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第30話 「魔地」ラストシーン

この回には、以前書いて投稿した「魔地」という小説をベースに話が進行します。

読まなくても解らるようにしたつもりですが、興味があれば以下のURLにアクセスしてみてください

 「魔地」

https://ncode.syosetu.com/n2642hs/

 この絵を見ていた他の人も、息を止めて見ていたようで、須藤の言葉に一斉に大きく息を吐いていた。

 これは、大きなため息、なんだろうな。


 いや、これって、凄い、よね。


「さすがだね、雅。うん、ラストシーン、凄いよ、これ。ブンの小説に一緒に添付したらバズるんじゃね?」


「そうだね、この絵なら、その可能性あるよね。裕美が前から言ってたけど、本当にうまいよね。」


 ギャル先輩の言葉に大塚部長が同意する。

 どうやら前から日向さんのこの絵の才能について、ギャル先輩が大塚部長に説明していたようだ。


 二人は須藤の小説を読んだうえで、この絵に対しての印象を語りだした。


「あのラストシーンは、この絵のとこで終わるから、実際に何が起こってるかって、読者の想像力に任せるっていう方法を使ってるよね。あの終わり方じゃ、標的はあの先生ってことは解ってるけど…。でも相手はただの人間だから、結末はほぼ決まりって感じだよね。」


 ギャル先輩がそんなことを言っている。

 その言葉に、絵を見ながら須藤が泣きそうだ。


「ちょっと、ごめん…。」


 須藤はそう言うと、席を立ちあがり部室の隅に移動した。

 スラックスのポケットからクシャクシャのハンカチを取り出して顔をぬぐっていた。

 とうとう涙が零れ落ちたらしい。


「捉え方は人それぞれでいいと思う。白石君と佐藤君はこの絵をどう思う?」


 日向さんが俺たち二人、須藤の小説をまったく読んでいない人間に聞いてきた。


「単純にいい絵、っていうか、格好いい絵だと思った。小説の内容は解んないから、もしかしたら全然違う感想になってしまうかもしんないけど、いい?」


「もちろんよ。何も思い込みのない人の意見を聞きたいからここに来てもらったようなもんだしね。」


 日向さんが、ちょっと昂揚した感じでそう言ってくれた。


「まずこの大きく後ろ姿の少年。ン、少年だよね?が膝を折って、跳躍寸前のような力を込めてるのが伝わってくる。その先はこの校舎みたいな建物なのかな?に向かってるようだよね?その先のこの青い空が、何だろう爽やかな感じと、この少年が握っている剣のようなもの、これが禍々しい感じが、対照的だよ。特にこの件のようなものに巻き付いている白と黒の蛇!ここにも対称的で、何かがこの少年にあったって、胸に迫ってくる。特に来ているものが破れてたり、汚れたりして、ここまでの道中を想像させるよね。

 やっと目的地に辿り着いて、今、まさに目的を果たすための最後の跳躍をするって感じ?そこに言い知れぬ力強さが感じられて、なんて言えばいいんだろう?ここまでの道のりが無駄じゃないっていう希望も見られるって言うか…。ごめん、なんか、まとまらなくて。」


 俺は、この絵に感じたことを並べたけど、なんかまとまってない。

 こういう絵についての感想なんて、あんまり人に言ったことないから、どういえばいいかわからない。


「光人は凄いな。ほとんど俺が感じてたこと、ちゃんと言葉としてくれた感じだ。ほとんど光人に言われちゃったけど俺はその蛇たち?がなんか、いがみ合ってるっていうか、争ってる感じがあるのに、それがちゃんと成り立ってここに描かれてるのも面白く感じたんだ。ちょっと、須藤の小説が読みたくなった。」


 景樹がそんなことを言ったら、何か日向さんの顔がうっすら赤くなった気がするんだが…。

 恐るべき爽やかイケメン効果!


 戻ってきた須藤も、景樹のその言葉に照れている。

 そうか、爽やかイケメン効果は男にも効くわけだ。


「あ、ありがとう、佐藤君。そこに気付いてもらえると、ちょっと、嬉しい。有坂も大塚部長もこの須藤君の小説、「魔地」を呼んでるから、このラストシーンの意味は分かってくれると思うけど。ただ、正確にはこの剣に絡まる白と黒に、蛇という描写はないんだよ。ここは私が勝手にこういう蛇の形にしちゃったんだ。そこを、須藤君が嫌がると申し訳ないんだけど…。」


「そんなことないよ!いい、これ、すんごくいい!あくまで対立する精霊が一つの剣に収まっているという表現で、そうしたけど、ここで対立する意志としての蛇という表現、凄いよ、日向さん!」


「うん、そう言ってくれると嬉しい。」


 日向さんが控えめにそう言った。


「もしよかったら、この絵の元にになった物語の粗筋みたいなの、聞いていいかな。」


 俺と佐藤以外は物語を知っている。

 だからこの絵に対する解釈も深いのではないかと思う。

 本当は須藤の小説を読むべきなんだろうけど、今の会話に加わろうとすれば、簡単にでも概略を聞きたい。


「俺も知りたいな、須藤。」


 佐藤も俺に同意してきた。

 須藤が顔をぬぐっていたハンカチをしまい、元居た席に座った。


「ちょっと恥ずかしいけど、簡単に話すよ。」


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