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第60話 帰り道 宍倉彩音

 さっきからカホ先輩の話にいのすけが凄く興味津々。

 これって佐藤君の誘いに乗るってことなのかな。


 私は横で聞いていて、カホ先輩の話に十分興味あったけど、いのすけの興味の持ちようとはかなり温度差を感じていた。


 ただ、カホ先輩の人脈って広いんだなあ~、なんて思ってた。

 いのすけと知り合いってことで、いのすけの人脈は広いからそれなりに知り合うことはこれからあるかもしれないけど、いまだ芸能人とか知り合いはいなかった。

 佐藤君の家のことを考えれば、芸能人との知り合いも出来るのかもしれないけど、別にそれほど興味ないし。


 そういえばカホ先輩はクォーターなんだっけ。

 っていうことは国際的にも知り合いがいるんだよね。


 さすがに、ここにいる二人のことを思うと、逃げ出したくなってきたな。


「そういう訳で、一応高校の公認で私と瑠衣はバイトで読モをやってるって感じ。瑠衣は卒業後はその道に行くつもりで芸能事務所にも所属してる。私も椎名さんの勧めでその事務所にお世話にはなっているけど、本当にバイト感覚ってやつだから…、バイトだけど。」


「その事務所はモデル専門なんですか?」


 やっぱりいのすけはかなり今日の佐藤君の誘いを意識してるな。


「どうなんだろう。それは瑠衣の方が詳しいと思うな。私の撮影とかの依頼は椎名さんから直接来て、その事務所に報告するって流れ。瑠衣は事務所を通してると思う。その事務所でモデルのための訓練受けてるって話だし。」


「そうか、やっぱり本格的なモデルを目指そうとすると訓練っているんですね。」


「私もこういうと笑っちゃうんだけど、表現者としてモデルを目指すとなると大変みたい。瑠衣の場合、基礎体力はあるけど、筋肉がつき過ぎたらデザイナーが考えるような服が着れなくなるしね。ランウェイを歩くためのウォーキングも毎日練習してるよ。ファッション誌の撮影くらいであればそういう訓練はなくても大丈夫みたいだけどね。」


 ああ、それが世界を取るってことか。

 一流のファッションモデルを目指すってことか。

 パリ・コレとか名前しか知らない世界だけど…。

 いのすけのおかげで多少はファッションに興味は出てきたけど、まっだそれほど深くは知らないし。


 でも、いのすけのフルメイクで最新のファッションを身につけたら凄いんだろうな。

 男性がほっとかないんじゃないかな…。


 と、考えて、いのすけが光人君にくっついていた昨日の風景が、急に目の前に浮かんだ。

 思わず二人の話が続いてる中で、顔を伏せてしまった。


「あやねる!急にどうしたの?」


 いのすけが顔を伏せた私に声を掛けてきた。


 結局あの行動に関して、いのすけには問いただしていない。

 あの行動の後、道路の対岸からもわかるぐらいにいのすけが怒って家に入って行ったのがわかっているから。

 おそらく、いのすけの行動に対して光人君はあり得ないことを言ったのは間違いなかった。


「あ、うん、大丈夫。今日の光人君と須藤君の会話を思い出しちゃっただけ。」


「ああ、あれ?18禁がどうとかいう…。」


「え、なに、なに、その話。彩ちゃん、伊乃莉さん、詳しく教えて。凄い気になる!」


 あ、カホ先輩のテンションが異常に上がった。

 あんな天使みたいに見えて、凄い喰いつき方。

 そりゃあ、年頃の娘さんだもんね。

 私たち同様、興味ありますよね。


「た、大したこと、ないですよ、先輩。そんな綺麗な顔した人の耳を汚すような、そんなこといえません!」


「そんな酷いこと、光人君は彩ちゃんにしたってこと!えっ、なにされたの、彩ちゃん。恥ずかしがらずにお姉さんに話してみなさい。」


 いつからカホ先輩は私のお姉さんになんですか?


 これは、どう判断すればいいのだろう。

 私が光人君にエッチなことをされた話に変わってる。

 そうなってたら、やっぱり私は光人君を嫌うのだろうか?

 それとも…。


「カホ先輩、興奮しすぎ!落ち着いて!ドウドウ。」


「伊乃莉さん、私は馬ではありません。」


 そう言って一旦深呼吸するカホ先輩。

 その上下する胸に半分羨ましげね、憎々し気な視線を向けるいのすけ。

 やっぱり、いのすけは自分の胸の大きさにコンプレックスあるんだな。

 たまに、あんな感じの視線、私の胸に向けてるもんな。

 先輩のお胸は私ほどじゃないけど、そこそこ制服を押し上げる程度には存在を主張している。


「確かに光人君と彩ちゃんにそういうことがあったのかと思って、私らしくない行動をとってしまいましたね。ごめんなさい。」


 少し冷静になったようで、カホ先輩が謝ってきた。

 でも、私もいのすけもそんなこと一言も言ってないんですが…。

 18禁というワードにそんなに喰いつくなんて。


「でも、何があったんですか光人君と彩ちゃんの間に。」


「いえ、特別なことは何も…。」


 私はそう答えながら、いのすけが光人君の頬に顔を接近させた光景が蘇る。


 そう、私と光人君の間には何も起こっていない。

 でもいのすけとの間には…。


「須藤君という光人君の友人が文芸部に入ったんですが。」


「そういえば、さっきもその名前聞いた気がする。」


「ええ、先程の名前の男子なんですが。私が生徒会室に行ってるときに、どうも光人君とその須藤君がこそこそしてたみたいなんです。さらにさっきいた佐藤君も絡んでるようなんですけど。」


「その男子たちが何かしてたってこと?」


 カホ先輩がそのダークブラウンの瞳を私に向けて、何のことかわからなそうに言ってきた。

 こっちも彼らが実際何をしていたか知らないので、明確には答えられない。

 でも、問い詰めた時の答えは聞いている。


「須藤君は文芸部に入るくらいなんで、小説を書いているんですけど、その表現が…。」


 ちょっと躊躇う。


「18禁だと。」


 あっさりとカホ先輩が私の言葉の後を補った。


「私もまだ18になっていないのに、高1で18禁の文章を書くって…。是非見せてもらいたいものね。」


 やっぱりカホ先輩は、その手のことに興味津々だった。


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