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第188話 光人の行動力

(ここが正念場ぞ、光人)

(本当にどういう事なんだよ、親父。この質問すら意味がわかんないんだけど、俺)


「そりゃあ、親父が死んだんですよ?変わらざるを得ないじゃないですか!」


 俺は片見さんの質問に、当たり前のことを返した。


「うん、そうなんだけどさ。光人君、君のことを影人氏が心配していたことは知ってるだろう?」

「それは…、それは知ってます。済まなかったとも思ってますし、感謝もしてますよ、本当に。」


 うんうん、と頷く片見さん。その横で少し青ざめている山上さん。


 その様子で、何が言いたいのかわかってしまった。

 親父が山上さんに俺のことで、相談というか愚痴というかを聞かされていた話だ。


「影人氏は、君がいじめられた後のに、あまり積極的には学校に行かなかったことや、人とのコミュニケーションを避けていたという事。ここにいる当社の山上を通じて聞いているんだ。まあ、個人情報という事で言えばよくないと思うけど、亡くなった後で、影人氏がいない白石家の心配をしていてね。それがさっきの話じゃないけど、ああいってしっかりとした意見を言える大人になっていた。あの動画だけだけど、それでもあれだけ浅見家のことと、影人氏のことを気遣える態度は素晴らしかった。」


 片見さんの観察者の目が俺を捉えて離さない。

 これは、この片見さんの話に対するリアクションを見逃さないようにしているという事だ。


「自分が思った本当の気持ちです。特に、浅見蓮君に重荷を背負わせちゃいけない、そう思っただけです。」

「その想いはしっかりと伝わってきた。だが、そこに私は変に違和感を覚えたんだ。影人氏が山上に相談していた光人君、記者会見での光人君。とても同一人物には思えなくてね。」

「片見さんがどう思おうと、俺は俺です。確かに、親父がいけていたときは半分引きこもりみたいな状態ではありました。早い話が、両親に甘えていたんです。自分はこんなにつらい目にあっているんだから、学校に行かなくてもいい、なんて言う甘えです。でも、その甘えてよかった親父がこの世から消えてしまった。お袋は親父の死で、殆ど動けないし、妹は泣きじゃくるばかり。俺が動くしかないじゃないですか!」


 俺がかなり感情的にふるまって見ても、片見さんはまるで動じていなかった。


「君の言いたいことは理解できるんだけど…。それにしても、君は影人氏の死後、影人氏の人脈を使って、様々な人に会い、依頼をしてるね。弁護士さんは当然かもしれないけど、税理士さんや運送会社の社長、当然葬儀関係もだけど、マスコミに対する対応。これは弁護士の方のアドバイスはあったかもしれないけど、とても15歳の少年の手腕には見えないんだよね。」


 俺は頭の中で親父にかなりきつい目(想像上の)を向けた。

 親父の意識の矛先が、明らかに俺からずれた。


(親父が無茶やった時の話だよね、これ)

(ああ、まあ、そうだな)

(そんなことまで、この人たちは調べるの?)

(何とも言えんが…。あの記者会見を見れば、誰があの記者会見をセッティングしたかってところから、引っ張って来るだろうな)

(そういうもんなのか?)

(弁護士の名前は解っている。それと光人ではなく私の交友関係、というか履歴で共通の友人が出てくるからな。そこからどういう過程で何があったか、国家レベルなら優秀な捜査能力を持っているんだ。すぐに丸裸にされるよ)

(でもさ、親父。よく縦割り行政とか言って、各省庁は仲が悪いって…)

(そういうこともあるだろうが、同期というか横のつながりがない訳じゃない。それがトップレベルで、さしてお互いの不利益にならなければ、どうということは無いだろうな。もっとも、これは私の完全な推測だが…)


「そうは言われても、必死だったんですよ。親父の名刺ホルダー漁って、何とか協力してくれる人捜したんですから。」

「だから、君の行動が15歳に見えない。それが何処からその行動力が出てきたのか知りたいと思ってね。もしかしたらうちのサプリが利いてるのかもしれない。もしかしたら影人さんの死と関連してるのかもしれない、って想像するのも不思議ではないだろう?」


 片見さんの口元には穏やかな笑みともいえる表情が浮かんでる。

 でも、目は相変わらずだ。


「片見さんが何を想像してるかはわかりませんが、光人が私たちのお為に一生懸命であったのは事実です。それこそ、倒れる程に頑張ってくれたんですよ!なんだか今の言いようだと、光人が何か悪いことでもしたようじゃないですか!」


 隣のお袋が、片見さんの俺に対する態度に我慢できないような感じで声を上げた。


「そうよ!お兄ちゃんは私たちのために、頑張ったの!それだけだよ。まるで人が入れ替わったみたいな言い方はやめて!」


 静海が必死で俺をかばってくれた。

 ただ、その言葉が、俺と親父の心に突き刺さっていた。


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