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第168話 招待状の思惑

(この踊りは確かに小難しい感じだが、1週間あれば、形にはなるんじゃないか。私には無理だが)


(そこら辺は何とも。だとすると、柊先輩は俺との初対面の後、失敗を悟って次の手を打ってきた、ってこと?)


(もともとはダンス部員で、その部長とも友人だ。二人が舞台に上がることはこれが最後かもしれない。なんてことを言えば、両親や、叔父叔母は来るんじゃないか、蓮君を伴って)


(可能性は否定できないけどさ、親父。そこに俺をどうやったら引っ張り出せると考えていたんだ?誘われたのは一昨日。静海の友人からだぜ)


(そうなんだがな…おそらく)


(あっ、そうか!それで急に友人が静海と俺を誘った。柊先輩に言われて)


(私もそれは考えたが…、ちょっと、それはきついんだよな、光人。単純に偶然静海の友人、神代さんだっけ?が自分の意志でお前にチケットを渡したと思っている。それを知った柊夏帆が、そのことを利用した)


(どうして?)


(お前が入学するまで、私の子供は光人だけだったと思っていたから。もし、中学に静海が在学しているとしたら、もっと早く静海に会いに行ったはずだ、あのお嬢さんの感覚なら)


(それは納得)


(つまり、柊夏帆は光人を知ってから、妹が中学に在学していることを知った、と言うところだろう。だとすれば、静海の交友関係なんてわかるわけはない)


(じゃあ、親父はどう考えているんだ。この公開練習に俺たち兄妹を引き出す方法)


(彩ちゃんから誘わせるつもりだったのだろう、と考えている)


(あやねるから?なんで?)


(簡単なことだよ。柊夏帆本人からは招待状を渡そうとしても、受け取らないと考えられる。だが、彩ちゃんから「一緒に行こう」と言われてお前は断れるか?)


(うーん……無理)


(そういうことだ。で生徒会関係者と言う態で、結局ここら辺に座らせ、頃合いを見て、さっきのような下りを組み込む、という訳だ)


 曲は佳境に入ろうとしている。

 この第二体育館にいる誰もが手拍子を叩き始めた。

 二人の後ろにはいつのまにかダンス部の部員が一緒に踊っている。


(で、偶然、妹を介して神代さんからチケットが回ってきた、という訳か。それを柊夏帆は利用している)


(行くべきではないのかな。柊先輩に言いように操られているようで、なんかいやだな)


(どちらにしろ、静海を守ってやれよ。それが出来るのはお前だけだ、光人)


(当然だ!)


 曲が終わった。

 満面の笑みで、柊姉妹が周りに手を振っている。


 それに呼応するように、観客から声援がこだましていた。

 特に女子の声がうるさいくらいだ。


「柊姉妹に、もう一度盛大な拍手を!」


 部長さんの声にさらなる拍手が、声援が第二体育館を包んでいた。


 その拍手に応えるように、姉妹は手を握り高々と上にあげ、お辞儀をするときに一緒に下した。

 声援が悲鳴かというほどに音量を上げた。


「ねえ、お兄ちゃん!ちゃんと見てた?なんか考え事してる感じだったよ!」


 さっきは震えて俺にしがみついてる感じだったが、やっぱり柊先輩に対して静海は憧れを抱いているようだ。


「うん、まあ、大体は…」


「本当にもったいない。」


 そう言った時だった。

 俺の肩を叩く人がいた。

 てっきり伊乃莉かと思って振り返ったら、そこには殺気ステージ脇に案内してくれた、神代さんが立っていた。


「最後まで見て行かれるようでしたら、その後でも構わないとのことですが、できればお兄さんと静海に来ていただきたいと。」


 俺の耳元で囁くように神代さんが言ってきた。


 一見、こちらの意思を尊重してるようだが、半分は強制的な誘いだ。


 柊先輩はすでにやめてるとはいえ、妹の秋葉さんは現役だ。

 去年までは中学で一緒だったのだから、俺らを連れて行かなければ、立場的にまずいんじゃないか。

 そう思ってしまう。


「静海、迎えだ。言ってもいいか?」


 さっきまで震えていた静海だ。

 断ることも考えていたんだが…。


「大丈夫だよ、お兄ちゃん。行こう。」


 俺と静海は席を立ちあがり、静かに歩く神代さんに従う。


 残った三人には「ちょっと行ってくる」と声をかけた。

 三人ともサムズアップで送り出してくれた。


 俺は心配そうに見ているあやねるにも、軽く笑顔で手を振った。

 あやねるは心配そうにしながらも、同じように手を振ってきてくれた。


 後で説明をしないといけないな。

 俺はそんなことを考えながら、神代さんの後についていった。


 また部長さんのアナウンスが入り、GWに催されるイベントで踊るダンスの通し稽古を始める旨が説明されていた。


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