表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/401

第80話 嘘

「違います!」


 俺が否定しようとした時さらに強い口調の否定が飛んできた。


 あやねるだった。


「いのすけと光人君は断じて恋人同士ではありません。それよりも、いのすけ!何その気になっちゃってんの!憧れのJULIさん目の前にしてテンパってんのは分からなくもないけど、さっきもJULIさんの言葉に私と光人君、佐藤君は「えー」って声上げたのに、一人で悪い気がしないみたいな表情してたでしょう!」


 あちゃー。

 俺はあやねるの剣幕に頭を抱えてしまった。


 そんなあやねるの勢いにさすがのJULIさんも一歩後ろに引いてる。


 景樹も最初はあやねるの口調に度肝を抜かれたようだが、すぐにこの現状を楽しむことにしたようだ。

 というのも、お姉さんが淹れてくれた紅茶を啜り始めている。


「いや、あの、ね。確か、宍倉さん、だけ?でも、でもね…。さっきのお姫様抱っこもそうなんだけど、西舟野駅前で、二人でいたし、なんか悪そうな二人組から伊乃莉ちゃんをね、白石君、だよね?彼が庇ってるのを見る限りは、どう見ても恋人…。」


 睨まれた樹里さんの声がか細くなっていく。


「何度でも言います。いのすけと白石光人くんは恋人ではありません。さっきのお姫様抱っこは単なる事故です。いのすけが卒倒したのを光人くんが助けただけです!それよりも佐藤君のお姉さん。さっき聞き捨てならないことを言いましたよね。いのすけと光人君が西舟野駅で二人でいたと。」


「ああ、うん、そうだよ。二人がチンピラみたいなのに絡まれて、その彼が伊乃莉ちゃんを助けていた。」


「本当にここの駅、西舟野ですね。津田川ではなく。」


「それはそうよ。この近くのファッション事情を見に行くのに景樹をお供にしていったときの話だから。」


 しまった!

 こんなに早く嘘がバレるとは!


 景樹が面白そうに事の成り行きを見ていたが、今のあやねるの言葉に、さすがに勘のいい景樹が気付いたようだ。

 が、なんてこの場を誤魔化そうか考えているようで、出かけた言葉を飲み込むのが分かった。


 あやねるが座っている俺を見下ろす形で顔を向ける。

 目の白い部分が増えているのは気のせいだろうか?


 蛇にに睨まれた蛙状態。

 体が硬直してる。


「光人くん、この件の付いて、後程いのすけと一緒に事情を聴きます。覚悟してください。いのすけも!」


「は、はい!」


 伊乃莉はかろうじて返事を返したが、俺はあやねるの瞳から目を離すことが出来ず、返事を返すこともできなかった。

 何とかその瞳から精神力を振り絞って引きはがし、1回頷くのが精一杯だった。


「今回の目的は明日のための勉強会です。ちゃっちゃと終わらせましょう。」


 そう言って俺の横に座り、左手を俺の右手に絡めてきた。

 明らかに俺をあやねるの所有物であることの無言の訴えである。


 この雰囲気にいたたまれなくなったのがJULIこと、景樹の姉、佐藤樹里さんだった。


 テーブルに置いた自分のティーカップを持って、奥に向かう。


「あ、あのさ、鈴木さん。終わったら一声かけてね。事務所、で待ってる。」


 そう一言残してい姿を消した。


 さっきまでの陽キャバリバリの雰囲気は消し飛んでしまっていた。


「なんかいろいろ、姉貴が、ごめん。それじゃあ、始めようか?」


 俺の右手は完全にあやねるの左手で拘束されていた。

 いたんだが、そしてこの後のあやねるの尋問に恐怖すら覚えているのも事実なんだが、拘束されている左手にあたるあやねるの胸の膨らみに少しドキドキしている俺もいた。


(この発情猿が)


 親父の罵りも聞こえないほど、幸せに感じてしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ