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第7話 放送委員

 全員が教科書を自分のロッカーにしまい、席に着いた。


「全員教科書が行き渡ったようだな。明日は明後日からの学力テストについての説明と、各教科の先生が1限ごとに来て説明することになっている。もう知ってるとは思うが、新入生の学力テストの点数は参考程度だ。ただし、日照大付属高校26校の中での席次が出るから、真面目に受けるように。特に欠席して不参加になると最悪日照大への推薦はなくなると思ってくれ。この後の時間で、このクラスの委員や係を決めることになっているから、そのつもりで頼む。」


 ちょうどこの時間の終わりを知らせるチャイムが鳴った。


「休憩の後に委員と係を決めるけど、それが終わり次第で今日は終わり。早く帰りたかったらさっさと済ませような。」


 岡崎先生はそう言って一旦教室から出て行った。


 前の席のあやねるが振り向いた。

 少しもじもじした感じ。単純に可愛い。


「あのね、光人君。私、生徒会に入ったの。」


「そうか、やっぱり入ったんだね。大変そうだけど、柊先輩はきっとよくしてくれると思うよ。俺もまだあの人のことは良く知らないけど…。」


「うん、いい先輩だよ。ぱっと見がああだから、ちょっと気後れしちゃうけど。面倒見はいいって岡林先輩も言ってた。そういう岡林先輩もいい人だったよ。」


 やけに先輩たちを持ち上げるな。

 でも、俺が生徒会に入れない理由は言ってあったよな、確か。


(それでも光人と一緒にやりたいんだろう、彩ちゃんは。でも、なんか雰囲気が違う気もするな)


「それでね、岡林先輩から言われたんだけど、1年の時はできれば学級委員になって欲しいんだって。2年以降は委員と生徒会役員が別の方がいいけど、1年で学校のことがよくわからないときに、クラスで生徒会関連の委員が多いとまとまらなくなる可能性が高いらしいの。」


 なんとなく言いたいことは解るけど、まさか…。


「私、さすがに委員長はきついから副委員長に立候補するつもりなんだけど、光人君、委員長やらないかなって思って…。」


 ああ、やっぱりそう来ますか。


(やってやればいいんじゃないか、光人。彩ちゃんを支えたいんだろう?)


(支えたいとは思うけど、このクラスをまとめらえる気がしない。というか、ついこの間まで引きこもりに近いような奴ができることじゃない。今後のことを考えると、無理)


(さて、そんな光人君が彩ちゃんのお願い攻撃に耐えられるかな?)


「生徒会の時にも言ったけど、今後バイトをしないといけないかもしれないんで、さすがに委員長は…。」


「うん、光人君の家の事情は知ってるつもり。学級委員の仕事は極力私がやるから、さ。ダメかな?」


 上目遣いのその目はずるいよ、あやねる。


「柊先輩からも、岡林先輩からもよかったら誘ってみてって言われてるの。」


 柊先輩から言われたか。

 なら、なおさらだめだな。

 あの先輩が悪い人ではないと思うけど、今は距離を開けた方がいい気がする。


「柊先輩は悪い人じゃないと思う。でも、今は少し距離を取りたい。」


 俺の言葉に、はっとした表情をあやねるがした。

 そして少し考えるような感じで顔を伏せる。

 そして、少し晴れ晴れとした顔で俺を見た。


「うん、そうだね。柊先輩は素敵な人だけど、光人君も静海ちゃんもいろいろ思うことはあるもんね。ごめんね、変な事言って。」


「いや、こっちも悪い。ただ、柊先輩に対してはあやねるの言う通り、俺だけでなく静海もお袋もまだ感情の整理がついていないから、前みたいにグイグイ来られても、ちょっと困るんだよね。でも、なんかあればあやねるのことは守っていきたいと思ってる。真理さんからも頼まれてるし。」


「ちょ、ちょっと、光人君!そういうこと言われると恥ずかしいよ。しかも、ここ教室でみんないるんだよ!」


 あやねるが顔を真っ赤にして顔を伏せた。


 後ろから肩を指でつつく奴がいた。


「白石さ、あんまそういうことを人前でやってんじゃねえよ。」


 須藤に睨まれた。


 確かに、周りから突き刺さる視線が…。


(「女泣かせのクズ野郎」健在ということだな、光人。なんでそんな言葉がさらっと出てくんだか…。いつから私の息子はこんな奴に育ってしまったんだろう)


(別におかしなことは言ったないだろう。本心だし。まあ、思い返すと少し恥ずかしいことを言ってしまったなとは思う)


 チャイムが鳴った。

 岡崎先生が戻ってくる。


「さあ、席に着け。さっき言ったけど委員決めていくぞ。」


 そう言って生徒の顔を見渡す。


 と、そこで手を上げる生徒が一人。

 自分の名前を嫌がる明神尊命君。


「先生、僕、この前放送委員会に入ったのでそのままやらせてもらっていいですか。というかほかの委員やれないんで。」


 どうやらすでに委員会を決めていたのはあやねるだけではなかった。


 と、思っているとまた一人手を上げる。女子の木下翼さん。


「あっ、私も放送委員会で行きたいです。」


「えっと、君も放送委員会入ったの?」


 明神が不思議そうに木下さんを見た。


「ううん、そうじゃないんだけど…。演劇部に入部して、そこで音響関係したいって言ったら、ぜひ放送委員会に入って欲しいて先輩に言われて…。」


「なんで?」


「演劇で音響の使用に放送委員会の許可が必要なことが多いらしいの。それで放送委員会と1年の時だけでも掛け持ちしてくれると都合がいいって言われたんだ、け、ど…。あれ、これって言っちゃいけなかったかも…。」


 だんだん声が小さくなる木下さん。

 あからさまな言い分に、ちょっと面白い。


「ああ、いい、いい。放送委員の枠は2名だから。この二人でいいか。」


 岡崎先生がそう言ってクラスを見渡す。

 不平を言う奴はいない。

 そして、他に立候補者もいなかった。


「本当は学級委員を先に決めようと思ったんだが、まあいいか。それじゃ、放送委員はいいとして、学級委員決めるぞ。」


 緊張が走った。

 気がした。


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