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第202話 お袋への言い訳 Ⅱ

 よし、チャンスだ。

 これに乗じて畳みかけるように!


「だからさ、静海が押さえつけてたものを、伊乃莉が解き放っちゃたんだよ。それでなくとも友人がおしゃれすることも多い中、何とかお小遣いなんかでやりくりしてたんだろう?親父にもお袋にも、そんなに我が儘は言わなかったはずだし、いい子だったろう、静海は?」

「うう、それは、そうだけど…。」

「俺が言うのもなんだけど、この1、2年は二人とっも俺にかかりきりで、満足に静海を見てやれてなかったと思うんだ。これからって時に親父が事故でさ。静海は悲しんでるし、甘えることも出来ないという思いは抱えたままだから、強引だとは思うけど、伊乃莉の好意は単純にうれしかったと思うんだよね。」


(う~ん、悠馬君の件もあるから、お父さんとしては、鈴木伊乃莉さんの好意の陰に計算が見え隠れしている気がするんだけど…)

(それは今は棚に置いとけ!)


「光人の言うことは確かに解るわよ。親としては心をえぐられてる思いでいっぱいだけど…。だからと言って、あれだけ買ってもらったら、結構な額になるんでしょう?光人、総額、知ってるわよね?」


(おお、舞子さんの反撃だ!わくわく)

(この傍観者、気取りやがって。もともと伊乃莉の好意を認めたのは親父が先だろうが!)

(さあ、光人君。舞子さんの子の反撃をどう防ぐのかな?)

(もうすでに伊乃莉とは話がついてんだ。別に疚しさはないさ)


「大体5万円くらいだった…。」

「ご、5万円!ちょっと、それは気軽に奢って貰える範疇をはるかに超えてんじゃない!」


 お袋の声の調子が明らかにおかしくなってる。

 ちなみにお袋の意見には諸手を挙げて賛成だ。

 とは言っても、そんなこと言えば、混乱するのは必至。

 あの買い物の後の嬉しそうな静海の顔を思い出すと、変な茶々を入れるわけにはいかない。


「俺だって高校生が簡単にやり取りする金額とは思ってないよ。それがかなりのお嬢様である伊乃莉にとってはした金だとしてもね。」

「やっぱり、お母さん、鈴木伊乃莉ちゃんに連絡させてもらうわ。」

「それはちょっと待ってくれ!まだ俺の話を聞いてくれ。それから伊乃莉と話してほしい。」


 興奮気味のお袋をとりあえず、抑える。


「まだ何かあるの?もしかしたら、お前も何か買って貰ったんじゃないでしょうね?」


 買ってはもらってないが…、妹と一緒にお昼をご馳走にはなってる。

 しかもこれが2度目だ…。

 いや、これは言ってはいけない案件だな。


「今回の静海へのプレゼントの額は、あとで俺が支払うという事で了承してもらってる。」

「光人、お前、そんなに貯金あったのかしら?」

「いや、そんな5万なんて大金はない。」

「まさかと思うけど、出世払いなどという、踏み倒す気満々の約束じゃないでしょうね?」

「ちげーよ!伊乃莉からバイト誘われてんだ。彼女のスーパーで夏休みに。できればGW中も働かせてもらって、そのバイト料を静海の服代に充てるって、伊乃莉とも約束したんだよ。」


 俺の言葉に、お袋が一瞬キョトンとした顔をした。


 次の瞬間、俺の言ったことの意味に気付いたようで、満面の笑みに変わった。


「そこまで考えたんだ、光人は!ちゃんとお兄ちゃんしてんじゃん!なんだか私、今すごく感動してるよ!」


 お袋は笑いながらも、少し目に涙が溜まってるようだ。

 そんなに俺のした事って喜ばれることなのか?


(親からしてみたらな。妹のことを気遣って、で高額のものを恵んでもらうことに対して、ちゃんとした対応が出来ている。本当はその時にお金を渡せれば問題ないんだけど、高校生じゃあ、そうもいかない。そこでバイトして、その働いたお金で生産するってことは、ちゃんと光人が成長してるってことを、舞子さんが認めたんだ。それが嬉しんだよ。いつでも親にとって、子供の成長を目の当たりにすると、感極まるって)


 お袋が目尻の涙を手で拭う。

 そして俺の目を見た。


「あなたが、今回のこの件に対して真摯に対応したことは解ったわ。静海も喜んでたのは家に帰って来た時の表情で十分わかってるけどね。でも、大人としては、礼儀は尽くさないといけないの。伊乃莉ちゃんに連絡して、光人。」


 俺はおふくろの言葉に頷き、スマホの伊乃莉の番号を押した。


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