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第53話 生徒総会での初期の役割

 辺見先輩と外山先輩のカップルは基本的に私に付き合ってる恋人同士ということを伝えに来たのだろう。

 おそらく辺見先輩が外山先輩を安心させるために。

 そのまま連れ立って、生徒会室を出て行った。


「ごめんね、説明が中途半端になっちゃって。大体の初期の流れは説明したんだけど、唯一違うのが生徒総会なの。」


 カップルの乱入で中断していた書記の仕事について、柊先輩が説明を再開した。


「他のもろもろの会議は、黒板なり、ホワイトボードがあって板書役と記録役に別れるんだけど、総会にはそう言った板書できるとこってないのね。」


「昔は可動式のホワイトボードを持って行ったりしたらしいけど、とてもじゃないけど広報の生徒には見えないんだよね。だから、今は大型プロジェクターとホワイトスクリーンを使って、議長席の後ろにいろいろな情報を提示するようになったんだ。」


 なんとなくその図は想像できた。


 中学の時も、一応生徒総会というものがあった。

 基本は予算の使われ方と、次の年の予算の承認だったと思う。

 生徒総会のタイムスケジュールを書いたホワイトボードが置いてあったっけ。


「それで、今はそのスクリーンに決算書なんかの全員に渡してる資料を移して、会長とか、広報、会計なんかが説明するのね。問題がなければいいんだけど、そこで何らかの間違いや、説明が必要になるときがまれにあるんだよ。」


 御園先輩が補足する。


「当然数字の間違いが一番多いんだけど、作った資料の間違いが、総会前に分かった時は正誤表を作るんだけど、それでも間に合わないと、プロジェクターに連結してるノーパソに入れて当日にその部分をパワーポイントなんかで入れてったりするの。そのノーパソの操作は私たち書記の仕事だったりする。」


 ああ、驚きが顔に出たな、これ。私の表情に明らかにびっくりしてるよ、二人とも。


「ちなみに宍倉さんはエクセルやパワーポイントって、使える?」


「使えるかと言われれば、中学の特別授業レベルです。家で使うことは無いんで。」


「まあ、そうだよね。会計はエクセル使えないととんでもないことになるから、使ってるけど。書記はいいとこワードぐらいだからな。一応、総会までにパワーポイントの使い方は教えるね。」


 そう言って、硬い笑みを柊先輩が私に向けた。

 隣の御園先輩の表情からも、あまりその方面が得意ではないようだ。


「と言っても、普通ならスライドショーだから、そんなには問題ないんだけど…。」


「問題がある場合があるわけですね。」


 まあ、その話のふりであることは、さすがの私でもわかった。


「まず、総会前に資料を配って全生徒に配るの。この時に、総会で取り扱ってほしい議題も募集するんだけど…。」


「そんなの募集して、集まるんですか?」


「それは事例があるよ。岡崎先生のクラスで見せたでしょう。今の彼女の向井先輩が生徒会長だった時の話。まあでも、あれは募集事案でなくて会長主導の事案だったから、ちょっと違うね。」


 柊先輩の話で、恋愛関係の校則が変更され、風紀委員が生活委員になったって話か。


「募集すればクズのような議案は集まるんだけど、大抵は門前払い。重要だと思われる事案は生徒会役員と顧問の先生との協議で総会にかかるときもある。この時なんかは、その総会までに資料を作らないとならないから結構大変。体育祭なんかもあったりするからね。でも、先に解ってれば、話の持って行きようもあるから、原稿も用意できるの。」


「そうなんだよね。問題は緊急動議ってやつが厄介。」


 御園先輩の顔が少し歪む。

 何だろう、緊急動議って。


「まあ、わかんないよね、この単語だけだと。」


「何のことやらさっぱり。」


「総会の議案が一通り終わると、最後に議長がこういうの。「ほかにこの場で話し合うような議案はありますか」って。」


「普通、生徒たちの大半はこの総会は退屈なものだから早く終わってほしいと思ってる。だから滅多に出ない。」


「それでも、挙手をして議案をかけてほしいって人がたまにあるんだよね。」


 柊先輩の声に、御園先輩の声が返ってくる。


「ろくな事案じゃないんだけど、そうするとその議案の認可を出すかどうかってことになる。」


「認可、ですか。」


 全く二人の先輩の言うことがわからないんですけど。


「単純な話。その議案を総会で議論するに足るものかを民主的に決めること。早い話が、多数決ね。」


「大抵はくだらない事案だし、生徒たちは帰りたいから、多数決してもほとんどが否決。でも、この緊急動議が発議されると、パワーポイントにその内容を書いて投影しないといけないんだよ。」


「去年あったのよ、くだらない提案。教室の空調を生徒に任せろって。」


 柊先輩が疲れた顔を見せた。


「えっ、それいいんじゃないですか?あれって担任の先生の権限でしょう?」


「それ違うよ。学年主任、っていうかフロアごとにしか設定できないから、そこのフロアの安全担当の教員が決めるの。でもね、生徒に託すってことは、そのフロア全員の意見が一つならいいけど、大抵ばらばら。先生が勝手に決めるのは確かに横暴なんだけど、それくらいしなきゃ、実質空調は動かなくなるの。それをあらかたの生徒は知っていてね。簡単に否決になった。まだ賛成に挙手した人が少なかったから、数える必要なくて助かったけど。」


「それが多いとどうやって、数えるんですか?」


「各クラスの学級委員長の仕事になるよ。」


 御園先輩が私の質問にそう答えた。

 聞いた瞬間に、あっ、それやだ、と思った。


「で、集計して、エクセルで表にして、賛否の数をスクリーンに投影。つまり、緊急動議が発議さっれると、その簡単な内容をノーパソで打って、投影。それについて議論すべきかってことを多数決で決める。数がわかりにくい時は委員長が数えて集計。もし賛成になれば延長戦の始まりってことになる。その間の板書と計算は書記の役割。どう、面倒くさいでしょう。」


 柊先輩が嫌な笑いをしながら私を見た。


「確かに面倒くさいですね、それ。結局去年はどうなったんですか?」


「ああ、さっきもう言った通り、賛成者がいなくて発議自体を否決で終わったから、まだしもだったよ。」


 やっぱり、生徒会役員って面倒くさいんだな。


 私がこの役員に加わろうと思ったのは、柊先輩がいるから。

 憧れって言った自己紹介は間違いないけど、本当は光人君との仲を監視したいから。

 今は光人君は柊先輩を警戒してるけど、今後どうなるかは正直解らない。


「総会はさっさと終わらせたい生徒がほとんどであれば、緊急動議自体に意味ない気がしてきますね。」


「結果としてはそういうことが多いんだけど。必ずしもいらないわけではないのよ、宍倉さん。この緊急動議の制定自体総会で決まったことだし。」


「私たちは詳しくは知らないけど、この総会で先生を辞めさせたこともあるらしいから。」


「えっ!」


 何ですか、その話。


「お~い、書記の人たち!そろそろいいだろう。結構時間たってるぞ!」


 副会長の大月先輩がそう声を掛けてきた。


「確かに、ちょっと熱が入っちゃったね。この話はまた機会を見てってことで。私も勉強しなきゃならないし。」


 御園先輩が我に返ってそう言った。

 そういえば、学力テストでいい成績狙ってるって言ってたもんな。


「柊もまだ宍倉さんと話したいなら、一緒に帰ったらどうだ。同じ方向だろう。」


 斎藤会長がそう言ってくれた。

 私もできればもう少し柊い先輩の本心を確かめておきたい。


「そうですね。それじゃあ、途中まで一緒に帰ろうか、宍倉さん。」


「ええ、お願いします。」


 さっき辺見先輩が言ってた通り、笹木さんも永倉君もすでに生徒会室にはいなかった。

 斎藤会長、大月副会長と書記の私達だけだ。


「じゃあ、会長、大月君、先帰るね。」


「お先に失礼します。」


 私と柊先輩は二人で生徒会室を後にした。


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