表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/401

第165話 特別観覧席にて Ⅱ

 最近流行ってる音楽に合わせて、おそらく選抜されたメンバーなのだろう人たちが、ダンスを始めた。

 部員数から考えると半分くらいの人数だ。

 その中に柊先輩の妹さん、秋葉さんも、静海の友人である神代さんも入っていた。


 中学2年でどのくらいの人がいるかはわからないけど、素質はあるのだろう。

 背丈に比べれば長い手足が、ダイナミックに動いている。

 たまに、周りとあわない時もあるが、その時に見せるコケティッシュな表情は、非常に魅力的だ。


 柊秋葉さんは、安定して綺麗に踊っているようだ。

 他の高校生と思われる女子も、ミスが少ない様な気がする。

 だからなのか、ミスをしたときの表情も相まって、神代さんの存在感が凄い。

 さっきまで不安そうにしていた静海も、友達のハツラツした動きに魅入られているようだ。


 音楽が徐々に小さくなり、その音が消えたところで、ダンスが終わった。

 盛大な拍手が観客から起こり、さらに友人たちから歓声が沸いている。


「お前の友達、凄いな。」


 隣の静海にそう声を掛けた。


 静海は胸を張り、やけにドヤ顔である。友人を褒められてご満悦な様子だ。


「レイアは勉強も運動もできるけど、踊ってるときが一番生き生きしてんだよ。」


 自分のことのように自慢してきた。


「確かに、静海ちゃんのお友達、ミスも目立ったけど、楽しそうに踊ってたよね。上級生がこの観客に委縮してるように見えたのとは、えらい違いだった。」


 伊乃莉がそう感想を告げる。

 その言葉にさらに静海に鼻が高くなっている。


「白石の妹さんのお友達も印象的だったけど、あのセンターの女子。ダークブラウンの髪がさっきの柊先輩に被るんだけどさ、えらく輝いて見えたな。」


 瀬良が流石の嗅覚で、メインの女子をピックアップしてきた。

 瀬良が認めてるから、景樹には柊秋葉さんを推しておこう。


「あの子、瀬良の言う通り、柊先輩に被って当然だよ。あの子、柊先輩の妹さん。同じ学年で特進クラスだ。」


「どうりで、似てるわけだ。でもさ、白石。柊先輩に結構冷たい割に、詳しいな。」


「別に冷たくしてる自覚はないよ。でも、出来れば近づきたくないってのはあるけど…。」


「そこが俺にはわからん。そりゃ、付き合えるとは思わないけど、あんな綺麗な人と友好的な状態は、みんな作りたいと思ってるけどな。」


 しみじみと瀬良が己の欲望をさらけ出していた。

 そこがこの男のいいところでもある。


「俺が普通の一般男子ならそう思ったかもしれないな。」


「何言ってんだよ、お前。白石は何処から見たって、普通オブ普通の男子高校生だろう。」


 こういう言い方は、なんだか救われる。


「うん、基本的にはそうだ。別に極端に優秀でもなく劣ってもいない。これと言って、光るものもないからな。」


「いや、そこまでは言ってない。」


 そう言って笑った。

 つられて横の須藤も笑いながら肯定する。


 俺は運がいいのかもしれない。

 この二人や景樹と直ぐ仲良くなれたんだから。


「でも、俺の親父が助けた子は、柊家と親戚だった。これはちょっと、偶然でも、あまりうれしくない。」


「そういうもんか?」


「だって見ただろう、あの柊先輩の態度。そりゃあ、うちの親父に恩があるのは解るけど、俺に対する態度はおかしいよ。俺は何もやってないし。」


 俺がそう言ったときだ。

 須藤が神妙な顔をして口を開いた。


「子供を助けるためにした親父の行動は、誇りだ。だっけ?」


 俺の心に言葉の刃が突き刺さった。


「こんな言葉を遺族から言われたら、感謝以上の気持ちを持つと思うぞ。その助けられた家族の人は。助けてくれた人にはそれ以上に申し訳ないと思ってるんだ。その遺族が助けられて罪悪感を抱いてる時に言われたら、挨拶の一つもしようって気になると、僕は思うけどね。」


「そう、かなあ~。」


 俺が二人の言葉に納得しきれていないときに、隣の静海が俺の手を引っ張った。


「ちょっとお兄ちゃん!」


 そう言って、ステージを指さす。

 そこに二人の美少女がスポットライトを浴びたところだった。


「では、これから、今回だけのスペシャルステージです。」


 部長の声で観客の注目が集まる。

 同じダークブラウンの髪の毛をポニーテールにしている少女たち。


「柊姉妹をメインにした、ダンスステージ。皆さん盛大な拍手、お願いします。」


 第二体育館がどよめきと拍手、歓声で揺れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ