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第4話 日向雅さんのお誘い

 入学式のあった週が終わり、明けの月曜日。


 いつものように妹の静海と登校した。

 今朝は何事もなく学校まで辿り着いた。

 だが、朝からお袋に、

「好きな子は一人に絞りなさい。お父さんと一緒のAB型で、八方美人のところあるから」

 と、釘を刺された。

 血液型の性格占いなんて、信用できないだろうが、とは流石に言葉にせず、いってきますと言って、家を出た。

 すぐに静海が俺の左手に絡みついてきたが、なれとは恐ろしいもので、自然に受け入れてしまった。


「最近、仲いいな、お前ら。」


 隣の家の2階からそんな声がかけられた。


 親友の淀川慎吾だ。


「おはよう、二人とも。昨日はいろいろありがとうな、光人」


「悪かったな、ちょっと怒鳴るような態度しちまって。」


 既にあらかたの話を聞いている静海は、会話には入らず、「おはようございます、慎吾さん。」と挨拶しただけだった。


「あれは虹心の方が悪い。それでも光人のことを認めてくれたから、よかったよ。今度ダブルデートしようぜ。」


「まだ、そんな相手はいないさ。」


 俺の声に「はあ」という驚きの声で反論のような感じで俺を睨む。


「昨日のあの雰囲気でか?まあいいけど。あとは智子にいいやつを紹介してやってくれ、頼んだぜ、光人。」


 そう言って自分の部屋に引っ込んだ。


「それ、お兄ちゃんがやっちゃいけないこと、トップ3に入るからね。」


「ほかの二つは?」


「彼女の自慢をすることと、彼女と目の前でイチャイチャすること。」


「了解です。」


 その後はさして深刻な話をせずに、あと2日で始まる日照大付属校統一学力テストについて、それなりの話をして学校に着いた。


「おはよう!」


 元気な智ちゃんから、あいさつされて「おはよう」と答えた。


 どうやら、何とか普通の彼女に戻っているように見える。


 昨夜、鈴木伊乃莉を駅まで送ったことはLigneで報告済み。

 何もなかったことにしておいた。

 智ちゃんの横で弓削さんが少しやつれた感じで俺に恨むような視線を送ってきたことはスルー。

 愚痴に付き合わされたことは想像に難くない。

 ああ、でも弓削さんにこの前のお礼と今後の智ちゃんとの事話したいんだけど、機会がないな。


「おう、おはよう、光人。昨日はゆっくり休んで先週の疲れは取れたか?」


 爽やかイケメン佐藤景樹君も元気そうだ。


「おはよう、なんとかな。」


 嘘はついていない。

 日曜にあったことを考えると必ずしも休めたということはなかったが、しっかりと睡眠はとっている。


「おはよう、光人君。」


 少し小さめの声であやねること宍倉彩音さんが挨拶してきた。

 いつもの明るさがない。

 親友の鈴木伊乃莉とのことで何かあったか?


「おはよう、あやねる。昨日は着信気付けなくてごめんな。」


「あ、うん、それはいいんだけど…。」


「あ、白石おはよう、ちょっといいかな?」


 あやねるの視線に少し引き攣った笑いを浮かべて、俺の席の後ろに座る須藤文行が挨拶しがてらそう声を掛けてきた。


「おはよう須藤。どうした。」


「ちょっと廊下で。いいか?」


「ああ、いいけど。」


 始業開始まで間15分ほどある。

 問題はないだろう。


 あやねるが何か言いたそうにしてるけど、想像はつくので逃げるように廊下に出た。


 そこには長身の日向雅さんが待っていた。


「おはよう、白石君」


「おはよう、日向さん。で、どうしたの?」


 須藤は早々と文芸部に入部している。

 今日も、別に朝練なんてないだろうに、朝から部室に行ったそうだ。

 そこに日向さんが文芸部副部長の有坂裕美先輩と入ってきたらしい。


 まだ秘密だが、事情があり日向さんは俺達より1歳上の同級生。

 有坂先輩とは親友ではなく戦友だと言っていた。


 その日向さんが大きな荷物を持ってきて、文芸部に置かせてもらっているということを須藤が早口でしゃべった。


「ほら、俺の小説を日向さんが読んでくれて、その感想と日向さんの作品を見せてくれるって話し合ったろう?」


 そういえばそんな話だったな。

 でも、それと俺が呼び出された理由がよくわからん。

 しかも3人とも同じクラスなのに、廊下に呼び出されるってどういうこと。


「今日、日向さん、自分の作品持ってきたから俺たちに見てほしいそうだ。」


「あれ、それって須藤と日向さんとの約束だろう?俺なんか、その須藤の小説すら読んでないけど?」


「あの時一緒にいたから、私の作品を見て、感想が聞きたい。」


 見る、か。

 つまり小説のようなものでなくて、写真か絵ってことだろうな。

 まさか動画となると感想は言いづらいな。

 あれ、でも、あの場にはもう一人いたよな…。


「あの時にいたっていうのなら、あやね、じゃなくて宍倉さんもいただろう。彼女にも見てもらった方が…。」


「あ、えっと、宍倉さんはまた別の機会ってことで…。」


 う~ん、あやねるに聞かれたくないから、廊下に呼び出されたわけか。

 このことがわかれば、絶対ついてくるよな。


 まあ、何とかなるでしょう。


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