第181話 山上氏と他二人
少し投稿に間が開いてしまい申し訳ありません。
新しい小説をまとめて投稿していたら、措置r谷時間をとられてしまいました。
「空の先の世界~無人島で半裸の美女と二人きり 理性と欲望のはざまで苦悩する俺~」
良かったら読んでみてください。この小説は既に最後まで書いておりますので、この「親父と同居のスクールライフ」のようにはならないと思いますので……
チャイムが鳴った。
「どちら様ですか?」
お袋がインターホンに向かい、訪問者の名を尋ねる。
ほぼ時間通りなので、相手が誰かの推測はついていたが、確認は必須である。
玄関のモニターには3人の大人がいた。
俺はまったく見覚えのない顔。
男性2人、女性が一人。
「連絡してました白石先輩の後輩の山上と、同じ研究所の者です。」
「今、開けますね。」
お袋が玄関に駆け寄っていった。
(やっぱりな。これはちょっとヤバいな)
(親父、やっぱり山上さん以外も知ってるの?)
(女性の方は知らん。俺が辞めた時には、きっとまだ学生くらいの年だろう。だがもう一人の男は、栄科製薬の人間じゃない。厚労省の役人だ)
(親父の部下じゃなかったの?)
(という名目でなきゃ、訪問は出来んだろう?故人の。どうせ知ることにはなるんだが、変にお前の顔に出るとまずいしな。こいつらが帰ったら、教えてやる。とりあえずは聞かれた事だけ応えてくれ。絶対に俺の存在を知られるな)
(あ、ああ、わかったよ)
玄関から案内された山上さんを先頭に3人の男女が家に上がった。
リビングに案内された山上さんが、仏壇に気付いた。
しばしその中の写真に目が行った。
「舞子さん。申し訳ないんですが、先輩、影人さんにお線香を上げさせてもらっても、よろしいでしょうか?」
仏壇からお袋に視線を戻して、山上さんが尋ねる。
「ええ、ええ。山上さん。うちの人に上げてやってください。喜ぶと思いますんで。」
すでに俺の脳の中の同居人がすすり泣きをはじめていた。
俺はそれを無視して、山上さんがそう言うのを聞いている後ろの二人を見いた。
完全に無表情だった二人が、俺の視線に気づいて、慌てて「私たちも上げていいですか?」と男性がお袋に言っていた。
山上さんは線香を立てたのち、結構な時間手を合わせていた。
顔を上げ、仏壇の前を開けると、二人が次々と線香に火をつける。
山上さんの真摯な態度の後では、二人の行いは義務以外の何物でもなかった。
仏壇を離れた3人を広めのテーブルに案内して、お茶を出す。
山上さんが真ん中に座り、その右横に男性が、反対側に女性が座った。
それに対して、お袋を真ん中にして男性の前に俺、女性の前に静海が腰を下ろす。
「舞子さん、遅くなって本当に申し訳ありません。すぐにでも、お葬式にも参列したかったんですが…。」
「いいえ、山上さん。あんなにマスコミに取り囲まれたら、普通に人がここに来るのは難しかったでしょう?近所の人も、焼香してくれたのは結構後でしたから。それに家族葬で小ぢんまりとしましたので、そんなに頭を下げないでください。それに、栄科製薬さんからもお花を出していただきましたし、山上さんからも弔電頂いてます。その節は、本当にありがとうございました。こちらから、なにもお返しも出来てませんで。」
お袋が頭を、それこそ机に擦り付けそうなほどにしている山上さんに頭を下げた。
他の二人は軽く頭を下げた程度。
「あ、すいません。こちらの二人は皆さん初めてでしたね。こちらが私の直属の部下になります、片見則夫と、こちらが白石先輩が辞めてから、入社した柏木栞奈です。」
それぞれが名乗った。
女性の方はその若さから、最初から親父と面識がないことを説明している。
どうやら親父が残した研究を引き継いでいるらしい。
(ふん)
親父の機嫌が斜めを向いていた。
「私は山上課長の直属ではありますが、白石さんが辞める前に一緒に研究をしていました。」
片見則夫と名乗った人物も、親父とはそれほど縁がないと自ら話してきた。
この態度は、真剣に焼香を願う山上さんの態度との温度差を俺に見抜かれたと思っての予防線にしか見えない。
さっき親父は厚労省の役人と言っていた。
本人は一緒に研究をしていたと言う。
すでに片見という人物が嘘をついているから、さらなる嘘があっても不思議ではない。
だが、そんな人間が、何故この場にいるのか?
「山上さんと会うのは何年振りかしら。光人がまだ小学校に上がる前だから、もう10年になるか知らねえ。」
「そうですね。岡崎先生が学会で学生と東京に来た時に、一緒に寄らせてもらったときですね。」
岡崎先生。
そうだった、親父と同じ大学院の研究室だったっけ。
「そういえば、その岡崎先生、この後、やっぱり影人さんにお線香あげに来てくれることになっているのよ。」
「えっ。」
かなり驚いたようである。
それはそうだな。
こんなこと、そうそうないから。
「うちの子、光人の担任の先生が、偶然にも岡崎教授の息子さんでね。その先生から教授が文科省の仕事でこっちに来てるってことで、11時半くらいにここに来ることになっているの。うちの夫も、きっと大喜びね。」
そう言って仏壇の親父の写真に目を向けた。
いや、お袋。
実はここにいるんだよ。
ああ、言いてえ!
(絶対言うなよ!特にこの3人の前では、その素振りも見せるな!)
親父はえらい剣幕で、警告を発してきた。
「そうですか、岡崎先生のお子さん、教師になったというお話は聞いてましたが…。光人君の先生に…。これも何かの縁、何でしょうね。」
優しい顔で俺に顔を向けてきた山上さん。
本当に親父と仲が良かったんだな。
「で、教授の息子さんって、どんな感じ?」
ちょうどいいって感じで俺に話を振ってきた。
どんな感じと言われてもなあ。
「う~ん、まだ入学して10日ほど何で、なんとも。いい先生だとは思いますが。」
「いい先生じゃない?入学式で倒れたあんたを、わざわざ送ってくれたんだから。」
いらんこと言うなよ、お袋!
「えっ、入学式に倒れちゃったの?」
心配げに山上さんが俺に聞いてきた。
その間両隣の二人はほとんど動かなかったが、今の話には興味があるようで、二人とも俺を見てきた。




