第49話 生徒会役員顔合わせ
「何か隠してそうだよね、あいつら。」
「えっ、誰のこと?」
いのすけが学食を出たところで、急にそんなことを言い出した。
あいつらって複数形使ってるから、おそらく光人君と須藤君だということはすぐに見当がついたんだけど。
「あの少し大人しい眼鏡の子、須藤君だっけ?目がかなり泳いでるんだよね。みんながみんなそういう訳ではないんだけど、彼はそういう癖がある雰囲気じゃないし…。」
「なんかエッチな作品みたいなこと、言ってたけど…。」
「ふーん。普通なら同世代の女子に言う話じゃないなあ。」
考え込む感じのいのすけが、一体何を考えているんだろう。
もう少しの所で私は生徒会室に、いのすけは友達とちょっと遊びに行くと言っていた。
2時間くらいを目途に待ち合わせて家に帰る予定だけど、もしかしたらいのすけの友達と合流して遊ぶってこともあるかもしれない。
でも、今のいのすけの言葉。
引っ掛かるな。
「じゃあ、生徒会の仕事終わったらLIGNE送ってよ。その時のいる場所、送るから。」
「うん、わかった。いつもごめんね、いのすけ。」
「そう思うなら、そのいのすけ呼び、考慮してよ。」
「これは二人の特別感出すためでしょう。いのすけ、あやねる、いいじゃん、これで。」
「あ、そう。もう言ってもしょうもないと思ってるけど…。じゃあ、またね。」
「うん、また。」
いのすけが昇降口に向かうのを見届け、私はそのまま生徒会室に向かう。
今日は、生徒会役員の全メンバーがいた。
斎藤総司会長、大月理仁副会長、書記の柊夏帆先輩と御園扇先輩、会計の八神蒼空先輩と外山凛梨子先輩、庶務の岡林真理子先輩、次期会長候補で広報の辺見章介。
あとは今年の新入生である私たち3人。
1年で首席、新入生代表を務めた笹木莉奈さん、内部進学性の永倉蒼汰君と、私宍倉彩音。
もしかしたらもう一人二人新入生が入ってくるかもしれないという事は聞いているけど、今はこの11名だ。
今回は学力テストの前でもあるんだけど、学力テストが終わるとすぐに仕事が待っているらしい。
6月に生徒会役員の選挙を控えているのだが、その選挙の準備が5月の中間テスト終了後から始まる。
でも、その前に今年度の生徒会が関わる行事全般のスケジュールと、それぞれの主催とのすり合わせなんかがあって、さらに新役員にそれらのことを引き継いでいかなければならないのだそうだ。
という訳で、今回はとりあえずの顔合わせと、新入生の私たち3人の役割を振ることが今回の目的。
既に事前に言われたように、クラスの学級委員になるように言われて、私は一応副委員長に決まっている。
光人君を委員長に出来なかったのは悔しいけれど。
「学力テスト前に集まってもらって悪かったな。大したことではないんだが、今後の簡単なスケジュールの調整と、新入生の紹介も兼ねてるんで、すぐに終わらせるつもりはあるんだけれども。今更だが、一応自己紹介させてもらえば、3-Aの斎藤総司で、生徒会長だ。よろしく。」
そう言うと、横に座っていた眼鏡をかけた大月先輩も座りながら顔をあげて、自己紹介を始めた。
「3-Fの大月理仁です。副会長です。よろしく。」
「3-Bの書記の柊夏帆です。」
「3-C の会計、八神蒼空。」
「もう少し愛想を持ちなさいよ、八神!私は3-Bで庶務を担当してます岡林真理子です。よろしくね!」
「書記の御園扇です。2-Bです。」
「2-G、広報の辺見章介です。よろしく、笹木さん、宍倉さん、永倉君。」
「外山凛梨子です。2-Dで会計の補佐をしてます。よろしくね。」
上級生が一通り挨拶をしてくれた。
あ、ちょっと緊張してきた、やだなあ~。
「笹木莉奈です。1-Aです。来年の生徒会長に立候補するつもりですので、辺見先輩の担当されている広報を希望します。」
さすがに新入生代表で挨拶するほどだ。
いきなりの会長立候補宣言!
「えっと、1-Cの永倉蒼汰です。中学でも生徒会で会計をやって居ました。よろしくお願いします。」
この男子は初めて会う人物だった。
内部進学の人だから知るわけもないんだけど、中学も生徒会経験者だと、いろいろ聞けるのかな?
光人君のお陰で普通の男の子となら、何とか話すこともできるような気はするけど…。
笹木さんはあまりにも話しかけるには、近寄りづらいんだよな~
そう思ってたら全員の目が私に向いていた。
「宍倉さん、最後、君の番。」
辺見先輩から小声で言われた。
やばっ!忘れてた。
「あ、すいません!1-Gの宍倉彩音です!柊先輩に憧れて生徒会に入りました。書記希望です。」
慌てて余計なことまで言ってしまった!
柊先輩に憧れている。
それは間違っていないけれど、正確ではない。私がこの生徒会に入った理由は……。
「という事で、次期生徒会発足までの3か月このメンバーでやっていく。よろしく頼む。」




