表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/401

第160話 ダンス部公開練習 Ⅱ

 そこに端正な顔立ちの神代麗愛がいた。


「ああ、神代さん、ありがとうね、今回誘ってくれて。」


 俺がお礼をすると、アップの熱が冷めないのか、顔が少し赤い。


「いえ、いえ、いえ……。こちらこそ来ていただいて嬉しいです。」


 少しもじもじするような体を動かしながら言った。


「でも、どうして誘ってくれたの?静海からは仲のいい子がサッカー部で見に来れないとは聞いてたけど。ついで。かな。」


「あ、はい、そ、そんなとこで……。」


「悪かったね。俺の友達の分まで。さすがにこの雰囲気に、俺一人で来るのはちょっと、敷居が高かったから。」


 もっともエロ瀬良を連れてきたことがよかったかどうかの判断が、まだできていない。


「ああ、それは全然大丈夫です。わ、私は先輩に見てもらえれば、あの……、十分……です。」


「ん?」


 はて、どういう意味?


「ほら、お兄ちゃん!練習前の美少女をナンパなんかいてないで!困ってるでしょう!」


 急に静海が会話に割って入ってきた。


「はっ!な、ナンパだと!」


 静海の言葉に慌てた。

 慌てたために余計な言葉を吐いてしまった。


「俺は生きてきてそんな勇気ある行動をとったことなどない!」


(ナンパを勇気ある行動って…、光人、舞い上がってなんか思考がおかしいぞ)


(そ、そういわれても…)


「何言ってんのよ、お兄ちゃん。ナンパが勇気ある行動の訳ないでしょう!」


「ナンパから助けてもらった立場だけど、光人がナンパに対して、そんな風に思ってるなんて、ちょっと幻滅。」


 伊乃莉にもなんか、ひどいことを言われた。

 ちょっと悲しい。


「白石、やらかしたな!でも、そんな白石が俺は嫌いじゃないぜ。」


「う、うるせえな、瀬良。」


 なんか嬉しそうにしている瀬良に無性に腹が立つ。


「ルナ、別に私お兄さんにナンパされてたわけじゃないよ。それに、お兄さんなら…………。」


 彼女の言葉を聞いた静海の顔が、なんか怖い。

 ちょっと、般若っぽい雰囲気が静海の後ろに見え隠れしている。


「あ、そうだ。もうここ開けるから皆さんどうお座ってください。ここからならそこそこステージもアリーナも見えますから。」


 静海の友人、ああ、神代さんだっけ、が慌てて観客席に会った荷物を片付けていった。


「じゃあ、お言葉に甘えて使わせてもらうね。えっと…。」


「神代麗愛と言います。お兄さんの妹、白石静海の親友です!よろしくおねがいします!」


 そう言って、綺麗にお辞儀をした。

 ちなみにお兄さんって、俺のこと、だよな。ん、俺の名前を覚えてない?


「ちょっ、レイア!お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだよ!レイアがお兄さん呼びって、絶対おかしいから!」


「それで、高校の生徒会の人たち、あの席にいるのはちょっとしたサプライズがあるためなんですよ。楽しみにしていてくださいね。」


 静海の言葉を完全にスルーして神代さんが俺たちに生徒会の役員があの場所に座っていることを説明する。


 愛らしい笑顔と可愛い声を残して神代さんは去って行った。

 みんなで「頑張ってね」と声をかけた。

 その声に、いい笑顔を返してきた。


 神代さんを見送りながら、静海がなんか首をかしげていた。


「おかしいなあ、レイアはあんな感じじゃなかったはずじゃないんだけどなあ。わたしのお兄ちゃんを「お兄さん」って言ってたし、なあ。なんかレイア。今日は変な感じだったなあ。」


 よくわからん独り言を呟いている。


「とりあえず座ろう、光人!」


 そう言って俺の手を引っ張って自分のとなりの席に俺を座らせた。

 静海は逆サイドの俺の隣に座る。

 気づいたら須藤と瀬良が後ろの席に座っていた。

 確かに、静海の横は通路になっていて、俺の後ろに座ったほうが会話はしやすい。


「なあ、白石。あの綺麗な子がお前に告白したっていう中学生か?」


 瀬良がいきなり聞いてきた。


「だ・か・ら、誰からも告白なんかされてないって!」


 そう答えた俺に、瀬良が疑わしそうな目を向ける。


「さっきの態度見る限りさ、あの子、お前に好意を持ってるよな。」


「あ、いや、知らん。」


 瀬良の「好意」という単語に静海と伊乃莉の雰囲気が少し冷たいものを纏った感じがした。

 違う、それは気のせいに違いない。


「なんか、やっぱり白石ってモテるんだなあ。」


「いやいやいや、そんなことないって、なあ須藤。」


 本当にこのメンバーだとしゃべらない須藤に話を向けた。


「モテると思うよ。基本優しいしな。一番は柊夏帆先輩に対してのあのクールさ。なんかそういう雰囲気はモテるんだなあって、思う。」


 お前まで…、この裏切り者!


「本当にお兄ちゃん、優しいのはいつもだけど、変な時にイケメンっぷり発動するからな。妹としては本当に心配。でも、レイアはだめだからね!」


 なんかよくわからんうちに釘刺されてる。


「はあ~。」


 大きなため息が聞こえた。見ると伊乃莉だった。


「こういう男だからしょうがないんじゃない。とりあえず、まだ被害者は出てないから、今は様子見ってとこだね。そろそろ始まるみたいよ。」


 下のアリーナとステージにダンス部の女子が集まり始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ