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第186話 アンケート Ⅱ

「さて、まあ、大体みんな同じようだよな。飲み方は、何日に1回ってとこなんで、それで効果ってのもなあ。」

「そうですね、山上さん。ここに限らず、しっかり毎日飲む方は少ないんですよね。まだサプリメントだからいいんですけど。でも「特定保健」取ろうと思うとなあ。」

「さすがにそれは難しいだろう?暗記力の確認試験でも有意差が出るかどうかだったし。」


 片見さんと山上さんがそんなことを話しているのだが…。


 二人とも、そして二人の会話を聞いている柏木さんも、目がかなり怖い。


「白石先輩はきっちりと服用して、ドイツ語を覚えようとしていたけど、この結果が微妙だよな。そりゃあ暗記は出来てそうだけど、しゃべれるレベルではないし…。」


(親父、ドイツ語なんかやってたの?)

(一応、このサプリの指標代わりになるかと思ってな。光人と静海は学校の成績があるから。それを流用できるけどな。ちなみに舞子さんは英語をやってはいた。ほとんど私がせっついたときだけ)


「とりあえずのアンケートはこんなもんかな。」


 片見さんがそう言って、一旦持っていた資料を自分の中に仕舞った。


 俺はこれで終わりだと思い、軽く息を吐く。

 少し和やかな雰囲気にしてくれていたとはいえ、やはり見知らぬ人の質問には緊張を強いられていたようだ。


 片見さんが鞄を開けて中の物をごそごそとやってるのを見て、初めて雰囲気がおかしいことに気付いた。


 さっきのアンケートを仕舞うだけなら、そんなに時間がかかる筈がなかった。

 何かを探している?


 それよりも、その片見さんを見ている山上さんと柏木さんの顔に緊張の色が見えた。

 目が笑っていない。


 片見さんがこれから何をしようとしているかを充分にわかったうえで、その行動に緊張してる、そんな感じだ。


(これからこの片見という人物の質問には十分気をつけろ、光人。ここからが、山上の同僚を装ってきた彼らの真の目的だと思う)

(ちょっと待って、親父。何だよ、これからが本番とか、真の目的とか…。この人たちは親父の供養とアンケートの回収なんじゃないか?)

(本番のアンケートがここから始まるってことだよ)


 山上さんが何かを見つけて鞄から取り出した片見さんの耳元に何かを囁いている。


 それに対し片見さんの目に冷たい光が浮かんだ気がした。

 そしてコクリと頷いてる。


 その頷きに山上さんの顔が明らかに落胆した表情を浮かべていた。


 片見さんは取りだした小さな機械をテーブルに置いた。


「ああ、ごめんね、変に時間取って。さっきのアンケートの時に録音するのを忘れてな。これボイスレコーダー。今だとスマホで出来るんだけど、会社からの資料となると、個人のスマホという訳にはいかなくてね。さっきまでの内容はなしでいいんだけど、今鞄見てたらこれがあることを忘れちゃってることに気付いてね。申し訳ないんだけど、もうちょっと付き合ってくれるかな。」

「あ~と、何を言ってるのか、よく解らないんですけど…。」


 とりあえず解らない振りをする。


「うん、流石に全く録音されなかったって言うのはさ、体裁が悪いんでな。申し訳ない、もう少し質問したそれで終わり!いいかな?」


 笑顔で言ってるが、その瞳には冷たさを感じる。

 モルモットを見る目っていうの、きっとこういう瞳を言うんだろうな。


 まるで自分のちょっとしたミスをカバーするようなことを言ってる。

 仮にこの言葉が本当だとしてら、この冷たい瞳の意味が解らない。


「さっきのをまたするんですか?」

「まさか!さすがにそれは大変だよ。2つ3つの質問に答えてくて物があれば、このポンコツのせいに出来るからさ。」


 そう言ってボイスレコ-だーを軽く叩いて見せた。


 ふと隣の山上さんを見ると、軽く視線を外された。


 これは俺だけに対して行われる聞き取り、いや、尋問のようだ。


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