第288話 槍尾霧人 Ⅳ
本当にムカつく奴だ。
宍倉さんと今日もイチャつきやがって。
しかも、朝にはあの背の高い美人ともにこやかに話していた。
どうも宍倉さんの友達らしいけど。
あいつは、白石っていう「女泣かせのクズ野郎」は恋人の友人にも手を出している。
確かにクズ野郎だ。
腹が立つことにその美人、白石に言い寄られて満更でもないって顔をしていることだ。
こっちは生まれてきてから、3次元の女なんかクソだと思っていたが、こうも毎日ハーレムを見せられてたら、いやでも気になる。
女なんか、みんなイケメンばかりに目が行って、内面なんか気にしないクソだ。
そして僕のような気のいい陰キャの心を弄ぶような奴らばっか。
いい例が、うちの班の山村咲良だ。
外づらは綺麗にしていて、優し気に接していても、心はクズなのがよくわかる。
もっとも、僕はあそこまで自分の嫉妬をさらけ出されれば、いっそ、清々しいと思えてしまった。
そして、自分もまた内面がクズになってしまったことに気付かされた。
それでもいい。
今回、この女が僕に持ち掛けたくそみたいな計画。
宍倉さんだって、可愛い顔して、白石以外の男子をくそみたいに扱っている。
特に塩入への塩対応は僕にとっては、変な言い方だが、スカッとしていた。
イケメン気取りで女は向こうから寄って来る、みたいな態度をぶち壊してるんだから。
それでも懲りずに白石との中に割って入ろうとしてるんだから、根性はあるんだろう。
山村が今回のキーマンとして塩入を取り込んだ。
どうせ見てくれのいい塩入が自分に惚れるとでも思ったんだと感じていたんだけど、どうも違うらしい。
塩入は塩入で山村を蔑んでいる気がする。
だけど、確かに塩入を取り込んでこの計画は完全になった。
山村に賛同した湯月玲子という同級生は僕にはよくわからない。
ブサイクということは無いけど、特別可愛いというほどでもない、どこにでもいそうな女子高校生。
なんでこんな下衆な計画にあんなに嬉々として参加してるのか?
まあ、いいか。
本橋沙織さんと渡辺結弦は単に「面白そう」という理由で、参加しているだけだ。
でも山村がちょっと、「宍倉さんってなんか嫌だよね」と言った言葉に、弓削さんと室伏がすぐに否定的なことを言った。
その瞬間の山村の顔と言ったらなかった。
整った顔だけに、その自分を否定された事への嫌悪感が露骨に表情に出ると、面白い顔以外の何物でもなかった。
その結果、この親睦旅行での公式行事での準備以外で、二人は完全に外されたってわけだ。
山村はその綺麗な顔とは異なり、心にかなりの闇を抱えている。
僕よりもその闇は濃く、そして腐りきっている。
だからこそ、安心して付き合える唯一の女子だった。
この計画が完遂した時の宍倉さんの顔、塩入の顔、そして山村咲良のその表情を、是非僕は見てみたい。
この人間として腐ってるとしか思えない綺麗な女子の顔が今から非常に楽しみだ。




