこの部分では変わっていない。


 男の玉袋を搾り上げて殺す銀河最古のバケモノに取り囲まれ、そのうち、エルフの艦隊が現れて惑星ごと一掃される期限が迫っていようと、これといって焦り恐れる理由がないのだ。


 戦争で何度も死にかけたけれど、オレは一度として失敗したことはない。


 それは、オレが毛深くて屈強な肉体を有しており、訓練された戦士だというのも当然ながら考慮されるべきであるが、それ以上に死という概念に対して鈍感であった。


 そりゃあ、オレも生まれたてのころは、肉欲と同じぐらい好奇心の旺盛な子供だったのであろう。それを徹底的に痛めつけて感情を取り除いてしまったのがオレの母親である。


 オレは何かしら諦めて死を恐れなくなり、自分ひとりだけになっても留まって戦い続けることで結果として任務を果たしてきた。


 しかし、それでも割り切れないのが生き物というものだ。


 オレがどこか冷めきっていて変人だというのは、自分でもよく分かっている。これまで取り返しようのないものばかり失った。


 でも、それがオレなのだ。オレはこういう毛玉である。


 それが嫌だというなら誰かさんみたいにオレの頭を撃ち抜けばいいが、オレが死にたくても死ねないのは、この毛玉姿に染みついた母親譲りの戦闘本能と戦闘術もあった。


 鼻づらが危険を感じると、もはや反射的に相手を張り倒してノド元に噛みついてしまう。それがメスだった日には、たまらず服を剥ぎ取って交尾してしまうのだ。


 いま、こうして六才児のメグの痛い視線もはばからず黒づくめの人間娘、もとい血も涙もないバケモノであるマリアと熱心に生殖しているわけだけれど、これもひとつの戦いと言えなくもない。


 サキュバスがオスを誘惑して交尾に陥らせることは、つまり食事と同じ原理である。


 大口を開けた巨大なワニに喰われるのとは見た目こそ違うが、この宇宙の食物連鎖に則って喰われているのには変わらない。


 ちなみに、これには科学的観点からの戦術的な要因もあるのだ。


 ここにはいない連中に主導権があるのをいいことに、クスコとアンネは種族の垣根を超えて結託し、自分たちが死ぬ危険を抑えて楽をするために船を移動させた。


 目前まで迫っていたオレたちは、相変わらずバケモノがうろつく外の野原や森を走っていかなければならない。


 サキュバスは銀河を破滅させるほど繁殖本能が強すぎる生命体であり、おそらくは、この危険な惑星で最後のオスとなったオレの玉袋に詰まった種のニオイを嗅ぎつけてくる。


 だから、いまのうちに一滴残らず搾り出しておけば、バケモノを避けて見つからずに船まで辿り着けるというのがマリアの結論だった。


 初めて船で会ったときも交尾したし、シャーベットの街でばったり出くわしたときも交尾したがっていたから、これも完全にマリアの気分としか思えないのだが。


 サキュバスが存在しなければ、オレと同じ獣人が代わりに銀河を滅ぼしたほどに肉欲だけは互角でいる。


 目の前で父親が母親ではないバケモノと姦通するのを見かねたメグが硬い鉄の棒で一生懸命に殴ってくるが、その程度の痛みを感じないほどに研ぎ澄まされた本能と毛玉姿でマリアをねじ伏せ、オレは一時間とかけずに玉袋の残弾を使い果たした。


「お前もサキュバスなんだろ。これでオレによく似たバケモノが山ほど生まれたら、オレのせいで銀河が滅びるようなもんだな」


「そうねえ。いまなら、まだ止められるけど」


 マリアはまた人ではない顔で不気味に笑っていたが、オレにその度胸があれば、そこのうっとおしい人間娘のメグも生まれていなかった。

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