第18話 山村咲良 Ⅱ
予定が何もないせいで、気晴らしにデートをしてみる気になった。
一応、この辺の公立高校では1番の高校だし…。
少しは容貌もまともになってるかと思って多少おしゃれをして西舟野の待ち合わせ場所に行ってみたけど…
最悪だ。もうちょっと女の子とのデートってもんを意識しろってんだよ!
ジーンズのパンツはまだしも、ジャケットは黒、しかもインナーになんか訳の分からんデザインがされていて気色悪い。眼鏡は中学の時のまんまじゃん!
それに高校にもなって、デートのプランにアニメの映画入れて来るってどういうこと。
「高校に入って、またすごく綺麗になったね。」
っていうのは、少しだけ、認めるけど。
結局、ご飯だけ奢らせて、バイバイした。
その時の顔の面白いこと、面白いこと。
やっぱり、私ってばこうでなくっちゃね。
ほんの少し気が晴れた、かな。
この高校に入ってから、調子がくるってる。
江戸川区立丸橋中学では、学校1の美少女ともてはやされ、誰もが私に気に入られるために、喜んで膝まづいていたはずなのに!
この高校に入学して、すぐには声を掛けてくる輩はいたが、みんな平均以下の男だった。
同じクラスの宍倉という女が可愛いとかいう奴がいたが、どうしたらあの鷲鼻女が可愛いとなるのか理解できない。
さらに、生徒会書記っていう、あの柊っていう上級生に至っては、学校一の美少女だという噂で持ち切りだ。
あんな脱色した髪の女より、この艶やかな黒い髪の私の方が、どう考えても清楚な美少女№1だろう!
まず、2日目の宍倉が泣いていたことを聞きつけて、悪い噂を流そうとしたら、逆に好感度を上げる結果になってしまった。
付き合ってるんだかなんだか、白石光人という奴も気に入らない。
事故なんて知らねえし!
ただの母子家庭だろうが!
自己紹介の時だって、私が立ち上がったって何の歓声も起きないってどういうこと!
いつも多くの男子生徒が私に気に入られようとして、あの手この手でいい寄って来るのに!
まあ、変な奴らの相手をしなくてもいいから、気楽でいいけど…。
ああ、でもむかつく。
あのメガネの見るからに、ヲタ野郎の奴にも、せっかく私が、この山村咲良という超絶美少女が、声を掛けてるって言うのに、あんな陰キャな女子と楽しそうに話しやがって!
しかも、そう、しかも、明らかに、こんなかわいい綺麗な私を邪魔者扱いして!
ああ、考えてたら、また怒りがぶり返してきた。
それに拍車をかけて、あの、読モだか、毒女だか知らないけど、ちょっと雑誌に載ったからって、いい気になってるあの女!
生徒会だか何だか知らないけど、ちょっと顔立ちが整ってるからって、先公まで鼻の下伸ばしやがった。
柊夏帆!
確かにファッション誌に載ってるのは見ていた。
けど、あんなの、すっぴんは雑誌とは雲泥の差じゃん。
エフェクトかけまくりで、なにが読モだっつうの!
3年のくせして新入生のクラスに腰落ち着けて、あいつ、絶対優越感に浸ってやがったんだ。
性格ブスもいいところだ。
親睦旅行の班も面白くなさそうな奴ばっかだし…。
まあ、でも、私に話しかけられて、おたおたしてる男子には少し自分の魅力を再認識できたけど…。
でも、宍倉のぶりっ子ブスのとこ、イケメンが二人もいて、しかもちやほやされていたな…。
ちょっとうらやまし…、いやいやいや、全然、ゼンゼンウラヤマシクナンカナイ…。
ああ、週開けて、なんかテストあんだっけ。
なんか、あのクラス、気に入らないわ。
また、いつものやってストレス発散しないとダメかも。
市立舟野高校に行ったアンナちゃんから、よく「やっちゃだめだよ」って言われてたけど、もう、これやらないと、この胸のもやもやどうしようもないよ。
ターゲットは白井光人ってしたいけど、あいつの状況見てるとちょっと難しそうだしな…。
しかも、結構な有名人らしいし。
となると、あの陰キャヲタ野郎の、えっと、なんて言ったかな…。
あっ、名簿あった。
「須藤文行」。
こいつにしとこ。
人のこと邪魔者扱いして…。
そっ、天罰ってやつね。
きーめた。
さて、どうやって、近づいていくかな?
いきなりいっても、ああいう連中は警戒するからな…。
まあ、親睦旅行あたりが、一番接近しやすいね、これは。
ああ、少しすっきりしてきた。
明日から、楽しみ出来ちゃった。
うふ。
じゃあ、美容のためには、しっかりと寝よう!
お休み、哀れな子羊ちゃん。




