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第45話 文芸部のその後 Ⅰ 須藤文行

 白石と佐藤がこの文芸部から帰った後、ギャル先輩こと有坂副部長が大きくため息をついた。


「これでいいんだろう、有坂。」


「そうだね、日向さん、かなり努力してたよね。」


 日向さんと大塚部長がギャル先輩に明らかに意味深な言葉を向ける。


 朝からの一連の動きを見ていれば、この場で語られることが、なにを意味するのか、このコミュニケーションの苦手な陰キャの僕にもおぼろげながらわかってきた。


 なんであそこまで毛嫌いしていたはずの白石を何とかこの文芸部に引きずり込み、さらに本当に強引に下の名で呼ぼうとしたのか。

 まあ、ツンデレ系のラノベではテンプレですな。


「うん、ありがとう、雅も詩織も。それと、ブンも、な。」


 珍しく礼を言われた。


「それで、雅はこの部に入ってくれるのか?」


「それは、白石君が入ってくれたら、ってことになってるだろう。」


「うん、本当に関係ないのに光人にこの部に入るきっかけを与えてくれて、嬉しかったよ。あいつ、それまでは絶対にこの部のことなんか考えてなかったからな。」


 またため息。

 どんだけ緊張してたんだろう、このギャル先輩は。


「日向さんは本当にこの部に入る気ってあるんですか?仕事があるんじゃ、大変じゃないんですか?」


「だっかっら、お願い!敬語はやめて!」


「そうは言われても、憧れの雅楽先生って知っちゃいますと、そこは…。」


「本当に、口きかないよ。」


「わ、わかりました…、いや、わかった。」


「よろしい。」


 でもなあ、あのイラストレーターの雅楽先生の前で平静を保てるんだろうか?


「それで、さっきの答えだけど。部長さんが構わなければ、籍を置きたいと思ってる。とは言っても、さっきの部長さんの言葉じゃないけど、イラストでの参加ってことになるけど…。」


「ええ、それでいいわ、日向さん。欲を言えば、みんなの作品に絵をつけてくれるとありがたいけど、そうでなくても、気に入った作品だけでも描いてもらえたら、凄い盛り上がるからね。」


「こう言っては何ですけど、それも難しいかもしれないんですけど…。」


 少しすまなそうにする雅楽先生、ではなくて日向さんのそんな態度は限りなく愛おしい。


「そうね、その時は、例えばだけど。」


 そこで部長は少し間をおいた。


「依頼のあるラノベのイラストで、構図の問題とかで没になるやつってあるよね?」


「それは当然、ありますよ。」


「それを完成させて出してもらっていいよ。特に昔のそういったものを完成させてもらえば、おすすめの書籍を絵で表現って感じで!」


 確かにそれは悪くないかな。

 雅楽先生のイラストはいろいろ見てみたい。


「では雅は入部の方向で、ってことでいいかな?」


「いや、いいんだけど。私は有坂と一緒も楽しいし。でも、本命君はいいの?私はそこ、少し粘った方がいいと思うよ。」


「そ、それは、そうかもしれない、けど…。」


 本命なんだ、ギャル先輩。


 そりゃあそうか。

 宍倉さんを引き剥がしてこの部室に連れて来させてんだもんな。

 でも、はたから見て、結構無謀だと思うんだよね、僕は。


 大体ギャル先輩は、どこに惚れたんだろう。


「ということで、ここは是非ブン君の出番ということで。」


 完全にこのことに関しては部外者を決め込んでいたんだけど、急に部長から話を振られて困惑してしまった。


「え~と、なんで僕、何でしょうか。」


「へっ、私たちの話聞いてなかった?」


 部長が当然わかってるでしょう、とばかりに僕に尋ねてきた。


 そりゃあ、なんとなくは解ってきましたが、正確な話は聞いてません!


「あ、いやあ、なんとなくは解ったような気はします。でも、そういうことは、僕の勝手な妄想のような気もするし…。僕の頭の中にはラブコメのテンプレがあるだけなんで…。」


「ほお~。ちなみにそのラブコメのテンプレってとこ、説明してみ?」


 部長が僕を面白そうにいじってきた。


「まあ、本当にテンプレで、今更小説にかけないかなってくらいのもうそうなんですけど。」


 こう言ってはぐらかそうとしてる僕に、当の本人、ギャル先輩がかなりじれったそうに僕に話してきた。


「ああ、もう、そういうのいいから、話せっつってんだよ!」


 キレられた。


「ああ、もうわかりましたよ!ある鈍感系の主人公、男子高校生を気にくわない先輩ギャルがいます。最初はその噂と共に「女の敵」みたいになじってくるんですけど、ちょっとした優しさを垣間見た瞬間に、その鈍感男子のことが気になりだす。気になるとすぐ目で追ってしまい、そこにその鈍感系男子の周りに好意を寄せる女子たちが集まりだしてきて、余計そのギャルは鈍感男子につらく当たってしまうが、でもやっぱり、気になってしょうがない。そしてその気になっている理由が「好き」という感情だと気づいてしまう。ってな妄想です。」


「はい、ビンゴ!」


 僕がしゃべり終わると、間髪を入れずに部長が言った。


「しゃべり過ぎなんだよ!」


 その横でギャル先輩が真っ赤な顔で僕を見て怒ってきた。

 いえいえ、さすがの僕でもわかりますよギャル先輩。

 それが照れ隠しだってことが。


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