第50話 生徒会役員分担
顔合わせの自己紹介でやらかしてしまった私は、その後はただただ会議の進行を聞いて、手元の手帳にメモに終始した。
意見を求められることもあったけど、笹木さんや永倉君のように内部進学者でない私には、その流れ自身もよく呑み込めていない。
だから、意見なんか言えるわけもなかった。
それに比べると、やっぱり笹木さんは生徒会長を目指すだけあって、結構質問と意見を言っていた。
「ですと、中間テストの最中に生徒総会の準備をするという事ですか?」
「このスケジュールみると、そう思うよね。でもね、まあ、大きな議題でも入らなければ、基本は予算に終始するんだよ。つまり、各部活、委員会の去年度の収支の決算と、今年の既に2月に決まっている予算の承認がメイン。この時期の前に回収して、試験後にこちらがまとめるってパターンだからね、まず勉強には影響は出ないよ。」
懇切丁寧に辺見先輩が説明する。
年間行事どころか、定期試験の日程なんてのも頭に入っていない私には、そんなことも解らない。
でも、首席を取っている笹木さんなら当然頭に入っているのだろう。
でも、そんな人が何で生徒会みたいな面倒なとこに入ろうなんて思ったのかな?
「年間行事については全てを頭に入れる必要は今の所ないから大丈夫だよ、宍倉さん。」
かなり困った顔をしていたのだろう。
心配してくれた柊先輩にそう言われてしまった。
この発言に、明らかに嫌そうな表情を笹木さんがする横で、永倉君が微笑んでいた。
「現時点では、その総会と選挙がメイン。その間に体育祭があるけど、それは本当にサポートに回る程度だから。君たち1年生にはまず関係ないと思ってくれていいよ。あとは月1回の評議会くらいだけど、この議長は評議会メンバーで決めることにはなっているから。」
「もっとも、目星はつけてあって、内々に議長、副議長共に候補者は決まってる。第1回の評議会が親睦旅行の後であるから、そのつもりでお願いするよ。」
2年生以上は既に1年を通じて経験してるからいいけど、内部進学者もある程度は解ってるかもしれないけど…、私はまだこの高校に入ってまだ4日目だ。
本当にここに私はいていいのかな?
「不安があるかい、宍倉さん?」
辺見先輩から優しい笑顔で聞かれると、ポッとする女子も多いんだろうなあ。
でも、私はまだ、こういう風にされると警戒心がもたげてきちゃう。
「ああ、宍倉さん、その辺見の笑顔に警戒しなくても大丈夫だよ。」
岡林先輩から、そう言われてしまった。
本当に私は顔に気持ちが出やすいらしい。
「辺見には、とっても愛する女子がいるから、人を誑かすことって、ないからさ。」
えっ、今何と?
「先輩~、勘弁してくださいよ!そういう事言うと、フリーズしちゃうんだから!」
その言葉に、彼女がこの生徒会室にいるんだなあ~、と思ってたら、分かりやすく真っ赤になってる少しぽっちゃりした先輩が下を向いていた。
耳が真っ赤。
外山凛梨子先輩。
二人はそういう関係なんだ。
これもレジェンド岡崎先生の彼女、元生徒会会長の向井さんのお陰ってことなんだろうな。
「まあ、凛梨子はこんなに可愛いんで、他の男にとられたくないので告白しました。相思相愛なので、決して二人の中を裂こうなどとは考えないように。新入生の諸君!そこのところは重々よろしくお願いします。」
何と言っていいかわからずに、私は思いっきり首を縦に振った。
その横で永倉君も私と同じように何度も首を振っている。
さすがに笹木さんもこの先輩の告白に何らかのリアクションがあるかと思ったけど、ただ首を一度だけ傾けただけで、あとは我関せずという感じだった。
「辺見のお惚気はそのぐらいにしておいて、1年生の希望はいい感じに割れてるようだから、そのまま希望の担当の先輩について、やるべきことと、補佐できることの説明を受けてくれ。広報の辺見に笹木さん、会計の八神に永倉君、で書記の柊さんに宍倉さんということで、面倒見てやってほしい。以上で、役員の顔合わせと簡単なスケジュールについての説明を終わりにしたい。後、必要があればここの分担で集まって欲しい。」
斎藤会長の言葉にとりあえず、全体の会議は終わったようだ。
「宍倉さん、このあと少しだけ時間ある?」
柊先輩と、黒髪が方より少し長い痩せて目つきが少しきつめのみその先輩が私の座っている席まで来て、柊先輩が声を掛けてきた。
この二人ということは書記の仕事についてなのだろうと察しがついた。
「はい、大丈夫です、そんなに長くならなければ。」
「じゃあ、少し書記の仕事と、今後の仕事の流れ、特に選挙までの話しようか。扇ちゃんも大丈夫だよね?」
「そんなに込み入った話ではないと思うので大丈夫です。ただ、私は先輩たちと違って、学力テストに力を入れないといけないので、簡潔にお願いします。」