第244話 ミニオリエンテーリング Ⅲ
3つ目まではほぼ順調に見つけられたのだが、4つ目がどうも見つからない。
「これって、どこかで道間違えたんじゃないか?」
瀬良がそう言って、今野さんの持っている地図を覗き込む。
「道の方向がこのポイントから離れる感じなんだよな。」
地図を見ながらいま歩いてる道が確かに遠のいてる気はしていた。
(おそらく、ここから1~2分前に通ったところに、少しわかりにくい分岐路があった。結構雑草で隠す感じだったようなんだが…。光人はどう思う?)
親父の声に、その道のあたりを思い出してみた。
確かに。
不自然な雑草、草や大きな石が置いてあったところがあった。
(カムフラージュ、ってとこ?)
(ああ、おそらく。教職員がやったのか、この研修所の職員が常日頃からそう言う感じで、面白くしようとしてるかは不明だが…)
(なんで、そんなことを?)
(単純に面白くないだろう?このオリエンテーリングには道があって、ポイントもそう見つけづらいって程じゃない。ただ散歩して終わりっていうより、本当に探さないと見つからないっていうほうが、盛り上がる)
(言われりゃそうかなって思うけど、さ。これ親睦が目的で、特に本番でそれやられたら、親睦どころか喧嘩、断絶ってパターンだろう?)
(このオリエンテーリングが、親睦のためだけならその通りだが、それ以外で利用する者も多いんじゃないか。レクリエーションにしたって、多少の困難さがある方が面白いし)
(そう言うもんかね)
(光人も成長するうちにわかるよ)
そう思ってると、あやねるが不安そうに俺を見てきた。
「大丈夫かな?」
あやねるはちょっと前の景樹と瀬良の様子を心配そうに見ていた。
「道はなかったんだからこっちで間違いはない。」
珍しく景樹が怒るようないい方をしている。
「でもさ、佐藤。明らかにこのポイントから離れてるよ。多少時間かかっても、一旦戻るべきだって。」
「いや、道がない以上、この先に分岐があってこのポイントに戻るような道があるはずだ。」
景樹が少し興奮気味に喋るのも珍しい。
その景樹に対して瀬良も少しエキサイトしてきてる。
ここら辺、運動部の連中っていうか、ある程度チームを引っ張ってきた人間、リーダーってやつは引きが悪いんだよな。
勝負事で駆け引きは当然あるんだろうけど、みんなの意見ってやつを取り入れようとすると、団結力が崩れることが往々にしてあるらしい。
意見の言い合えるミーティングでは活発に反対意見を言って納得させるべきだけど、試合中にそれやっちゃ、ダメだよな。
だから二人ともエキサイトしてきちゃってるね、これ。
「ねえ、ねえ、二人とも、ここでそう言うの、良くないよ。」
おお、なんか青春っぽいね。
やりあってる二人の男子の横でどうしていいかわからなくて狼狽える女子っていう構図。
でも、この場面はその女子に気がある二人の言い合いってわけじゃないかな。
「そう言う今野さんはどう思うの?」
そう言う甘い言葉で景樹が今野さんに言うのは卑怯。
「それは…、佐藤君が正しいと思うけど。」
ほらね。




