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要求のない要求

 しかし、待てども待てどもマリアは要求を言わなかった。


 それどころか、街を破壊してメグを拉致するなど数々の敵対行為に及んでおきながら、この広い宇宙を割拠する銀河の勢力に対して何の期待もしていない。それ故に、いかなる要求も特にないとマリアは無理に言葉をひねり出して答えたのだ。


 いったい全体、どういうことなのだろう。全くもってワケが分からない。


 オレにサキュバスという存在を伝えたアンネがでたらめを吹き込んだのでもなければ、マリアは繁殖のために男の玉袋を必要とし、それが結果として銀河を破滅させる。


 同時に、サキュバスはこれといった動機があるわけでもなく、明確な戦争意志をもって襲い来るのでもない。


 あくまでサキュバスというのは、あまりに魅力的な人の形をした動物であり、肉欲と繁殖本能に突き動かされて男を喰らうだけの宇宙生物なのだった。


「あり得ない。全くバカげているぞ」


 通信が切れた後、クスコはそう言ってオレが勧めたコーラも飲まずに、ぷんすかと怒り心頭であたりをぐるぐると歩き回っていた。


 オレにとってはどうでもいいが、同じ血を引く一族の末裔にして偉大な姉が産み落とした娘のメグを見捨てるなど、そこの真面目なクスコにはできないのだ。


 なんしも無事に取り戻す方法を凡庸な頭脳で考え込んでいるのだろうが、良くも悪くも人並みのクスコに名案など浮かぶはずもない。


 まあ、諸々の理由から、マリアたちが同じ星に存在しているのは確かなのだが。しまいには草の根を分けて自分で探すと言いかねないし、そうなると当然、オレも付き合わされて毛玉姿で汗をかくことになってしまう。


 そんなときは、痩せた身体をろくに動かずに、朝から晩まで強制労働の目に遭った獣人よりも良い仕事をするエルフの科学の出番だった。


「人間と毛玉にしては、なかなか頭を働かせたと見える。まー、その端末の初期モデルを発明したのは他でもないボクたちエルフだから。当然といえば当然さ」


 そう言ってアンネは無い胸を誇らしげに張っていたが、そういえば、エルフは人間とも犬猿であることをオレは忘れていた。

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