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第195話 旅行の買い出し

 西舟野駅改札の前に2人の美少女が立っていた。


 ボブカットのあやねるがギンガムチェックのワンピース。


 対するセミロングの伊乃莉がカーキ色のサブリナパンツに紺色のシルクのシャツに白のロングカーディガンという出で立ち。

 ただ、メイクはうっすらとしている程度だ。

 先週のパーフェクトメイクではなかった。

 何故いつも通りのメイクかは俺にはわからない。


「ごめん、待たせちゃって。二人とも大丈夫。」

「ああ、光人君!まあ、何人か男の人が寄って来たけど、伊乃莉が撃退してくれたから。静海ちゃんも一緒だったんだね。」

「遅いよ、光人。本当、変な虫が来るから、もっと先に来なって言うの!」


 非常にニコニコしているあやねるに比べ、少しイライラしている伊乃莉。

 先週の言い寄ってきた男よりかは、普通の男性が声を掛けてきたのか、それほど心細さはない模様。


「いや、急に言われても、この時間が精一杯だって。でも、わざわざこの西舟野まで足を延ばした理由って?」


 買い物があるのは解るが、それこそ地元の方がものはいくらでもあるだろうに。


「あやねるのご要望。光人が午前中に用事があるようなこと言ってたから、わざわざこの時間に連絡したんだよ。」


 親切な伊乃莉さんが説明してくれたが、その顔には明らかに戸惑いがある。

 あやねるはひとりで電車には載れないから、伊乃莉が半強制的に呼び出されてるのだから不機嫌なのはわかるが、その割には怒っているのがただのポーズに見える。

 先週の頬への口づけが思い出され、どうにもこちらも対応に困る。


「静海がどうしても二人と買い物したいって言うから連れてきてしまったんだが、迷惑じゃなかったかな?」

「う~ん、それは大丈夫なんだけど、ね。」


 伊乃莉はそう言ってあやねるを見た。

 あやねるはニッコリ笑って静海を見る。


「うん、大丈夫。静海ちゃんと一緒は私も楽しいし。」


 そういうあやねるの口元が微かに痙攣しているのを俺は見逃さなかった。


(彩ちゃん、本当は光人と二人がいいんだろうな)

(でも、電車に乗るんなら伊乃莉がいないとダメだろう?)

(そうなんだろうね。だから、本当は迷惑に思っている静海に対しても、何とも言えないか)


 その時に静海と俺の腹の虫が同時になった。

 俺は引き攣った笑いで誤魔化そうとしたが、静海は顔が真っ赤になっていた。


「二人とも悪いんだけどさ、ちょっと喫茶店にでも入らないか。ここで立ち話もなんだし。」

「ああ、ごめんなさい。お昼時だもんね。じゃあ、ちょっとお店に入ろう。」


 あやねるが静海に気を使ってそう言うと、伊乃莉と共に先に歩き出した。






 あやねると伊乃莉は紅茶とケーキセットを注文した。

 既に昼食は食べてきたのだろう。

 これに対し、俺はカレーライスの大盛りとサラダ、アイスコーヒーを注文。

 静海はカルボナーラとサラダ、そしてオレンジジュースとケーキを注文する。


 とりあえず俺達兄妹は昼食を平らげ、一心地ついたところだ。


「ああ、ごめんな。ちょっとがっついて。さすがに二組の大人の訪問で、思ったより気と頭を使ってたみたいでさ。ハハハ。」

「本当、お兄ちゃん、がっつきすぎ!。」

「ケーキを食べ終わってるお前にだけは言われたくない。」


 静海もすべて食べつくし、オレンジジュースを飲んでいる。

 それに対しあやねると伊乃莉はまだ半分以上ケーキが残っているのだ。


「そう言えば、まだ言ってなかったけど、あやねるのそのワンピース可愛いね。清楚名感じが特にいいよ。」


 本当はあったときに言うべきことであったことは知っている。

 知っているがいきなり腹の虫がなり、言うタイミングを逸したのだ。


「あ、ありがとう、光人くん。」


 少しはにかむように言うあやねるは、やっぱり可愛い。


「あのさ、私には感想ないわけ?」


 伊乃莉が少しご機嫌斜めで言ってきた。


「ああ、に会ってると思うよ。でもさ、先週のインパクトが凄すぎて、まあ今回はそんなとこかなって感じ。」

「うわあ~、なに、その上から目線。」


 うん、伊乃莉から何言われても、変に優しい言葉が、のちに俺を苦しめるであろうことは解ってるから、そっけないことが一番。


「そうだよね、光人くん、伊乃莉の完璧なメイクを見てるんだよね。それも先週の日曜、二人きりで…。」


 あっ、地雷踏んだ。


 あやねるがさっきのはにかむ姿から、急に落ち込んだ。


 それに伊乃莉も気づいたようだ。


「だ、だからさ、今日無理言って光人に会いに来たんでしょう?旅行の買い物に付き合ってもらうってことにして。」


 伊乃莉もあわてていたようだ。

 明らかに要らないことまで言っていた。


 その伊乃莉の言葉に、暗く落ち込んでいたあやねるの顔が、一気に赤くなった。


「ち、違うよ?光人君。別に会いたかったわけ……、あ、会いたかったのは会いたいんだけど、本当に買い物が…。」


 急に、訳の分からないことを言い始める、あやねるだった。


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