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第20話 日向雅 Ⅲ

「それで、私に何をしてほしいんだ。悩みを聞けばいいという話ではないんだろう。」


『どうしてそう思うんだ、雅は?』


「電話をかけてきた時間が時間だ。もし、恋愛の悩みというか、ただいかに自分が彼のことを気に入っているのか?というようなどうでもいいことを、長々話そうというのなら、昨日の土曜の夜にかけてきている。」


『うぐっ。』


「それが、明日学校があるのに、この時間に電話してきたということは、何か具体的なことがあって、でもそれを頼むかどうか悩みに悩んだ末の電話、ってとこだろう、有坂。」


『雅に敬意を込めて、シャーロックの名を送ろう。』


「どんな権限で、そんな無茶なことを言ってるか知らんが、さっさと要件を言ってくれ。」


 私の言葉に、また無言の有坂。

 だが、これは何を話すか考えているのだろう。


 すでに何となくだが、話の内容は推察出来てきた。

 私のこの作品についてのことだろうな、きっと。


『わかった。ちょっと雅に手伝ってほしいことがあるんだよ。』


「手伝えることなら言ってくれ。有坂のバックアップは極力するつもりだ。」


『なんか、うちの部員に雅の作品を見せる約束してただろう?』


「よく知ってるな。といっても誰が文芸部に入部したかは知らない……、いや、あの流れだと、須藤君か?」


『そ、そう、ブン、いや須藤文行、な。そいつと友達に見せるんだろう、雅の作品。』


「確かに須藤君にはそういう約束をした。実際彼の作品は読ませてもらった。素人に毛が生えただけということは否めないが、結構のスピード感があって、なかなか面白く読ませてもらった。ついでにインスピレーションももらって、今あの物語の印象をPCに書いて、さっきプリンターから出力した。まだ完成と言うほどでもないけど、感想と一緒に、彼に見せるつもりだ。」


『えっ、もう明日には見せるつもりなのか?学力テストが終わってからでなく?』


「私たち1年はそれほど重要ではないんだろう、あのテスト。最低、参加すればいいと聞いている。」


『まあ、そうだな。1年は関係ないか…。』


「だから、明日須藤君を捕まえて、見せたいとは思ってる。ただ、他の人にはあまり見られたくはない。」


 私の言葉に、有坂が明らかに喜びの口調に変わった。


『だ、だったら、うちの部室、使えよ、雅。他に邪魔する奴、いないからさ。部長の詩織がいても、そんなに問題ないだろう?場合によっちゃ口止めしとくから、さ。』


「使わせてもらえるなら、それはありがたいが…。それで?」


『それでって?別に使わせるのに交換条件なんて出さないよ!』


「それで?」


『うん、まあその、あの…。いや、別に…。』


「ここがお前の言いたいことなんじゃないか?部室を使うというより、部室に来てもらえば、必然的に会えるから、ってとこじゃないか?」


 この言葉は効いたようだ。

 電話口で有坂があたあたしてることが、電話を通して伝わってくる。


 つまり、須藤君の友達…、か。

 一人しか思いつかない。


『べ、別に、そんなに会いたいってわけじゃあ…。』


「須藤君の作品を読ませてほしいと言ったときに、須藤君以外に2人のクラスメイトがいた。一人は女子の宍倉さん。もう一人が、やけにあんたが絡んでいた…。」


『終いまで言うな!そうだよ!白石だよ!あいつを一緒に部室に連れてきてほしんだよ!』


 ほとんど自棄になって、大声で電話口で叫んでいる。

 こちらもスマホを耳に当てているんだから、少し加減をしてほしいもんだよ。


「あんまりうるさくしてるとご両親から苦情が来るぞ。つまり、私の作品を見せるという名目で、須藤文行君と一緒に白石光人君も連れて文芸部に行けばいいということでいいんだな?」


『あ、いや、それは間違いではないんだが…。一人、白石がここに来ようとすると、付いてくる奴がいる。そいつは排除してほしい。』


「だからめんどくさいって言ったんだよ。さっきも言ったけど、須藤君と白石君、そして宍倉さんがその時いたんだよ。それで宍倉さんだけ除外って、さあ。」


『それが、まあ、面倒くさいだろうなってことは解ってるつもりだよ。でも、あの子がいない状態で白石に…、逢いたい…。』


 最後の方はかなり、か細い声になっていた。

 蚊の鳴くような声という奴だろう。


 本当に有坂は可愛いと思うよ。


「そんな声を聞かされちゃ、引き受けるしかないか。わかったよ、有坂。何とかやってみる。」


『あ、ありがとう!雅。持つべきものは真の友達だね、うん。』


 少し泣き声っぽくなっている。

 となると、とりあえずは…。


「有坂、明日少し早く出られるか?」


『ああ、それくらいは問題ないけど、なんで?』


「とりあえず、この作品たちを文芸部に置かせてくれ。」


『それくらいはどうってことないけど…。』


「作品を友達の文芸部に置いてあるってことで、部室に呼び出すよ。それでいいだろう?」


『ああ、…ああ!そうだな、うん、了解した。よろしく頼む、雅様。』


 全く調子のいいことだ。

 だが、さて、どうやって白石君とコンタクトを取って、さらに宍倉さんを彼から引き離さないといけないんだな。


 本当に面倒くさい。


 とりあえずは須藤君に最初に連絡を取らないといけないか。


 そんなことを考えながら、有坂との電話を切った。


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